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なるほど!意外と手厚い健康保険
掲載日:2014年12月18日
いざ、入院となった場合は、それなりにお金がかかるもの。「死亡のリスクよりも、まずは入院のリスクに備えたい」と、医療保険に加入している人は多いと思います。でも、入院時にお金を受け取れるのは、医療保険からだけではありません。意外に手厚い、健康保険で保障される内容を確認してみましょう。
働き方によって異なる健康保険
会社員や公務員であれば、勤務先の健康保険に加入しているはずです。一方、自営業の人は、国民健康保険に加入しているでしょう。どちらでも基本は同じです。小学校入学から70歳未満の人が病気やケガの治療を受けるときには、かかった費用の3割を負担することになります。差額の7割は、健康保険から支払われるというしくみです。
小学校に入学前の子どもの医療費は2割負担となっていますが、「義務教育就学児医療費の助成制度」があり、無料となる場合が多いようです。この助成制度は都道府県、または市区町村が独自の制度として実施しています(自治体によっては年収制限があります)。市区町村によって対象となる年齢が異なりますが、基本的に中学3年生の年度末まで助成されるところが多いようです。
医療費が100万円なら、自己負担は30万円?
さて、大きな病気をしてしまい、ひと月の医療費が100万円かかってしまいました。やはり、3割の30万円を払わなければならないのでしょうか。
答えは“NO”です。健康保険には「高額療養費制度」というしくみがあり、ひと月あたりの医療費に上限が設けられています。これは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が、あとで払い戻される制度だと考えてください。100万円の医療費がかかって、30万円を窓口で支払ったとしても、その上限額との差額の払い戻しを受けることが可能なのです。
ただし、いくら払い戻されるかは、その人の収入によって異なります。収入が低い人ほど負担する医療費の負担は少なくなるように配慮されています。現在(平成26年11月)、高所得者、一般の所得者、低所得者の3段階に分かれていますが、平成27年1月から所得の基準は5段階に変更される予定です。これによって収入が多い人の負担を重くし、反対に収入が少ない人の負担を軽くするようになりました。
たとえば、70歳未満で年収700万円の人が、医療費で100万円かかったとしましょう。この場合、現行、改正後ともに高額療養費で払い戻される金額は、21万2,570円にも達します。つまり、本当の自己負担分は8万7,430円にすぎません。とはいえ、入院した場合は医療費以外の費用として、食事代やテレビ・洗濯機のカード代など、多くの費用が掛かってくることも忘れてはなりません。
改正後も年収が770万円までの人は、これまでと比べて負担が重くなることはありません。
しかし、年収が約770万円~1,160万円に該当する、下表「区分イ」の人から、1カ月あたりの自己負担限度額は上昇しています。医療費100万円の場合、今年であれば155,000円ですが、来年から171,820円。16,820円分負担が重くなります。さらに年収が約1,160万円以上になると、今年の負担限度額と比べて99,180円分重くなることが決定しています。
高額療養費が後から払い戻されるとはいえ、30万円もの大金を立て替えるだけでも大変です。そんなときは、「限度額適用認定証」をあらかじめ加入中の健康保険から入手して窓口に提出しておきましょう。そうすることで、本当の自己負担分を超える金額を立て替える必要はなくなります。
高額療養費制度の自己負担限度額 医療費100万円(自己負担分30万円)の場合
70歳未満 | 1カ月あたりの 自己負担限度額 |
|
---|---|---|
上位所得者 年収約770万円以上 (標準報酬月額53万円以上) | 150,000円+(医療費-500,000円)×1% | 155,000円 |
一般 年収約210万~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
低所得者 (住民税非課税) | 35,400円 | 35,400円 |

所得区分 | 自己負担の上限額 | 1カ月あたりの 自己負担限度額 |
---|---|---|
区分ア 年収約1,160万円以上 (標準報酬月額83万円以上) | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 254,180円 |
区分イ 年収約770万~1,160万円 (標準報酬月額53万~79万円) | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 171,820円 |
区分ウ 年収約370万~770万円 (標準報酬月額28万~50万円) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
区分エ 年収約370万円以下 (標準報酬月額26万円以下) | 57,600円 | 57,600円 |
区分オ 低所得者 (住民税非課税) | 35,400円 | 35,400円 |
資料:厚生労働省ホームページをもとに執筆者作成
なお、1カ月とは1日から末日までを意味しています。たとえば、同じ30日間入院して同じ治療を受けたとしても、「9月20日入院、10月10日退院」のように、月をまたいでしまった場合は、それぞれの月で高額療養費を計算することになってしまいます。入院する日を選べるのであれば、1カ月以内に収まるようにすると、自己負担分が少なくなる可能性があるのだということを覚えておいてください。
休んでも受け取れる「傷病手当金」
会社員や公務員などのお勤めをしている人なら、病気やケガで仕事を休んでも、一定の用件を満たすことにより、「傷病手当金」を受け取ることができます。原則として、標準報酬月額の3分の2の金額が、最長で1年6カ月間給付されるので、安心ですね。ただし、国民健康保険に加入している人は任意給付となり、一部の国民健康保険組合のみの支給になりますので注意が必要です。
このように、健康保険には様々な給付があります。医療保険を検討するときは、健康保険などからの給付を確認したうえで、賢く選んでいくことが大切となります。
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コラム執筆者プロフィール

ファイナンシャルプランナー横川 由理(ヨコカワ ユリ)
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、MBA(会計&ファイナンス)
「生きていく上で大切なお金について皆さまへお伝えしたい」。そんな気持ちでファイナンシャル・プランニングやお金のしくみについての情報を発信しています。幸せな人生を送るためには、お金のことを知ることも大切。ご一緒に楽しみながら考えていきましょう。
- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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