池袋暴走事故をもとに知っておきたい、交通事故で運転者が負う3つの責任

数年前に発生した、自動車の暴走による事故。池袋暴走事故はまだ、皆さまの記憶にも新しいのではないでしょうか?今回はこの事故をもとに、交通事故を起こしたときに運転者が背負う3つの責任について考察します。
交通事故、3つの責任とは
私事ですが、学生時代に過度のスピード違反で赤切符を切られたことがあります。後日に出頭通知というはがきが届き、簡易裁判所に出頭したことを覚えています。また、その際30日の免許停止となり、停止期間短縮のために講習も受けました。
もちろん、現在は安全運転を心がけており、ゴールド免許を維持しておりますが、あのときもし事故を起こしていたら、と思うこともあります。
2019年4月に発生した池袋暴走事故の刑事裁判で、東京地方裁判所は禁錮5年の判決を下し、被告・検察とも控訴しなかったため刑が確定しました。
多数の死傷者を出したこの事故ですが、なかでも青信号で道路を横断中であった母子が死亡するという悲しい事態が起こったことについて、ご遺族の無念は計り知れません。判決という1つの区切りが付いたことにより、ご遺族が前を向けるきっかけになればと心から願っています。
さらに、この事故について、東京都公安委員会が2019年5月、運転者の免許を取り消す行政処分を決定しました。そして、ご遺族が損害賠償を求めた民事裁判については、今も係争が続いているようです。
このように、自動車事故を起こすと運転者は刑事上の責任、行政上の責任、民事上の責任と3つの責任を負うことになるのです。
自動車事故による3つの責任と、その根拠となる法令
- 刑事上の責任 … 自動車運転死傷行為処罰法、刑法、道路交通法
- 行政上の責任 … 道路交通法
- 民事上の責任 … 民法(不法行為責任)
資料:執筆者作成
刑事上の責任とは
刑事上の責任は、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)、刑法、道路交通法で規定されていて、危険運転による死亡事故の厳罰化などは自動車運転死傷行為処罰法に盛り込まれています。
事故を起こすと、事故の程度や運転者の過失割合によって罰金、禁錮、懲役などの刑が科せられます。スピード違反などで赤切符を切られると、場合によっては簡易裁判所で罰金を言い渡されることになりますが、これも刑事上の責任となります。
行政上の責任とは
行政上の責任は道路交通法で規定されています。
ご存じの通り、運転免許は点数制度になっていて、過去3年間の交通事故や交通違反に付けられた点数の累積が一定の水準に達すると、運転免許の停止や取り消しの行政処分が行われます。
減点と表現されることもありますが、制度上は0点から始まり、違反等のたびに点数が累積されていく仕組みです。累積した点数が6点に達すると30日の運転免許停止となり、累積が続くと最高で180日の運転免許停止、最後は運転免許取り消しとなります。
累積されるのは基本的に過去3年間分ですが、前の違反や事故の日から1年以上無事故・無違反・無処分であった場合、それまでの点数の累積がなくなります。
交通違反をしたときに青切符を切られると期限までに反則金を支払う必要があり、これも行政処分の1つです。
民事上の責任とは
民事上の責任は民法によって規定されており、民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」として、不法行為による損害賠償の義務を規定しています。
交通事故で第三者を死傷させた場合、治療費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、逸失利益などの賠償責任が生じ、対人事故では認定損害額が5億円を超えた事例があります。
「億単位の賠償金を支払うことになるなんて……」と不安になりますが、民事上の責任を負ったときに助けてくれるのが自動車保険やバイク保険です。損害賠償額を無制限で補償する自動車保険もあるため、加入の有無で安心感は大きく異なるでしょう。
いつ自分が自動車事故の加害者になるかは分かりません。自分を守るだけでなく、被害者に十分な補償ができるような自動車保険に加入しておきたいものです。
執筆者プロフィール

鈴木 竜一郎スズキ リュウイチロウ
AFP
大学卒業後、損害保険会社に約9年勤務(自動車損害調査部、営業部など)後にオーストラリアへ移住。西豪州パース在住。オーストラリアで約20年独立系FPとして活動。税理士、公認会計士、移民代理人(豪州)としての活動も行う。新型コロナウイルス感染症の流行が終息したのち、日本での活動に注力する準備をしている。
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- ※ 掲載日は2021年10月21日です。
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