最新がん治療費をカバーする公的制度とがん保険

がん治療には、がんゲノム医療や先進医療などがあり、なかには保険適用外で自由診療になってしまうケースがあります。そうなると、治療費は全て自己負担になり、治療薬によっては500万円以上など、高額になる可能性を考えなくてはなりません。
今回は、がん治療費・自由診療の治療費をカバーする公的制度と、がん保険について説明していきます。
がん治療方法の選択次第で、家計負担も大きく変わる
医学の進歩によりがん治療の選択肢も広がっていますが、全てのがん治療が保険適用内なのではありません。一部のゲノム医療などには、公的医療保険が適用されるものがありますが、まだ自由診療の扱いとなる治療もあります。
したがって、治療方法を決める場合、保険適用内で行うのか、その先の可能性を信じ、自由診療を選ぶのかは個々の価値観によります。罹患(りかん)した年齢やその方の収入などによっても、治療方法は異なるのではないでしょうか。
また、2019年3月の東京都福祉保健局「東京都がん医療等に係る実態調査結果(がん患者の就労等に関する実態調査)」[1]によると、がんに罹患した方の49.4%が、がん罹患後に収入が減ったと回答しています。
保険適用の治療であっても、通院期間の長さやがんによるストレスで、メンタルヘルスに影響が及ぶことも考えられるでしょう。社会復帰が遅くなれば、家計負担が重くなる可能性を考慮しておくことも重要です。
治療費をカバーする公的制度は?
2014年5月の東京都福祉保健局「『がん患者の就労等に関する実態調査』の結果(概要)」[2]によると、がんに罹患した方のうち傷病手当制度を利用した方は31.5%にとどまり、傷病手当制度を知らなかったと回答している方が39.5%となっています。
もしもの場合に備え、がんで就労できないときや、医療費がかかってしまったときに使える公的制度を確認しておきましょう。
がんの治療費をカバーする公的制度について4つ紹介します。
図1 がんの治療費をカバーする4つの公的制度
- 傷病手当制度
- 高額療養費制度
- 障害年金・障害手当金
- 患者申出療養制度
資料:執筆者作成
(1)傷病手当制度
傷病手当制度の対象者は、会社員や公務員など、第2号被保険者と呼ばれる方々です。治療や療養で連続して3日以上仕事に就けず、雇用主から十分な給料を支払われなかった場合に支給されます。
(2)高額療養費制度
高額療養費制度は、保険適用の治療費が対象となります。各世帯の収入に応じ、1カ月あたり一定の自己負担額以上の金額は申請をすれば戻ってくる仕組みです。ただし、自由診療の治療費、食事代や差額ベッド代などは対象となりませんので注意してください。
(3)障害年金・障害手当金
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。原則的に国民年金加入者は障害基礎年金、厚生年金加入者は障害厚生年金を請求でき、がんを含め、病気やケガによって生じた障がいの程度に応じて受給額が決まる仕組みです。
また、厚生年金加入者で、障害厚生年金の対象にならない程度の障がいが生じた場合、保険料納付などの要件を満たしていれば障害手当金が支払われます。
(4)患者申出療養制度
未承認の治療薬など(保険診療の対象外)を選択した場合には、一般的に保険適用分を含め、治療費全額が自己負担です。しかし患者申出療養制度を申請して審議が通れば、一部が保険給付対象となります。
がん治療の進化に対応するがん保険
がんゲノム医療や先進医療など、保険適用外で自由診療になった場合の治療費の自己負担が高額になる可能性から、各保険会社は最新の医療に対応する保険を新たに扱うようになってきました。
なお、保険会社によって異なりますが、「自由診療給付金や自由診療抗がん剤治療給付金の保障を主契約」とし、自由診療ホルモン剤治療給付金や先進医療給付金、患者申出療養給付金の保障を特約(オプション)としているがん保険や、「がん診断給付金の保障を主契約」として抗がん剤治療給付金、自由診療抗がん剤治療給付金の保障を特約としているがん保険などがあります。
自由診療を希望するなら、治療費が高額になる場合があるため、自由診療の治療費に対して給付金があるがん保険で補塡(ほてん)することを検討しましょう。
図2 がんの治療費をカバーするがん保険の例

資料:執筆者作成
ただし、がん治療のリスクのために保険や特約を増やすと、保険料が上がる傾向にあります。がんのリスクと保険料、家計のバランスなども見ながら判断しましょう。
自分ががんになったときに、どんな治療を受けたいのか、がん検診と同様に定期的に考えておくことは大切です。がん保険の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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執筆者プロフィール

髙杉 雅紀子タカスギ マキコ
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP
生命保険会社にて約8年勤務後、住宅建築の建設会社に16年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。さらに、主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を生かし、教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスにも力を注ぐ。
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- ※ 掲載日は2021年11月25日です。
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