生命保険に関する調査から見えてくる、これからの保険見直しのポイント

収入が伸び悩むなか、保険商品の選択や加入経路も広がり、生命保険を見直すには悩ましい状況だと思います。
去る9月22日に、(公財)生命保険文化センターから「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]が発表されました。
このデータから見えてくる、生命保険の最新の見直しポイントを解説していきます。
長期入院保障から在宅療養保障などへ
医療技術の進化により、入院日数が以前と比べて短くなっています。その影響からか、長期入院以上に短期入院の保障や、重篤な病気に対しての一時金の給付などに手厚い商品をよく目にするようになりました。
特に近年では、コロナ禍による病床のひっ迫から自宅療養を余儀なくされる可能性を考え、入院しなくても保険金が給付される商品に関心が高まったのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症に特化した商品には申し込みが殺到し、販売休止の事態にもなりました。
一時金型の保険として主なものに、約半数の世帯が加入するようになった「特定疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)保険」があります。このような一時金型に加入するなら、現在加入している医療保険の入院給付金日額を減らしたり、不要な特約を外したりして、保険をスリム化し、安くなった分の保険料を充当することを検討しましょう。
また、入院時に限らず、働けなくなったときに毎月給付金が受け取れる「就業不能保険」もあります。まだ加入率は低いかもしれませんが、働く年数が長くなりがちな近年で注目したい保障ではないでしょうか。
医療保障を見直すポイント
- 長期入院の保障よりも、短期入院の保障が手厚い(医療保障)
- 重篤な病気と診断されたとき、一時金が受け取れる(がん、特定疾病保障等)
- 入院しなくても、就業できなくなったときに受け取れる(就業不能保障等)
以下、参考に特定疾病保険と就業不能保険の加入率を載せています。
表1 特定疾病保障保険・特定疾病保障特約の加入率
※スクロールで表がスライドします。
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
2021(令和3) 年 | 48.4% | 43.2% | 27.8% |
2018(平成30)年 | 39.6% | 34.2% | 23.8% |
2015(平成27)年 | 44.0% | 38.7% | 25.7% |
2012(平成24)年 | 43.4% | 37.6% | 25.4% |
2009(平成21)年 | 41.0% | 35.7% | 21.5% |
- ※民間の生命保険会社(かんぽ生命を除く)に加入している世帯が対象
- ※がん、急性心筋梗塞、脳卒中の三大疾病により所定の状態になったとき、生前に死亡保険金と同額の特定疾病保険金が受け取れる生命保険、あるいは特約が付加された生命保険であり、損害保険は含まれない
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]をもとに執筆者作成
表2 生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の加入率
※スクロールで表がスライドします。
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
2021(令和3) 年 | 18.4% | 15.9% | 6.5% |
2018(平成30)年 | 12.0% | 10.1% | 4.5% |
- ※民間の生命保険会社(かんぽ生命を除く)に加入している世帯が対象
- ※病気・介護・障害など、所定の就業不能状態となったときに一時金や年金が受け取れる生命保険であり、損害保険は含まれない
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]をもとに執筆者作成
介護保障保険への加入の重要性
平均寿命が年々延び、人生100年時代といわれるなか、85歳以上の約2人に1人が要支援や要介護の認定を受けており、長生きのリスクとして介護への備えの重要性が高まっています。
認知症や軽度の介護状態では、さまざまなサービスを受けるには自己負担が必要となります。
子どもが独立した後、年老いてから子どもに迷惑をかけたくないと思うのであれば、死亡保障より、介護負担を考え、介護保障・認知症保障への見直しが良いでしょう。
介護保障保険への見直しポイント
- 死亡保険の死亡保障額、医療保険の入院給付日額などを減らし、浮いた保険料を家族の介護負担に対する備えへ充当
- 重複して加入している商品、特約を整理(解約)する
以下、参考に介護保険の加入率を載せています。
表3 介護保険・介護特約の加入率
※スクロールで表がスライドします。
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
2021(令和3) 年 | 16.7% | 13.6% | 8.5% |
2018(平成30)年 | 14.1% | 10.5% | 7.8% |
2015(平成27)年 | 15.3% | 11.8% | 7.9% |
2012(平成24)年 | 14.2% | 10.8% | 7.6% |
2009(平成21)年 | 13.7% | 11.1% | 6.2% |
- ※民間の生命保険会社(かんぽ生命を除く)に加入している世帯が対象
- ※寝たきりや認知症によって介護が必要な状態になり、その状態が一定の期間継続したときに、一時金や年金などが受け取れる生命保険、あるいは特約が付加された生命保険であり、損害保険は含まれない
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]をもとに執筆者作成
生命保険の見直しは健康な体から
コロナ禍で外出機会が減るなか、運動不足による体重増を懸念して、運動をする方も増えたのではないでしょうか。
保険に加入する際には、一般的に健康状態の告知、健康診断書の提出が必要となります。近年では、非喫煙の方だけでなく、健康診断の結果が良好な方はお手頃な保険料で加入できるものもあります。
保険の乗り換えの際は、年齢が上がることで保険料が高くなりがちですが、健康な方向けの保険料が適用される保険への乗り換えであれば、逆に今までより安くなる場合もあるかもしれません。
健康な体を手に入れることが、保険のスリム化につながる一番の近道ということになりそうです。
保険料をお手頃にするための見直しポイント
- 止める(禁煙する、深酒をしない)
- やせる(肥満気味の方は、運動、食事の節制などでBMIを標準値に)
- 下げる(血圧、脂質等の数値が高い方は正常値に)
- 受ける、もらう(健康状態を維持すれば、保険料の割引やキャッシュバックなどがある)
以下、参考に健康増進型の医療保険の加入率を載せています。
表4 健康増進型保険・健康増進型特約の加入率
※スクロールで表がスライドします。
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
2021(令和3) 年 | 4.2% | 3.4% | 1.8% |
- ※民間の生命保険会社(かんぽ生命を除く)に加入している世帯が対象
- ※健康増進にかかる取組により、「保険料」への影響がある(キャッシュバック等があるものを含む)生命保険であり、損害保険は含まれない
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]をもとに執筆者作成
生きるリスクに備える
3人に1人が生命保険を見直す時代となりました。必要に応じて保障を変える、という認識が広まっているといえそうです。
図 解約・失効の理由(2021年調査より、上位5項目)
- 他の生命保険に切り替えたので……34.6%
- 掛け金を支払う余裕がなくなったから……23.0%
- 掛け金が更新により高くなってしまったから……12.8%
- 義理で入ったものなので……11.9%
- まとまったお金が必要となって……9.9%
- ※かんぽ生命を除く
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」[1]をもとに執筆者作成
保険商品も時代の流れから、遺族への死亡保障重視→医療保障充実→生活保障(就業不能・介護等)へと進化を遂げています。
人生100年時代、死亡リスク以上に生きるリスクに備えた見直しはますます重要となっていきます。体調を整え、加入する商品を吟味していきましょう。
出典 |
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執筆者プロフィール

勝田 謙一カツタ ケンイチ
AFP、防災士
大学卒業後、大手生命保険会社、外資系保険会社を経て、2014年に勝田FP事務所を開業。自然災害被災者への情報提供の必要性から、SNSグループを開設。現在、自助・共助・公助を生かしたコロナショックからの生活再建相談、執筆活動、オンラインセミナーなどを展開。
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- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- ※ 掲載日は2021年12月9日です。
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