
新・個人事業主・自営業の方の年金
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国民年金加入と保険料納付は義務
掲載日: 2014年07月15日

日本の公的年金制度の特徴の1つに、「国民皆年金」があります。
この特徴は、「日本の国民は、原則20歳以上になれば誰でも年金制度に加入することになる」というものです。
つまり、公的年金は強制加入であり、国民年金に加入するかどうかということを選択する余地はありません。
実際には、職業等の違いにより「第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者」に分かれて加入することになり、自営業者の皆さまは第1号被保険者となります。
年金制度の体系図

出典:日本年金機構ホームページ
公的年金は保険料を納めるのが前提
一般的に社会保険といえば、公的年金・介護保険・健康保険の3つになりますが、どの制度に加入しても、毎月保険料の支払い義務が発生します。
保険料の納付があってはじめて給付が受けられる、というこの仕組みが「社会保険」です。
国民年金の場合、自営業者が加入する第1号被保険者は、所得水準に関係なく毎月15,250円(平成26年度)の定額の保険料を支払う義務が発生します。
現在、国民年金制度において大きな社会問題となっていることがあります。
それは、「保険料未納問題」です。
厚生労働省が発表した「平成25年12月末現在 国民年金保険料の納付率」によると、平成23年度分(過年度2年目)の納付率は、64.5%となっています(平成23年4月分~平成24年3月分の保険料のうち、平成25年12月末までに納付された月数の割合)。
実はこの未納問題のほとんどは、自営業者が加入する第1号被保険者の問題であることをご存知でしょうか?
公的年金制度に加入すると、毎月保険料を払うことになるということは述べましたが、「第2号被保険者」については、事業主(会社)が労働者負担分・会社負担分をまとめて納付する義務があり、「第3号被保険者」については、そもそも保険料負担義務がありませんので、原則、保険料未納が起こることはありません。
しかし、「第1号被保険者」は、被保険者本人か世帯主が自ら納付する義務がありますので、経済的な事情、制度の認識不足・誤解等の理由で、どうしても未納が起きやすい仕組みになっているのです。
以前、「俺は国民年金に入っていないから、保険料も払っていない!」という自営業者の方がいらっしゃいましたが、それは表現し直すと「国民年金に加入しているけれども、保険料を払っていない保険料未納者」ということになります。
経済力があるにもかかわらず、保険料を払わないのは言語道断ですが、長い人生においては、不況による収入・売り上げの減少等色々なことがあり、経済的に国民年金保険料を支払うことが困難になってしまう状況があるかと思います。
そんな状況で保険料を払わないとどうなってしまうのか?というと、答えは明快です。老後の年金をもらうことができなくなってしまいます。
老齢基礎年金をもらうには
ここで、老後の年金をもらうための条件について確認したいと思います。
自営業者が加入する第1号被保険者は、老齢基礎年金を65歳から死ぬまでもらうことになりますが、それには、25年間(300月)の「受給資格期間」という期間が必要となります(平成27年10月にこの受給資格期間は「25年」から「10年」になる予定です)。
受給資格期間とは5つの期間がありますが(表参照)、この25年(300月)という数字はしっかりと覚えておくことをおすすめいたします。
なぜなら、この期間が24年11月(299月)であっても年金は、原則一切もらえないという厳しいルールとなっているからです。
したがって、まず老後の年金を考えるにあたっては、この受給資格期間を満たすことが最も重要となります。
受給資格期間
①保険料納付済み期間 | 20歳以上60歳未満の期間で、国民年金保険料を納めた期間や、厚生年金保険・共済組合等に加入していた期間。国民年金第3号被保険者であった期間です。 |
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②保険料免除期間 | 国民年金の第1号被保険者としての加入期間のうち、保険料を納めることが免除された期間をいいます。保険料が免除されるのは、自動的に免除される法定免除と、本人の申請による申請免除があります。 |
③学生納付特例期間 | 大学や専修学校等の学生であって、国民年金の第1号被保険者である本人の前年所得が一定以下の人に対し、在学期間中、保険料の納付を猶予する制度であり、申請に基づき適用されます(世帯主の所得は問いません)。 |
④若年者納付猶予期間 | 30歳未満の国民年金の第1号被保険者であって、本人及び配偶者の前年所得が一定以下の人に対し、保険料の納付を猶予する制度であり、申請に基づき適用されます(世帯主の所得は問いません)。 |
⑤合算対象期間 | 現在の年金制度になる以前に国民年金に任意加入とされていた期間等で、任意加入しなかった期間です。専業主婦や学生等が国民年金の強制加入になる前の期間に加入しなかった期間等です。 |
資料:日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
国民年金は、25年(300月)の受給資格期間があれば、原則65歳から死ぬまで老齢年金をもらうことができますが、20歳から60歳に達するまでの40年間(480月)保険料を納めた場合に満額の年金(平成26年度772,800円)が支給されます。
ということは、保険料未納期間があると、年金額が減額されるということです。
つまり、年金をもらえるかどうか(受給権があるかどうか)ということと、年金がいくらになるのか?ということは全く別問題だということを、ぜひ自営業者の方には認識していただきたいと思っています。
「年金の受給権が発生したから、国民年金も満額もらえる」と勘違いしている方がたくさんいらっしゃいます。
では、国民年金保険料を納めなかった場合、どんなことが起きるのか?次回は、その具体例にふれたいと思います。
公的年金の受給額が低いかも…老後資金の上乗せに!
気になる 個人年金保険 を調べる- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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CFP。社会保険労務士。柔術家。郵便局、独立系FP事務所、社労士事務所勤務を経て、2011年10月「FP社会保険労務事務所 柔コンサルティング」設立。資格講座・研修講師、執筆活動を中心に、独立系FP及び社会保険労務士として活動中。その傍ら、ブラジリアン柔術道場の柔術インストラクターも務めている。
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掲載日:2019年11月6日
60歳以上の国民年金任意加入制度について
国民年金は、20歳から60歳になるまでの方は加入が義務付けられており、通常40年間(全期間)保険料を納付することによって65歳から満額の老齢基礎年金が支給される制度です。
つまり、60歳までに受給条件を満たしていない場合は老齢基礎年金を受け取ることができず、40年間の年金保険料を全期間納めていない場合は老齢基礎年金を満額受給することができません。
上記のようなケースの場合に、年金受給額を増額するために利用できるのが国民年金の任意加入制度です。
60歳以上の国民年金任意加入条件
60歳以上の方が国民年金に任意加入して70歳まで支払うにはいくつかの条件があります。
- 日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満、もしくは年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満であること
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満であること
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと
注意点として、任意加入は「これらすべての条件を満たすこと」が必要です。
任意加入を検討する場合は、自分自身がこれらの条件を満たしているか、しっかり確認しましょう。
また、国民年金の任意加入は申し出のあった月からの加入となり、過去へさかのぼって加入することはできませんので注意が必要です。

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