
女性の年金
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パートで働く女性と年金
掲載日: 2014年7月3日

春は新しいことを始めてみたくなる季節です。
新年度を迎え、子どもが進級・進学すると少し時間にゆとりができ、また教育費等の必要性から、主婦の方も働くことを考える機会が増えてくるのではないでしょうか。
さて、主婦の方が再び働き始めるとき、夫の扶養の範囲内で働くのがよいか、それとも扶養の範囲を超えて働くのがよいか、また、健康保険料や厚生年金保険料等の社会保険料の負担、実質的な手取り額等が気になるところです。
社会保険における夫の扶養の範囲内とは、健康保険は扶養家族となり、国民年金の第3号被保険者(個人の保険料負担はなし)になるということです。
では、どのような条件を満たすと扶養の範囲内となるのでしょうか。
一般的に「130万円の壁」といわれていますが、年収が130万円(一定の障害のある人や60歳以上の人は180万円)を超えると、第3号被保険者や健康保険の扶養家族からはずれてしまいます。
扶養からはずれたからといって、勤め先で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できるわけではありません。
扶養からはずれる基準と、勤め先で社会保険に加入できる基準は異なります。
では、勤め先で社会保険に加入できるのは、どのような条件を満たした場合でしょうか。
勤め先で、常用的に1日に働く時間・1ヵ月に働く日数が、いずれも通常の労働者の4分の3以上であれば、健康保険や厚生年金に加入しなければなりません。
勤め先の条件によっても異なりますが、だいたい週に30時間程度であれば、収入とはかかわりなく社会保険に加入することになります。
扶養の範囲からはずれた人が、勤め先で社会保険に加入できればよいのですが、時給単価が高いと、働く時間は社会保険加入基準に満たなくても、130万円を超えてしまうことがあります。
この場合は、国民健康保険・国民年金に加入することになります。
つまり、ポイントは130万円を超えることがなくても、勤め先で通常の労働者の4分の3以上の時間・日数を働けば、社会保険に加入しなければならないということです。
社会保険に加入となると、保険料の負担は大きくなるため、手取りが減り、所得の逆転現象が起こることもあります。
そのため、「結局手取りが減るのよね」と社会保険加入を嫌う人もいます。
しかし、考えておきたいのが年金です。
夫の扶養として第3号被保険者になっていれば、個人的に保険料を負担することなく老齢基礎年金(国民年金からの老後の年金)を受け取れますが、老齢基礎年金は満額で772,800円(平成26年度4月分~)、1ヵ月あたり64,000円程度です。
勤め先で厚生年金に加入するということは、老齢基礎年金に上乗せして、老齢厚生年金(厚生年金からの老後の年金)を受け取れるということになります。
老齢基礎年金プラス老齢厚生年金で、老後の生活設計を立てられます。何が起きるか分からないのが人生です。年金は少しでも多い方がいいでしょう。
次に、「厚生年金に加入することによって、夫に影響はないの?」「老齢厚生年金を受け取ることによって、夫の年金が減額されることはないの?」という疑問も出てきます。
老齢基礎年金や老齢厚生年金は自分自身の年金ですので、夫婦であってもお互いが自分の年金を受け取れると理解してください。
ただし、まったく影響がないとも言えません。
年金制度には配偶者に対する加算(配偶者加給年金額)の制度があり、妻の厚生年金加入期間が20年以上になると、原則として加算はつきません。
複雑な制度ですので、個別にご確認ください。
また、パートタイマーの健康保険・厚生年金加入基準は、平成28年10月に改正が予定されています。

改正の趣旨は、「厚生年金加入者を拡大する」ということです。
これまで加入対象外だったパートタイマーの中にも、平成28年10月からは加入しなければならない人が出てきます。
パートタイマーの厚生年金加入については、企業の反対も多く、今回の改正では企業規模501人以上という要件がつきました。
中小企業で働く人は、一部で対象外となります。
今回の改正では、施行後3年以内に見直しをすることになっていますので、企業規模は変更される可能性があります。
社会保険に加入しない範囲で働くとなれば、働く時間を週に20時間未満に調整することになります。
働く時間が少なくなれば収入も減少することになるので、パート収入で家計を支えたいという目的を達成できないかもしれません。
今後、パートタイマーの社会保険加入基準は、ますます拡大されることが予想されます。
社会保険料の負担はありますが、思い切って扶養の範囲を超えて働くという選択肢も検討してみてはいかがでしょう。
保険料の負担はありますが、将来の年金額は増えますので、夫婦で元気に長生きして、しっかり年金を受け取るという目標を持つことを、考えてみてはいかがでしょうか。
- ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーとしてセミナー講師、執筆、相談業務を行っている。年金分野を中心に活動し、著書には「年金1年生」(主婦の友社)、「ねんきん定期便がよくわかる本」「年金、もっと知りたいな」((株)BKC)等がある。メールマガジン「知っておきたい年金のはなし」も継続して配信している。
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掲載日:2019年10月30日
扶養の範囲内で働くべき?扶養と年金の考え方
夫の扶養の範囲内で働くことは、社会保険料の節約と考える方もいるでしょう。
一方、扶養の範囲を超えて働き、将来的に受給できる年金額を増やしたい方もいるかと思います。
扶養の範囲を超えて働くことによって、厚生年金保険に加入し、老齢厚生年金の受給が可能になるケースがあります。
老齢厚生年金の年金額は、保険料を納めた期間などによって決定されるので、厚生年金保険に長く加入するほど年金額が増加します。
扶養の範囲内で働くか、扶養の範囲を超えて働くかは、自分1人だけでなく、夫と一緒に考えるべき問題かもしれません。
自分自身の現在の状況やライフプランと重ね合わせ、扶養の範囲を超えるかどうかを夫に相談してみましょう。
