現場の現実と、新たな挑戦-女優と介護、二足のわらじを履き続ける理由(北原 佐和子さんコラム-第2回)

北原 佐和子(きたはら さわこ)

皆さん、こんにちは!北原佐和子と申します。

「花の82年組」でピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、私は18歳のときに歌手としてデビュー以降、この十数年は、女優業と介護業を複業してきました。今は医療の知識を身に付けた上で介護の仕事に取り組みたいと思い、看護専門学校にも通っています。

前回のコラムでは、私が40代になってから、介護業という未経験の世界へ飛び込んだ理由をお話ししました。今回は、実際に私が介護の仕事を始めたときのこと、この仕事の魅力、そして今、新たに挑戦していることについてお話しします。

最初は逃げ出したくなったことも。新しい挑戦の場で、改めて気を引き締めた

私が介護の仕事を始めたのは42歳のときのことです。未経験かつ複業希望ということで、仕事探し中は30カ所以上の施設に断られてしまいましたが、ある一つの施設が「女優を続けながら働きたい」という私の思いを受け入れてくださり、働くチャンスをいただくことができました。

新たな仕事に期待を膨らませながら、初めて出勤した日のことは今でも忘れられません。施設の扉を開けて一歩足を踏み入れると、私のことを一斉に見るおじいちゃん、おばあちゃんたち。いざ現場に立つと、やはり大きなプレッシャーを感じます。

私はもともと障がい者施設での勤務を志望していたこともあり、それまで高齢の方と直接ふれあう機会がほとんどありませんでした。「本当に私にできるのだろうか……?」。それがこのときの、私の正直な気持ちでした。

でも、もちろん逃げ出すことなんてできません。「福祉に関わる仕事がしたい!」という気持ちは強かったですね。当時は「女優なんかが何しに来たの?」なんて思われたくないって負けず嫌いの性格もあったかもしれませんね(苦笑)。

とはいえ、まったく未経験の仕事です。最初は何をすればいいのかまったく分かりませんでした。ほかのスタッフの皆さんからしたら、「どうせすぐ辞めるんじゃないの?」と思われたかもしれませんね。

そこで最初は、今の私にできることなら何でもやろうと、掃除機がけ、床ふき、布団干し……と、ひたすら清掃に励みました。私は介護業ではまっさらの1年生です。仕事を自分で見つけ、貪欲に吸収していこうと思いました。

自分のちょっとした工夫で相手が笑顔になる喜び

そんな日々に変化が起きたのは、私が仕事中につけていた日記がきっかけでした。日記を通して施設の利用者さんたちが食べたものや様子などを見直していたとき、ある利用者さんがトマトだけ残していることに気付いたんです。

そのことがすごく気になって、ある日、「トマトはお嫌いなんですか?」と尋ねたところ、その方は「口の中に皮が残っちゃうからね」とおっしゃいました。私は「だったら皮をむけば食べてもらえるのかな?」と素朴に思い、そこで皮をむいてあげたら、喜んで食べてくれたんです。

そのときに気が付きました。自分の気づきと、少しの一工夫で、利用者さんの気持ちや生活が変わることを。それから、介護の仕事が俄然面白くなりました。

「この方に食事を食べていただくにはどうすればいいんだろう?」

「今、目の前にいる方が笑顔になっていただくにはどうすればいいんだろう?」

そんなことを考えながら、声かけや対応を常に工夫しています。

もちろん、いつもうまくいくとは限りません。それでも私の働きかけで、利用者さんがご飯を食べて栄養をつけてくれたり、笑顔になって楽しい気持ちになってくれたりしたときは、何ともいえない幸せな気持ちになれました。

北原 佐和子(きたはら さわこ)_kitahara02

これは「成長痛」。この痛みを乗り越えればもっと成長できる

介護の仕事が面白くなった私は、資格取得にも挑戦しました。

まずは50歳のとき、介護福祉士の資格を取りました。その後、仕事を通してさまざまな問題を抱える利用者さんと向き合う中、一人ひとりに寄り添ったケアプランを立てることの重要性を痛感するようになります。そこで52歳のとき、ケアマネジャーの資格を取りました。

さらに今は、准看護師の資格を取るために看護専門学校に通っています。在宅で家族を看取ることが増えてきた今、医療の知識をもった上で、訪問介護を含めた適切なケアプランを立てられる存在でありたいと思ったからです。

現在は女優業も介護業もセーブし、学校での勉強に集中しています。勉強はなかなかハードで、先生も厳しいです。でも、私は昔からつらいとき、「これは『成長痛』なんだ、この痛みを乗り越えれば自分はもっと成長して、すてきな人生が待っているんだ」と思うようにしています。

最近は、人生とは永遠にその繰り返しなんじゃないか、という気もしてきました。

学校を卒業し、准看護師の資格が取れたら、「医療知識を生かし、利用者さんの病態を知り、より豊かな日々を過してもらいたい。」その気持ちを大切にケアマネジャーとして頑張ってまいります。女優業も大事ですが、とにかく今は自分がやるべき勉強に集中して、資格を取得することだけを考えています。

いずれにしろ、何歳になっても本気になってやりたいことがあり、日々成長できる。それはとても幸せなことなんじゃないかと思います。

⇒北原 佐和子さんコラム「女優と介護、二足のわらじを履き続ける理由」第1回を読みたい方はコチラ

⇒北原 佐和子さんコラム「女優と介護、二足のわらじを履き続ける理由」をもっと読みたい方はコチラ

⇒各分野の第一線で活躍する著名人コラム「一聴一積」トップへ

PROFILE

北原 佐和子(きたはら さわこ)

北原 佐和子(きたはら さわこ)

女優、元歌手、介護福祉士

1964年埼玉県生まれ。高校在学中にミス・ヤングジャンプに選ばれグラビアデビュー。1981年アイドルユニット「パンジー」を結成し、1982年ソロデビュー。映画・ドラマ・舞台など女優業を中心に、レポーターとしても活躍の傍ら、介護活動に興味を持ち、2005年にホームヘルパー2級の資格を取得すると、実際の福祉現場を12年余り経験。現場経験を積みながら、2014年に介護福祉士、2016年にケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を取得。現在は、ケアマネジャーという立場で医療知識を身につけたく看護学校に通う。また、ボランティア活動として『いのちと心の朗読会』を各地の小中学校や病院などで開催している。

※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立した執筆者の見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。