がんは「闘う」のではなく、楽しく治療するべきもの-末期がん「余命0日」からのカムバック(小西 博之さんコラム-第3回)

小西 博之 (こにし ひろゆき)

末期の腎臓がんが見つかり、手術を受けて医師から完治の宣告を受けるまでのエピソードを2回にわたってお話ししました。貴重な体験を通して、がんという病気について自分なりに思うところがあり、いまは年間100回以上の講演でたくさんの方々にそれをお伝えしています。神様に助けてもらった私にとって、いまがんの治療を受けている皆さんを微力ながら勇気づけることは天命のようにさえ感じます。

最終回となる今回は、そんな私のがんに対する考えをご紹介します。

小西 博之 (こにし ひろゆき)

「闘病中」と言うから怖い病気になる

私はずっと不思議に思っていることがあります。がんの治療をしていると「闘病中」と言われますが、いったい本人はどうやってがん細胞と闘えばよいのでしょう?治療で?それなら「治療中」で十分じゃないですか。がんも水虫も広い意味では同じ病気なのに、「いま水虫で闘病中」とは誰も言いません。でも、水虫だってそこからばい菌が体内に入って死に至ることもある。もちろん確率的にはかなり低いでしょうけれど、命に関わる病気ということで根本的にはがんと何ら変わりはないのです。

「闘病中」などと言うから、がんはすごく怖い病気だと思い込んでしまう。「治療中」だったら周りの人はいろいろな言葉で励ましてあげられるけれど、恐ろしい病気と闘っている人に対しては腫れ物に触るように何も声を掛けられなくなる。

本人だって苦しくても泣くのを我慢しますよ。闘っているのなら、泣けば負けを認めることになってしまうから。ずっと緊張しっぱなしの毎日を送らなければいけません。

私は、病気に勝とうなんて思いませんでした。勝ちも負けもない。がんであることをただ受け入れるだけです。だから、がんの告知を受けた日から毎晩必ず泣きました。お風呂で1時間ほど半身浴をしながら「ちくしょー!なんで俺が!死にたくない!」とわんわん泣くんです。やがて泣き疲れて、へとへとになり、喉が渇くから湯上がりにビールを飲み、その後はぐっすり眠ることができました。闘っていないから、泣いたらすごく気持ちが楽になれたのです。

頑張らず、我慢もせず、泣きたい時は泣く

講演でも必ず言うんです。「寂しい、苦しい、怖い。それでいいじゃないですか」と。頑張ることも、我慢することも、必要ないのです。

講演の前後に直接ご相談に見える方がいらっしゃいます。ある女性が「私には娘も孫もいます。だから頑張らなければ」と話すんですね。私は思わず「なんで?もしかしたら泣くのも我慢しているでしょう?」と聞き返しました。すると、「泣いたらみんなに迷惑がかかるから」と答える。私は言ってあげました。「あなたががんであることはみんな知っているんでしょ?娘さんの前でも、お孫さんの前でも、泣きたい時は泣けばいいじゃないですか。お父さんには『死にたくない。あんたといっしょに生きたい!』って泣きながら言えばいいじゃない。そしたらお父さんも泣いて、『俺がついているから大丈夫だ』と抱きしめてくれるかもしれない。それが病気を受け入れるということなんですよ」と。

闘わない。頑張らない。我慢しない。病気を受け入れ、治ったら「あれをしよう、あそこに行こう」という想いをふくらませながら治療していけばいいんです。

闘わず受け入れることで運は上がる

前回、手術から5年後に医師から「完治」と宣告されたことをお伝えしました。さらにそれから約6年たちますが、実は手術の後、現在までまったく治療というものはしていません。がんの転移がないか定期的に検査を受けてきただけです。

不思議ですよね。「余命0日」と言われた私が、治療もせずに11年間も生き長らえて来られたわけですから。いったい「余命」って何なんでしょうか。

私は「腎癌研究会」という組織の会員であり、がんの権威である先生方のお話をよく聞かせていただいていますが、ある時、先生の一人に「なぜ余命を患者に伝えるのですか?」と率直に聞いたことがあります。その先生は「患者が聞いてくるから。聞かれなければ答えない」と話しました。「では、余命はどうやってわかるんですか?」と質問したら、「コンピュータにがんの種類と患者の年齢や体重、身長などのデータを入力すればたちまち出る。もしくは医者の勘。だから確定の数字ではない。その証拠にコニタンは生きているし、『問題なし』と言われたのに逆の結果になる人もいる。双方の境目は、患者が持っている運としか言いようがない」と話すのです。

そこで、講演では「運」についての考え方も伝えています。運を決めるのは、結局は自分自身。がんにかかって「自分は運がない」と思うか、「それでもこうして生きているのだから運がある」と思うか。その違いです。闘えば闘うほど運は落ちていく。受け入れれば運は上がっていく。病気ってそんなもの。自分はそうやって乗り越えることができました、とそんな話をします。特に私の場合、「病気の人を何とか元気にさせてあげよう」という想いが自分を強くし、運をはこんできたと思っています。

いまがんを患われている方も「私は大丈夫」と信じ、夢を持って、楽しく治療を受けることをお勧めします。

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PROFILE

小西 博之 (こにし ひろゆき)

小西 博之 (こにし ひろゆき)

タレント

1959 年和歌山県生まれ。中京大学商学部商学科卒業。高校の教員免許取得。NHKドラマ「中学生日記」オーディションに合格し体育の先生役でデビュー。その後、バラエティ番組「欽ちゃんの週刊欽曜日」のレギュラーとして抜擢され、欽ちゃんファミリーの一員として、強面とは裏腹に温厚なキャラクターで人気を得る。同番組内でレギュラーの清水由貴子さんと「銀座の雨の物語」をデュエットしヒット。また、「ザ・ベストテン」の2代目司会者としても活躍し、俳優としても多数のドラマ、映画に出演。2005 年、腎臓がんの大手術を受け、90 日間にわたる壮絶な闘病生活を体験。現在は完治し、俳優業と同時に「いのちの大切さ」を伝える講演活動を全国で行っている。

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