ラグビーを通して学んだこと-豊かな人生の鍵は人との絆(松尾 雄治さんコラム-第2回)

松尾 雄治(まつお ゆうじ)

みなさん、こんにちは。松尾雄治です。

このコラムでは、「真に豊かな人生とは?」をテーマに、僕がこれまでの人生で感じてきたことをお話ししています。といっても、僕は子どもの頃からラグビーばかりしてきた人間なので、人生観のほとんどはラグビーによって培われています。

そこで今回は、僕がラグビーを通して学んだこと、そこから得た教訓をお話しします。

どんな人間ともフィフティーフィフティーで接する

1回目のコラムでもお話ししましたが、僕の親父の口癖は「ラグビーは人生の縮図だ」でした。もともとトラック乗りだった僕の親父は、一代で280台のトラックを率いる運送会社を築き上げた男です。大勢の社員と長年にわたって仕事をする中で、「社会には色んな人間がいる。色んな人間が助け合っているのが社会であり、人生だ」との考えを、強く抱くようになったようです。

確かに、ラグビーをやっているとそれを実感します。ラグビーは15人が力を合わせて、ボールをつなぐことで成り立つスポーツです。ポジションによって、一人ひとりの役割や性格、得意なプレーも異なります。派手にゴールを決める人間だけでなく、その影でチャンスへ導くためにパスを回す人間も必要なのです。

僕はそんなラグビーを通して、どんな人間に対しても敬意を持ってフィフティーフィフティーで接しなくてはいけない、と思うようになりました。その考えは、多くのスタッフの協力で成り立つテレビ業界の仕事や、多種多様な方が来店してくれるダイニングバーの仕事をする上でとても役に立っています。どんな人でも対等に接すれば、その人から多くのことを学べます。そうすると人の輪が広がり、人生は確実に楽しく、豊かなものになると思うのです。

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真剣に取り組むからこそ喜びや満足感がある

ところで、みなさんはラグビーというスポーツに対してどのような印象を持たれていますか?もしかしたら激しいタックルなどを見て、荒っぽい印象を持たれている方が少なからずいるかもしれません。だとしたら、それは大きな間違いです。もともとラグビーは礼儀やフェアプレーを重視していて、「紳士のスポーツ」とも呼ばれています。どのスポーツにも言えることかもしれませんが、つまりはどんなときでも相手を敬い、一生懸命戦ってこそ賞賛されてしかるべきだと言えるでしょう。

だからこそ、何も準備をせずに60点くらい奪われて敗れてしまうような不甲斐ない試合だけはしてはいけないんです。しっかりと準備をしてきた相手に対して失礼ですからね。そのために、苦しい練習に耐え、死にもの狂いで努力をするんです。決して「試合で勝ちたいから」だけではありません。僕は現役時代、1軍ではなく2軍や3軍でのプレーを強いられていようが、一生懸命やるのが真のラガーマンだと教わりました。このことは人生の教訓にしています。何ごとも真剣に、一生懸命取り組むからこそ、真の喜びや満足感が得られる。生半可な仕事をしていたら自分も相手も不利益だし、良い結果なんて得られるわけはありません。趣味に対しても、同じことが言えるんじゃないかと思います。

ラグビーを楽しくプレーするには、対戦するチーム同士が真剣勝負を演じなきゃいけません。仕事や趣味でも“喜び”や“満足感”に浸りたければ、やはり一生懸命取り組むことが大切なんです。

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限界を超える挑戦が、新しい豊かな人生を開く

僕がラグビーから学んだことで最も重要だと思うのが、限界を決めず、何ごとにもチャレンジしていく姿勢です。無理難題なことでも、めげずに立ち向かっていけば何が起こるか分かりません。新日鐵釜石で7連覇を達成したときが、まさにそうでした。現役を退くまでの最後の3年間、僕は監督兼選手としてチームを引っ張っていたんですが、戦力的にかなり厳しい状況でした。「これは正直厳しい」と思っていたものの、そこで諦めなかったからこそ、最終的には良い結果を掴めたのです。

現役引退後、スポーツキャスターの仕事を始めたときも、正直言うとやっていける自信があまりなかったんです。当時はラグビー界出身のキャスターなんていませんでしたからね。自分でも、その仕事をしっかりできるのか分かりませんでしたが、いざ挑戦してみれば意外と何とかなるものです。還暦を迎え、ダイニングバーの経営を始めたときも同じです。飲食店の仕事なんてやったことがないわけですから、「本当にやっていけるのか?」と心配してくれた人もいます。でも何ごともやってみないと分からない。おかげさまで僕のお店は今年で6周年を迎え、毎日お客さまで賑わっています。

実は今度、テレビドラマにも出るんです。最初は、自分に役者なんて無理だと思いました。でも以前、成城大学ラグビー部の監督をやっていたとき、よく選手に「戦う前から勝てないなんて言うな。何ごともやってみないと分からない」と口を酸っぱくして言っていたことを思い出しました。そんな自分が、やる前から「役者はできない」なんて決めつけるわけにはいかない、と挑戦することにしたんです。

僕はこれからも、チャンスがあれば新しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。何歳になっても、自分で勝手に限界を決めず、新たな挑戦を始める。それは長い人生を心豊かに生きていく上で、とても大事なことだと思います。そしてそのことを教えてくれたラグビーや親父には、心から感謝しています。

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PROFILE

松尾 雄治(まつお ゆうじ)

松尾 雄治(まつお ゆうじ)

元ラグビー日本代表、NPO法人スクラム釜石キャプテン

1954年東京都生まれ。名実共に日本ラグビー史上最高のスタンドオフと呼ばれる。小学校時代からラグビーを始め、明治大学に進み4年生の時には司令塔として当時低迷していた明大ラグビー部を初の日本一に導く。卒業後、新日鐵釜石に入社。1979年から選手、主将、監督兼選手として社会人選手権、日本選手権7連覇達成という「不滅の大記録」の原動力となる。V7達成試合を最後に新日鐵釜石を退社。引退後、ラグビー界初のスポーツキャスターに。1998年に公益財団法人日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会委員に就任。現在は解説者、タレント活動、講演活動等を通じて自身を築いたラグビー界への恩返しとして普及、競技者の育成に務める。

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