【家計マネー塾】 第17回 高額療養費制度の改正で高所得者は負担増に!これからの医療保険の入り方

公的健康保険の高額療養費制度が、2015年1月から改正されました。具体的には、70歳未満の所得区分が3区分から5区分に細分化されました。これにより、高所得者の医療費の自己負担額が増えることになります。どのように改正されたのか、それを受けて医療保険にどう入ればいいかを考えてみました。

高所得者は応分の負担を求められることに!

公的健康保険の医療費負担のしくみは、年齢によって異なる自己負担割合分を医療機関の窓口で支払い、残りは公的健康保険が負担します。小学校入学後から70歳未満の自己負担割合は3割です。かかった医療費の一部を負担すればいいとはいっても、入院が長引いたり、高額な治療・投薬を受けたりすると、自己負担額は高額になります。公的健康保険には、そんなときの負担を軽くする制度があります。それが「高額療養費制度」です。

高額療養費制度は、同じ人が同じ月に同じ医療機関でかかった医療費が、自己負担限度額を超えたときに対象になります。また、公的健康保険の加入者と同じ公的健康保険に加入している家族内(70歳未満)で医療費を払った人が複数いたり、一人が複数の医療機関にかかったりし、同じ月の負担が21,000円以上となった分を合計して自己負担限度額を超えたときも対象です。対象になる月が多くなると、「多数該当」として4カ月目から自己負担限度額は軽減されます。

自己負担限度額は年齢と所得で異なり、2015年1月から70歳未満の所得区分が5区分(それまでは3区分)に細分化されました。新旧の区分は下表の通りです。制度改正の主旨は、負担能力に応じた負担を求める観点からということです。

【高額療養費制度の自己負担限度額(70歳未満)】

2014年12月診療分まで(旧)

所得区分 自己負担限度額 多数該当
①区分A
(健保:標準報酬月額53万円以上)
(国保:年間所得(※)600万円超)
150,000円+(総医療費-500,000円)×1% 83,400円
②区分B
(健保:区分Aおよび区分C以外)
(国保:年間所得600万円以下)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
③区分C(低所得者)
(健保・国保:市区町村民税非課税者)
35,400円 24,600円

※ここでいう「年間所得」とは、前年の総所得金額および山林所得金額ならびに株式・長期(短期)譲渡所得金額等の合計額から基礎控除(33万円)を控除した額(ただし、雑損失の繰越控除額は控除しない)のことを指します(いわゆる「旧ただし書所得」)。

(注)区分Aに該当する場合、市区町村民税が非課税でも区分Aに該当。

2015年1月診療分から(新)

所得区分 自己負担限度額 多数該当
①区分ア
(健保:標準報酬月額83万円以上)
(国保:年間所得901万円超)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
②区分イ
(健保:標準報酬月額53万~83万円未満)
(国保:年間所得600万円超901万円以下)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
③区分ウ
(健保:標準報酬月額28万~53万円未満)
(国保:年間所得210万円超600万円以下)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
④区分エ
(健保:標準報酬月額28万円未満)
(国保:年間所得210万円以下)
57,600円 44,400円
⑤区分オ(低所得者)
(健保・国保:市区町村民税非課税者)
35,400円 24,600円
※(注)区分アまたは区分イに該当する場合、市区町村民税が非課税でも区分アまたは区分イに該当。
資料:全国健康保険協会のホームページ、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をもとに執筆者作成

標準報酬月額53万円以上、年間所得600万円超の人は確実に負担が増える!

所得区分の細分化で、大きな影響を受けるのは、標準報酬月額が53万円以上、年間所得600万円超の高所得者です。どれくらい影響があるか、つまり、どれくらい負担増になったかを具体例で見てみましょう。

条件)ある月に1日から30日まで30日間の入院をし、総医療費が100万円かかった場合。

  • 標準報酬月額が53万円以上83万円未満の方、年間所得が600万円超901万円以下の方
    (a)2014年12月までの診療
    150,000円+(1,000,000円-500,000円)×1%=155,000円
    (b)2015年1月からの診療
    167,400円+(1,000,000円-558,000円)×1%=171,820円
  • 標準報酬月額が83万円以上の方、年間所得が901万円超の方
    (a)2014年12月までの診療
    150,000円+(1,000,000円-500,000円)×1%=155,000円
    (b)2015年1月からの診療
    252,600円+(1,000,000円-842,000円)×1%=254,180円

上記の例は、同じ月に入退院をしているケースですが、同じ30日間の入院でも、月をまたぐと自己負担額は増えます。なぜなら、それぞれの月で自己負担限度額を計算するからです。ちなみに、筆者は昨年11月半ばから12月半ばにかけて約1カ月の入院をしましたが、公的健康保険が適用される医療費の自己負担額は約17万円でした。同じ日数の入院でも、11月中か12月中に入退院をしてしまえば、約9万円の自己負担で済んだのですが。

これまでの例で、高所得者の自己負担が増えることがおわかりいただけたと思います。高額療養費制度は、公的健康保険が適用される診療が対象で、公的健康保険が適用されても自己負担になる入院時の食事代(1食260円)や、全額が自己負担の差額ベッド代、入院時の雑費を合わせるとかなりの支出になります。

高所得者は医療保障を厚くしよう!

所得が高い人は会社で大きな仕事を任されていたり、自分で事業をしていたりで、入院中でも病室でパソコンや携帯電話を使ったり、部下に指示をしたり等で仕事をすることもあるでしょう。また、付き合いが広くて見舞客が多いことが想定されます。そのため、同室の患者に気がねしたくない意向を持つ人もいるでしょう。こんな場合は、個室を利用することになり、差額ベッド代も高くなります。個室の差額ベッド代は病院ごとに異なりますが、筆者が入院した病院には、1日1万円と1万8,000円の個室がありました。

このように考えると、高所得者は医療保障を上乗せしておいた方が安心のようです。会社員の方は入院日額1万5,000円~2万円、自営・自由業の方は2万円~2万5,000円を目安にしましょう。実際にいくら医療保障を用意しておけばいいかは、入院の仕方や受けた治療によって異なるので、何ともいえません。が、入院1日あたり1万5,000円から2万円受け取れれば、病院への支払い分くらいは賄えると思います。貯蓄を取り崩して支払っても、後から入院給付金が戻ってくる安心感は大きいです。筆者は、職業柄、医療保障の用意があり、去年の入院で受け取った入院給付金は非常に助かりました。

医療保障の上乗せの仕方は、今、用意している医療保障で不足する分を、医療保険に新規加入します。今の保険に先進医療の保障がついていれば、上乗せの医療保険は入院と手術の保障だけでOK。ついていなければ、この機会に先進医療の備えもした方がいいので、入院・手術・先進医療の保障がある医療保険を利用しましょう。

※このコラムは、保険市場コラム「家計マネー塾」内に、2015年3月17日に掲載されたものです。

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執筆者プロフィール

小川 千尋(おがわ ちひろ)

小川 千尋(おがわ ちひろ)

ファイナンシャルプランナー/子育て・教育資金アドバイザー/終活カウンセラー/整理収納アドバイザー

1994年AFP資格取得。独立系ファイナンシャルプランナーとして、主にマネー誌、一般誌、新聞などのマネー記事の編集・執筆・監修、セミナー講師などで活動。オールアバウト「生命保険」ガイドも務めている。

監修者プロフィール

柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)

柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士

関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。

家計アイデア工房 代表

※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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