日本人の特徴から紐解くコロナ禍 - WITH/AFTERコロナ時代に日本が果たす役割(ピョートル・フェリクス・グジバチさんコラム - 第2回)

WITH/AFTERコロナ時代に日本が果たす役割

みなさん、こんにちは。ピョートル・フェリクス・グジバチです。

僕は2000年に来日し、現在は二つの会社を経営しながら、人材育成や組織開発のコンサルティングを行っています。このコラムでは、WITH/AFTERコロナ時代の社会や日本人の生き方について、僕が思うことをお伝えします。第1回では、僕が抱いている日本人観についてお話しさせていただきました。

第2回は、新型コロナウイルスの感染拡大が日本人にどのような影響を与えたかということについて考えます。

集団主義、恥の文化が感染拡大の抑止につながった

前回のコラムでお話ししたように、日本人は集団主義で、欧米人より自分を抑え、社会の規範に合わせて生きる傾向があります。また日本社会は、人からどう見られているかを気にする「恥の文化」だと言われています。それらの傾向が足かせになっている部分もありますが、今回のコロナ禍では良い結果をもたらした面もあると感じています。

パンデミックに対し、欧米諸国では、罰則のある厳しい外出禁止令を出し、都市封鎖を行いました。しかし従わない人も多く、感染拡大につながりました。いっぽう、日本では、罰則のないゆるやかな自粛要請に多くの人が応じました。それによって感染者も死亡者も、欧米に比べて圧倒的に少ない数になっています。

これは個人の自由より、社会の規範や組織のルールを守ることを重視する日本人の良さの現れです。周囲の目を気にする「恥の文化」も、自分が感染して会社や周りに迷惑をかけてはいけないという強い意識をもつきっかけとなり、外出の自粛やマスクの着用、手洗いの徹底などの感染予防につながったのだと思います。日本人の特性には、マスクの買い占めなどを引き起こしたりする、負の側面もありますが、良い面のほうが大きかったのではないかと思います。

前回のコラムでは、日本人は「仕事はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といったバイアスが強く、それが働き方改革や女性参加が進まない要因になっている、という話をしました。例えばリモートワークは、技術的にはとっくの昔に可能でした。それが日本で普及しなかったのは、日本のビジネスパーソンに「顧客との商談や打ち合わせは必ず会って行うべき」といった思い込みが強くあったからです。

いっぽうで日本社会は、明治維新後の近代化や戦後の経済復興など、いくつかの転換期を迎えました。このような社会の価値観の変化、文化的な変革が起こると、日本人は一気に同じ方向へ進んでいく傾向があります。今回のコロナ禍でも、大企業やIT企業を中心に驚くべきスピードで在宅勤務やリモートワークの導入が進みました。オンラインでの商談や打ち合わせも、もはや当たり前になっています。このような反応の速さも日本社会の特性だと思います。

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リモートワークで、これまでの働き方が見直されることに

欧米人の僕から見て、日本人は結果よりプロセスを重視し過ぎるように思います。あなたの役割はこの刀を毎日磨くことだと言われると、「何のためにそれをするのか」を問うことなく、必要以上にひたすら磨き続ける傾向があります。もちろんその良さもあるのですが、現在の日本の生産性の低さや長時間労働につながっている面も否めません。そこで僕は、仕事ではプロセスよりアウトプットが大事だ、とずっと主張しています。

今回のパンデミックは、そんな日本人の仕事観や働き方を見直す良い機会になったのではないでしょうか。リモートワークをしている多くの人は感じているはずです。毎日、ストレスの多い満員電車に乗って出勤する必要は本当にあるのか。商談のための移動時間や、大勢の人間のスケジュールを調整して行う会議には無駄が多いのではないか。契約書や社内文書の判子、名刺交換は本当に必要なのか、と。もちろんこれらがすべて不要だとは言いません。ただそのような疑問が、これからの日本企業の働き方改革や生産性向上につながるのではないでしょうか。

リモートワークは、これまでの日本のマネジメントやコミュニケーションのあり方を変える良いきっかけになります。日本人のコミュニケーションでは言葉より、空気や文脈が大きな意味をもちます。長時間、同じオフィスにいればわざわざ言葉にしなくても伝わることも少なくありません。上司は部下のアウトプットそのものより、会社で一生懸命頑張っている姿を見て評価する傾向があります。

しかしリモートワークでは、そのようなやり方は通用しなくなります。やり取りはすべて言語化し、業務内容や成果を見える化しなくてはなりません。会議なども時間やアジェンダを明確に設定する必要があります。また現場主義でリスクを減らし、すり合わせることで価値を創出してきた日本企業は、これから圧倒的に不利になります。今後はテレビ会議などを活用して、効率よく人材を教育していくといった対応が迫られるでしょう。

多様な背景や価値観をもつ人々が働くグローバル社会では、評価基準を明確に定め、それを基に評価するマネジメントは当たり前になります。僕は日本企業のすべてがグローバルスタンダードに合わせるべきだとは思いません。ですがコロナ禍を機に、日本の会社が女性や高齢者、外国人など多様な人が働きやすい環境になるよう、マネジメントやコミュニーションのかたちも変えていく必要があると考えています。

今までの当たり前が疑われ、本質が問われる時代に

パンデミックは日本人の働き方だけでなく、暮らしや生き方そのものを見つめ直すことにもなりました。これまでの仕事中心の生き方を省みて、家族との時間を大切にしようと考える人が増えています。今まで朝から夜遅くまで働いていた男性が、在宅勤務により子供と触れあう時間が増えたことで、父親としての役割に目覚め、家族との時間を優先するようになったという話を聞いています。

反対に、平日日中、一緒にいる時間が増えたことで、ストレスを感じたり、衝突したりしながら、お互いの関係性を見つめ直した夫婦もいるでしょう。

ある調査では、自粛期間中の自炊頻度が増えたと答える人が7割以上いたそうです。料理の楽しさに目覚め、食材に気を使うようになった人が多く、僕も含め、体調管理や健康維持に今まで以上に気を使うようになった人も多いでしょう。家の整理を行い、今までいかに自分が無駄なものを買っていたかに気づき、自分にとって本当に必要なものだけを厳選して買おうと、消費スタイルを変えた人もいます。

さらには、リモートワークで東京にいる必要がなくなり、自然豊かで住環境の良い地方への移住を考え始めている人もいます。

改めて人の絆の重要性に気づいた人、これまでの自分の生き方を見つめ直した人もいるのではないでしょうか。

このようにコロナ禍は、日本人がこれまで当たり前だと思っていた働き方や暮らし、生き方を見つめ直す良い契機になったのではないかと思います。家族とは、仕事とは、会社とは、幸せとは一体何なのか。これまでバイアスが強い傾向にある社会だっただけに、改めてその本質が問い直されています。その先にこそ、WITH/AFTERコロナ時代の日本人の生き方があるのだと思います。

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PROFILE

ピョートル・フェリクス・グジバチ(ぴょーとる・ふぇりくす・ぐじばち)

ピョートル・フェリクス・グジバチ(ぴょーとる・ふぇりくす・ぐじばち)

プロノイア・グループ株式会社 代表取締役

ポーランド生まれ。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年Google Japanに入社。アジアパシフィックにおけるピープルディベロップメント、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループ株式会社を設立。

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