一人でも多くの人が「キャンサーギフト」をもらえるように-乳がんが私にくれた「贈り物」(山田 邦子さんコラム-第3回)

山田 邦子 (やまだ くにこ)

2017年は、私にとって乳がんが発覚してから10年目にあたる節目の年になります。この10年で、私の生活は本当に大きく変わりました。もちろん辛いことや大変なこともたくさんありましたが、10年たった今思うと、意外にも自分の人生が良い方向に変わったと感じられるほうが多いような気がするんです。3回にわたったこのコラムの最後として、乳がん発覚を経て、私の人生がどのように変わったか、そして現在私が行っている活動を通じて皆さんに伝えたいことについてお話しさせていただきます。

山田 邦子 (やまだ くにこ)

改善のポイントは「好き嫌い」の逆転。自炊により「食」への関心も高まる

ピン(一人で活動する)芸人として芸能の世界で生きてきたこともあって、それまでは「太く短く」な人生に憧れていたようなところがあったんです。仕事の時間も不規則ですし、お付き合いも仕事のうちですから、飲食に関しては特に破天荒で、食べられる時間に好きなものだけ食べちゃうのが当たり前。お酒もタバコも一切節制しないライフスタイルに、なんの疑問も感じていなかったんですよね。そんな人生を見直す“きっかけ”を与えてくれたのが、乳がんとの出逢いでした。

実は私、短大時代に家政科で勉強をして栄養士の資格を取っているんです。今の仕事を始めてから、そんなことすっかり忘れてしまっていたんですけど、乳がんの手術を受けて退院する際に受けた栄養指導で、自分も栄養士だってことを思い出して。言われてみれば、確かに昔勉強していたはずのことばかりなんですね。これは恥ずかしかった!学生時代の同級生や恩師にも顔向けできないじゃないですか。それで改めて自分でも復習をし直して、まずは食生活から改善を始めたんです。

といっても、別に難しいことをしたわけじゃないんですよ。私の場合、いちばん心がけているのが「好き嫌い」を逆転させること。要するに、好きなものを食べ過ぎず、嫌いなものも食べるようにするってことですよね。たとえば、それまではお豆腐とかコンニャクとか、お豆腐屋さんで売っているような食べ物は、全部嫌いだったんですけど、今ではどれも好んで食べるようにしています。というか、自分でも「なんで今まで避けていたんだろう?」と不思議に思うくらい、好んで食べるようになっちゃって。

自分で食事をつくる習慣ができたのも大きかったのかな。そもそも「食」にあまり興味がなかった(栄養士なのに!)ってこともあって、外食で済ませることのほうが多かったんですけど、それだとやっぱり偏ってしまいますよね。自分でメニューを考えるようになってからは、バランスも良くなったし、何より「食」に興味が持てるようになったんです。仕事で地方へ出かけるときも、つい身体に良さそうな食材を探しちゃったりして。もちろんタバコは止めましたし、お酒もほとんどお付き合い程度まで減らしています。

一説によれば、がんを克服した人は長命の傾向があるんだそうですけど、実感として納得できる点はありますよね。私の場合、それまでは「長生きなんて必要ない」くらいに思っていたのが、乳がんとの出逢いによって、今では真面目に健康について考えるようになりましたもの。食生活だけじゃなく、毎朝散歩をするとか、深呼吸する習慣を持つようになるとか、ライフスタイル全般も大きく変化しましたね。

伝えたいのは「大丈夫!」というメッセージ。これからも「がん友」との絆を大切に

何より劇的に変わったのは、人との「絆」を大切に考えるようになったことでしょうか。それまでの私って、ぶっちゃけ人は一人で生きていくものだと思っていたんですよ。だから、深い友達付き合いもあまりしてこなかったんです。そんな性格を変えてくれたのも、乳がんとの出逢い。「生きる」ということが当たり前のことではないし、誰かの支えがなければ生きていけないんだっていう、単純な事実に気付くことができました。

現在、私がピンクリボンをはじめ、がんに関わる啓蒙活動に関わっているのは、今度は私が誰かを支えたいと思ったから。同じ悩みや不安を経験した人の「声」が、どれだけ励みになるかってことを、知っているからなんです。

「キャンサーギフト」っていう言葉を知っていますか?日本語にするなら「がんからの贈り物」。もちろん、がんにならないほうが良いに決まってはいるんですが、生きることへの感謝や人間同士の「絆」など、がんになったことで初めて気付くことができる「良いこと」もちゃんとあるんです。

でも、その「贈り物」は天からの授かり物でもあるから、いつまでも暗い気持ちで下を向いたまま生きていると、もらえないこともあるんですって。私の場合は、幸運にも早い段階から前向きに、上を向いて生きる道を選ぶことができたから、たくさんのキャンサーギフトをもらえたと思っています。だから、今は自分がもらえた「贈り物」のおすそ分けをしたいし、同じ悩みや不安を抱える皆さんが少しでも多くの「贈り物」をもらえるための手助けをしたいんですよね。

がんに関わる啓蒙活動の一環として結成した「スター混声合唱団」の活動も、2016年はお陰様で全国を巡回することができましたし、2017年は乳がん発覚から10周年という節目を記念する意味も込めて、大好きなプロレス団体「プロレスリング ノア」さんと合同で、小学校以下ご招待のファミリー向けイベント、私の快気祝いコンサートを開催することもできました。

そうした活動を通じ、皆さんにいちばん伝えたいのは「大丈夫!」ということ。特に乳がんは、今では怖い病気ではなくなっていますし、他のがんに立ち向かうための医療も昔に比べ格段に進歩しているんです。大切なのは、患者さんや患者さんを見守る方たちがそういう情報をちゃんと理解して、前向きに生きていくこと。もちろん早期発見のため定期健診を受けたり、万が一に備えて保険を見直したりすることも大事ですよね。どちらも安心を得て、前向きに生きていくためには欠かせないものですから。

人生は山あり谷あり。良い時も悪い時もあるのが当然です。ですから悪い時には支えてくれる人に頼ればいいし、良い時には逆に誰かの支えになってあげてください。私も、一人でも多くの同じ悩みや不安を持つ仲間たちが、素敵な「贈り物」をもらえるような活動を、これからも続けていきたいと思っています。

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PROFILE

山田 邦子 (やまだ くにこ)

山田 邦子 (やまだ くにこ)

タレント

1960年東京都生まれ。1981年デビュー以後、司会・ドラマ・舞台・講演・執筆等マルチな才能を発揮。2007年、健康番組出演がきっかけで乳がん罹患を発見し、手術をする。その後はがんについての講演なども精力的に行い、また2008年にはがん撲滅を目指す芸能人チャリティ組織「スター混声合唱団」を結成し団長を務めている。2008年~2010年、厚生労働省「がんに関する普及啓発懇談会」メンバー。2010年2月12日、一般社団法人日本釣用品工業会「ロイヤルアングラー賞」受賞。現在、NHKラジオ「日曜バラエティ」の司会や通販番組「痛快!買い物ランド ショップ島」のパーソナリティを務め、スポーツ報知でコラム「山田邦子の釣りウキウキ」を連載中。

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