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ロボット研究を通し、人間とは何かを考える

石黒 浩さんコラム - 第2回

「アバターを通して働く」という選択肢

前回のコラムでは、私がロボット研究をするようになった理由から、ロボット研究によって人間に対する理解を深めることができたといった話をしました。人間の身体性はテクノロジーによって拡張でき、遠隔操作ロボットを活用することで、人間の可能性は大きく広がります。今回は、そのような考えを元に、現在、私が力を入れているアバターの研究や社会への実装についてお伝えします。

“アバターを用いて働く”というライフスタイルを社会に定着させたい

アバターとは、ゲームやネットなどの世界で使う、自分の分身となるキャラクターのことです。自分に似せたキャラのこともあれば、まったくの別人だったり、動物や架空の生き物を模していたりします。現在、私はこれまで研究してきた遠隔操作ロボットの技術を応用し、人がCGアバターを遠隔操作する技術の研究や社会実装を進めています。そのために、AVITAという会社も2021年に設立しました。

私が今、CGアバターの開発・普及に取り組んでいるのには理由があります。ロボットが社会で働き、さまざまなサービスを行うようになるには、まだまだ時間がかかると考えられているからです。これまで、人と関わるロボットとして、さまざまな種類が開発されてきました。しかし、ほとんどは社会に定着しないまま、衰退していきました。それは結局のところ、人々がロボットを使うメリットを十分に感じていなかったため、社会にロボットを受け入れる土壌が整っていなかったからではないかと考えています。

そこで私は、まず人々がアバターで働くというライフスタイルを、世の中に普通にあるものとして定着させたいと考えています。CGアバターは、ロボットより導入コストが圧倒的に安く、スマホやパソコンさえあれば、誰でも簡単に使うことができます。技術の進歩により、特別な機材を使うことなく、リアルタイムでスムーズにアバターを動かせるようになりました。

さらに今は、コロナ禍によってリモートワークが定着しています。直接、顔を突き合わせることなく、遠隔から働くことを受け入れやすい土壌が社会に構築されつつあります。まずは、アバターで働くことを当たり前のこととして受け入れる状況をつくる。そのうえで、遠隔操作ロボットを導入し、付加価値の高いと思われるところには、アバターとしてのロボットの導入を進める。そのような二段構えの構想でロボットを普及させていきたいと、私は考えています。

アバターを用いてコミュニケーションをとるメリット

現在、AVITAが開発したアバターは、店舗販売やイベントでの受付や案内、WEB上での問い合わせ対応など、すでに幅広い分野で活用されていて、おかげさまでたくさんの企業や自治体からもお声がけいただいています。

アバターがとくに力を発揮するのが、対人コミュニケーションが必要なサービスです。実は、人はそのままの姿よりも、アバターのほうがコミュニケーションをとりやすいというケースが少なくないのです。そのことは、私どもの実証実験からも明らかになっています。例えば、人はプライバシーに関わることを、あまり他人に話したいと思いません。ただ、アバターという非人間的な存在のほうには、本音で相談しやすいという面があるのです。

学生の進路相談なども、アバターを通じて行うと、家庭の事情などといった言いづらいことをきちんと伝えることができます。生命保険の契約などの場面でも、担当者に言いづらい家計の状態などといった情報があるのではないでしょうか。よって、こういった対話が必要なサービスの多くは今後、どんどん人間からアバターに置き換わっていくだろうと考えています。

アバターのよい点は、そのサービスにもっとも適したキャラクターを設計できることです。そのキャラクターを通して、サービスの品質を向上させ、お客様の満足度を高めることも可能です。実際、ものを売る場合、CGアバターを使ったほうがよく売れる傾向があります。パン屋の呼び込みをアバターで行ったところ、売り上げが1.5倍も上がったことがあります。

例えば、愛想のよくない人がパンを売ったところで、購入者はあまり購入意欲がわかないということがあるでしょう。ところが、愛嬌のあるかわいらしいアバターを動かして売ると、パンが飛ぶように売れるのです。ですから、コミュニケーションに自信がない人でも、パン屋で働くことができるわけです。私がJR西日本と行った取り組みでは、障がいのある方がアバターで野菜を売り、1日50,000円もの売り上げを上げています。

誰もが自由に、いつでもどこでも働ける社会の実現へ

CGアバターは、本来の自分の性別や年齢、顔や体格とは異なった、希望するキャラクターを自由に作成できます。誰にでも受け入れられやすい顔にすることも可能です。そのため、これまで年齢や容姿、体型などといったいろいろな事情で思い通りに働けなかった人も、自分の実力を存分に発揮できるようになります。

オンライン英会話教室などでは、生徒が講師を選ぶ際に、どうしても容姿などの情報が優先されてしまう傾向が見られます。その結果、講師としてはすばらしい実力のある方が、正当な評価を得られていないというケースがあるようです。ただ、このような場合にもアバターを活用すれば、この問題が解決するのではないかと思います。

また、アバターは育児中の女性や高齢者、障がい者などの雇用機会も広げます。アバターを使えば、今まで以上に在宅勤務はやりやすくなります。例えば、身体機能が衰えてしまったご高齢の方が、アバターを使って元気に働くことができます。さらに、アバターを用いる環境では、サービスの手順や指示をパソコン上に表示することができるので、仕事を覚えたり、トレーニングをしたりする必要がなくなり、誰でもすぐに働けるようになります。

もちろん、自宅にいながら、それこそ世界中、さまざまな場所で働けるようになることもメリットとして挙げられます。農家の方が生産地にいたまま、都会のお店で自分がつくった野菜を説明しながら売るといったことも可能です。海外に住みながら、日中、短時間だけ深夜の日本でアバターを通して警備の仕事をする、なんてこともできるでしょう。多くの人が働く時間や場所から解放され、兼業や副業をすることが当たり前になるのではないでしょうか。

アバターは場所や目的によって、複数のものを使いわけるということもできます。複数のアバターを同時に操ったり、AIを組み込んだりすることにより、生産性を飛躍的に上げることも可能です。私自身、これまで自分のアバターに世界中のあらゆる場で講演をしてもらっています。

このようにアバターを使い、誰もが自由に、いつでもどこでも働ける。そんな社会の実現を目指して現在、私はAVITAをはじめさまざまなプロジェクトを展開しています。次回のコラムでは、その先にある未来の社会について、私の考えをお伝えします。

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PROFILE

石黒 浩

石黒 浩(イシグロ ヒロシ)

ロボット工学者、大阪大学教授

1963年滋賀県生まれ。ロボット工学者、大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻(栄誉教授)。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)、遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞、2015年文部科学大臣表彰受賞およびシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞。2020年立石賞受賞。哲学者の鷲田清一氏との共著『生きるってなんやろか?』のほか、『アンドロイドは人間になれるか』、『人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか』、『ロボットと人間 人とは何か』など多数。

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