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関係と承認の新たなテクノロジーが社会を変える

佐々木 俊尚さんコラム - 第3回

ウェブ3の「トークンエコノミー」がつくる新しい承認の経済

最近流行している「ウェブ3」という用語は、毀誉褒貶(きよほうへん)が相半ばしています。そもそもなぜ「3」なのか。2000年代半ばにブログやSNSが普及するようになり、インターネットが本当の双方向性を持つようになったことが「ウェブ2.0」という名称で呼ばれました。このウェブ2.0の次の段階としての「3」ということなのです。

ウェブ2.0では誰もが情報を発信できるようになり、情報を自由化させると期待されました。たしかにその自由は実現したのですが、いっぽうで深層学習というAIの進化によって情報の流通を最適化してコントロールすることになり、情報の流通プラットフォームを握っているグーグルやフェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)のような巨大テック企業の支配を強める結果となりました。「監視資本主義」などと呼ばれこれらの企業は世界的に批判されるようになったのです。

ウェブ3はブロックチェーンを中心とした技術まわりを指していることが多く、ブロックチェーンが中央集権的ではない分散型のしくみを持っていることから、巨大テック企業の支配から脱却できるのではないかと期待されているのです。

とはいえ、ブロックチェーンといえども完全な自由や完全な「アンチ中央集権」はあり得ません。世界大手の暗号資産取引所FTXの破たんで暗号資産そのものの信頼が揺らいでいるのを見てもわかるとおり、人間社会の経済には何らかのコントロールは常に必要です。

ウェブ3では、ブロックチェーンによって会社組織も「アンチ中央集権」にし、経営者や管理職などの要らないDAO(自律分散型組織)という概念もあります。技能の揃った少数精鋭のチームなら成り立ちうるでしょうが、能力の高い人や低い人、さまざまなスキルを持っている人が混在する人間の組織では、DAOはあまり現実的ではありません。仕事の役割を調整し、優先事項をどうするかといった判断をおこなうマネージャーはどうしても必要なのです。

そう考えると現在のウェブ3の議論はあまりにも空論すぎるのではないでしょうか。「巨大化したテック企業をウェブ3で倒せ」というのは痛快なスローガンですが、GAFAを倒したとしても新しい巨大テック企業はまた別のかたちで現れてくるだけでしょう。ブロックチェーンの世界でも、暗号資産の取引所は必要なのです。

ではウェブ3には可能性はないと言えるのでしょうか。わたしはそうは考えていません。ウェブ3を全否定するのではなく、その中から次世代の世界をつくっていく可能性を検討することは大切だとも思っています。

次世代のカギを握っているのは、ウェブ3の概念のひとつである「トークンエコノミー」だとわたしは考えています。トークンエコノミーは、トークンという通貨の一種を発行することによって、たとえば作家やミュージシャン、映画制作者などのクリエイターをとりまく新しい経済をつくるというようなことが言われています。

トークンはビットコインのような暗号資産に似ていますが、暗号資産と違ってさまざまな組織や個人が主体となって発行できるというものです。また暗号資産のように金銭的な価値を持つだけでなく、たとえば「ミュージシャン○○さんのトークンを持っている人は、秘密のライブコンサートに参加できる」「△△会社のトークンを持っている人は、会社の議決権を持てる」といった価値を与えることができるとされています。

トークンは、企業が消費者向けに発行している「ポイント」のようなものとも言えるでしょう。ポイントと異なるのは、ポイントは「1ポイント=1円」のように価値が固定されていますが、トークンは株式のように時間の経過によって価値が変動します。つまり企業が発行する株式のような性格も持っているのです。トークンの値上がりを期待できるのなら、トークンをすぐにお金に換えてしまわないで、安定株のように長い期間にわたって保有することを選ぶ人も多いでしょう。また価値が上がってほしいから、そのトークンを発行している会社や個人を応援しようという気持ちも出てくることが予想されます。

言ってみればトークンは、暗号資産と株式と企業のポイントをミックスしたようなものだと言えます。それでもまだ説明としてわかりにくいでしょうから、具体的な事例を挙げて解説してみましょう。

トークンエコノミーは、実は「推し活」と相性が良いのです。

まだ人気の出ていない女性アイドルがいるとします。地下アイドルでしかない彼女が、自分の数少ないファン向けにトークンを発行するとします。ファンたちは推し活の一環として彼女のトークンを買うのです。

会社の株式の株主優待のように、トークンを買った人はライブのチケットやグッズを優先購入できる権利を持てます。また彼女のオリジナルなデジタル画像をトークンのおまけにすれば、これはNFT(非代替トークン)にもなります。NFTというのは、ブロックチェーンを使ってデジタルデータに「これは唯一無二のデータである」という価値を与えることができる技術です。デジタルアートはいくらでもコピー可能ですが、NFTならコピーはできても、もとのオリジナルデータの価値を保持することができるのです。

女性アイドルが将来人気になれば、彼女の初期の写真のNFTを持っているファンは、「自分は彼女が地下アイドルの時代からファンなのだ」と証明つきで自慢することができるでしょう。

女性アイドルの人気が高まってくると、ライブのチケットやグッズの購入は競争が厳しくなってきます。しかしたくさんトークンを持っていたり、古くからトークンを所有している古参のファンは、チケットやグッズを優先購入できる権利を手に入れることができます。アイドルの人気がますます高まれば、トークンの金銭的な価値も高くなります。古参のトークンの価値は高騰するかもしれません。古参のファンはここでトークンを売却して大金を手に入れてもいいし、彼女のファンを継続したければそのまま持っていてもいいのです。

つまりトークンによって、「自分がずっと彼女を支え続けてきたのだ」ということを皆に知らせることもできるのです。「自分が支えてきたのだ」ということを自分の内心だけでなく、トークンによって人びとに証明することができます。

これは新しい「承認」のしくみを世界にもたらす可能性があるとわたしは考えています。いまの貨幣経済は、労働の対価としてお金を受け取り、商品やサービスを受け取る対価としてお金を支払っています。お金は平等ですが、私たちはお金の交換だけでは「社会に承認されている」「みんなとつながっている」という実感を得ることができません。お金は生活に必要ですが、お金だけでは承認の感覚は得られないのです。これが多くの不幸の源になっているということには、多くの人の同意をいただけるでしょう。

かといって今さら貨幣経済を否定し、太古の昔の狩猟採集時代の贈与経済に戻れるわけでもありません。だったら貨幣経済はそのままで、それに乗っかるようにして「互いに承認し、承認される」というしくみをつくることはできないだろうか。トークンエコノミーはその可能性を浮上させていると思います。

トークンエコノミーでは、会社や団体、個人、さらには作品や製品などあらゆるものがトークンにできます。企業の株式公開のように大規模である必要はなく、個人や作品などが対象なら数千円から数万円ぐらいの規模でも成り立ちます。

トークンを買って投資する相手は、スーパーマンや天才である必要はありません。メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手になら何億でも何十億でも投資したいと思う富裕な投資家はいるでしょうが、そんな大げさな話でなくても良いのです。多摩川のグラウンドでいつも練習している草野球のチームに、応援のつもりで数千円を投資してトークンを買うというような話でもいいのです。友人の息子が就職したのを機に、就職祝いとして息子くんのトークンを購入するというのもありでしょう。息子くんがいつか出世したり起業したりすれば、何らかのリターンが期待できるかもしれません。

そしてトークンを買ってもらったアイドルやミュージシャンや職人や草野球チームや息子くんの側も、また誰かのトークンを買って支援します。誰もが誰かのトークンの保有者となり、誰もが誰かに投資し、誰もが誰かを応援するのです。

トークンによって、応援というものが相互に網の目のようにネットワーク化されていくというイメージです。ひとりひとりの能力はたいしたことがなく、リターンも小さいかもしれませんが、膨大な数のトークンが発行されるようになれば、全体としては大きな価値のある経済になるのではないでしょうか。

PROFILE

佐々木 俊尚

佐々木 俊尚(ササキ トシナオ)

作家、ジャーナリスト

1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒業、早稲田大学政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジーから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで幅広く取材・執筆・発信している。総務省情報通信白書編集委員。『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』(東洋経済新報社)、『時間とテクノロジー』(光文社)、『キュレーションの時代』(筑摩書房)、『「当事者」の時代』(光文社)など著書多数。Twitterのフォロワーは約79万人(2022年11月24日現在)。東京・長野・福井の三拠点移動生活中。

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