通話
無料

電話

お急ぎの方は、まずお電話ください。

0120-816-316

9:00~21:00(年末年始を除く)

キャンペーン実施中

AIがもたらすマーケティング革命

牛窪 恵さんコラム - 第2回

AIによって大幅に進む消費者理解

現在、マーケティングの世界ではAIの活用が大きく広がっています。AIによってマーケティングの業務や手法はどう変わっていくのか。このコラムではそんなお話をしていきます。前回は、現在進行形で大きな注目が集まり、マーケティングの世界にも大きな変革をもたらしそうなChatGPTについてご紹介しました。今回は、すでにマーケティング分野で行われているAIによるデータ分析や顧客理解の取り組みを中心にお話しします。

ビッグデータの解析によって消費行動の理解が大きく進んだ

マーケティングの世界では、AIによるデータ分析がさまざまな現場で活用されています。とくに近年、ネットショッピングやスマホアプリ、IoT、SNSなどが普及したため、そこから吸い上げたビッグデータをAIで解析することで、消費者がどの時点で、何を通じて商品を知り、それをいつどこで購入し、購入後にどのような感想を抱いたか、といった消費者の一貫した行動や感情、いわゆるカスタマージャーニーの把握が可能になりました。それによって既存顧客の「体験価値(CX)」を向上させたり、購買の見込みがある人を中心に、パーソナライズした広告をベストなタイミングで配信したりする企業も増えています。

また、コロナ禍でキャッシュレス決済やネットショッピングが高齢者にも普及したことで、今まで以上に幅広い層の顧客情報を企業が収集、活用できるようになりました。リアル店舗においても、POSデータだけでなく、顧客個々の購買データやポイントカードのデータ、店舗に設置したカメラの映像データなどをAIによって分析することで、より効率的で効果的なマーケティング戦略を立てることが、すでに可能です。たとえば、「雨の日の夕方5時頃に〇〇を買うお客さんにはこのような傾向があるから、前日の何時頃にこういったクーポン広告を打とう」など、きめ細かなマーケティング施策もできる時代になっています。

これまでマーケティング分野に限らずさまざまな現場で、人の知によるデータ分析が行われてきました。しかし、人間が扱えるデータ量には限りがあり、大量のデータを分析するとなると時間がかかるうえ、分析者の思い込みも発生します。いっぽうAIは膨大なデータを瞬時に処理できるうえ、客観的な視点に基づく、中立に近い分析が可能だとされています。今後、データの収集や分析において人間がやるべきことは、最初にどのようなデータを、何を目的に集めるのか、また最終的にそのデータを、どの範囲まで誰と共有(保護)して活用するのか、それを決定したうえで、そのための設計図やマイルストーンを描き、関係者との間で共有することが重要になっています。

人間は物事を分析する際、通常は「なぜそうなるのか」といった理由を中心に考えます。ところが、AIは膨大なデータのなかから、理由のわからない変数どうしの相関関係を見つけることが得意です。たとえば、トロが好きな男性とイカが好きな女性は「なぜか」相性が良いなど。AIがディープラーニングによって自ら学習した内容には、トロ好きとイカ好きの相性のように理由や根拠が説明できない、いわゆるブラックボックス問題も含まれます。医療など生命に関わる分野で、根拠が明確でないAIの提案を採用するわけにはいきませんが、マーケティングの世界ではスピードが優先されるシーンも多々あります。とりあえずAIが最適だと判断した施策を試し、結果がよければ継続し、悪ければやめればよい、といった具合です。そのため、今やWEBマーケティングの世界では、AIによって最適化、自動化された最新の広告手法が日々、アップデートされています。

チャットボットが顧客と円滑なコミュニケーションをする時代に

前回、ChatGPTの話をしましたが、定型的な会話のやり取りを自動で行うAIチャットボット自体は、すでに多くの企業が導入しています。チャットボットで行った顧客とのやり取りは、その顧客の属性とともにデータとして自動的に蓄積され、社内の部署間で共有されるケースも少なくありません。小売やメーカーは、部署をまたいでそのデータを分析することで、リアル店舗やネットショップ、あるいはアフターサービスに至るまで、特定の顧客が何を不安や不満に感じ、どのように提案されると喜ぶ人物なのか、などを事前に把握しておいたうえで、接客や対応に当たることも可能になります。

すると当然ながら、顧客満足度や「生涯顧客価値(LTV)」の向上、それに伴う売上アップも期待できます。お客様が商品を購入した後も、チャットボットがフォローのメッセージを送り、新たな購買行動へと結びつける情報提供やコミュニケーションを行う、そのようなことも自動で行えるようになっているのです。

さらに近年は、このようなチャットボットが、どんどんChatGPTと連携できるようになってきました。ChatGPTは自然で人間的な会話ができるうえ、日常的な雑談や会話を通して、顧客の隠れたニーズをつかむこともできるはずです。チャットボットは、顧客に合わせてパーソナライズされた会話ができるため、顧客はそこに「人格」を感じるようになるでしょう。いずれは、朝や晩に日常的に企業のボットやアバターと会話を楽しみ、それが習慣化していくかもしれません。より膨大な情報を獲得できることで、企業はその内容を商品開発やサービス改善、マーケティング戦略に活かすのが当たり前になると考えられます。

AIによる分析結果は、人間による検証が欠かせない

マーケティングの世界ではかつて、「30代女性」「50代男性」といった性別や年齢などでくくる概念(デモグラフィック変数)をもとに戦略を検討するのが、通例でした。しかし、同じ年代や性別でも価値観やライフスタイルが多様化した今、このようなくくりは無意味になりつつあります。とくに若い世代ではそれが顕著です。たとえば、私たちがZ世代130人超に、定性・定量調査で「身近ではない(家族や上司などではない)」憧れの人を訪ねたところ、2人以上同じ名前があがったのは、大谷翔平選手とイチロー選手だけでした。あとはマザーテレサや緒方貞子、高倉健、吉永小百合といった往年の著名人や、最近のK-POPアイドルや海外のアスリート、ユーチューバーなど、まさに百人百様でした。もはやZ世代以降を、単純にデモグラフィック変数でくくるのは無意味です。今後は、さまざまな形で収集したビッグデータをAIによって分析することで、今までとは異なる新しいカテゴライズが創出される時代に入るでしょう。

また、マーケティングの世界では、ユーザーをリアルに把握するために、よくイメージ上のペルソナを設定します。性別や年齢、家族構成や趣味、年収や性格、価値観や趣味嗜好まで細かく設定した人物像をつくりあげたうえで、その人を対象にした商品やサービス、マーケティング施策を考える手法です。今後はこのようなペルソナを反映させたAIチャットボットにインタビューしてその反応をみることで、マーケティング戦略の修正や改善に役立てることも一般的になるかもしれません。

ただ、このようなAI活用が普及したとしても、最終的には人間に対する対面インタビューなどでの検証は不可欠でしょう。人間には、無自覚な認知の歪みや時事刻々と変化する「気分」があり、必ずしも合理的に行動しないことは、現代のマーケティングの常識です。ですからAIの分析結果が、同じ人物にいつも同じように当てはまるとは限りません。AIの分析結果を、さまざまなシーンで多くの人の協力を得て検証し、その結果をもとにPDCAを回し、アップデートしていくことが大事です。

さらに近年、商品・サービスの開発やマーケティング施策の検証において重要なのが、「共創(co-creation)」と呼ばれる概念です。商品やサービス開発の途中から生活者に関与してもらおうとの考え方で、とくに他者と協力してなにかを創りあげることに喜びを感じやすい、今の若い人たちに有効だとされています。

ですからAIによる分析結果を叩き台にし、途中から若者たちに「よりよい商品やサービスを一緒に開発したいので、意見をください」と呼びかけることで、彼らがやりがいや愛着を感じてくれる可能性も高いのです。場合によっては、その一部がエバンジェリストやアンバサダーとして、積極的にSNSなどで紹介してくれるでしょう。AIを活用したマーケティングが普及しても、そこに人間を介在させることで、さらなる付加価値を生む可能性があるのです。

PROFILE

牛窪 恵

牛窪 恵(ウシクボ メグミ)

世代・トレンド評論家、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授・修士

1968年東京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月にマーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。2019年3月立教大学大学院(MBA/経営管理学)・博士課程前期修了。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(2005年)、「草食系(男子)」(2009年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、NHK総合「サタデーウオッチ9」、毎日放送「よんチャンTV」ほかでコメンテーター等を務める。

  • ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立した執筆者の見解です。
  • ※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
  • 2024年版 最も選ばれた保険ランキング
  • パパっと比較して、じっくり検討。ネット生保もカンタン比較!
×
閉じる ×

総合窓口

9:00~21:00(年末年始を除く)

相談予約専用窓口

9:00~21:00(年末年始を除く)