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行動経済学で考える投資の勘違い

大江 英樹さんコラム - 第2回

買ってはいけないテーマ型投資信託

資産運用の手段として、投資信託の人気が高まってきています。2021年の3月に一般社団法人 投資信託協会が発表した「投資信託に関するアンケート調査報告書」によれば、2020年に投資信託を保有していると回答した人は23.4%となっています。この数字は前年の22.3%と比較しても順調に増加していますし、18年の14.7%と比べると6割近くも増加しています。そんな人気の投資信託の中に「テーマ型投信」と言われるジャンルの投資信託があります。

テーマ型投信とは、特定の投資テーマ、例えばAIであるとかDX(デジタル・トランスフォーメーション)あるいはESGや五輪といった、その時に話題になっているテーマに関連した業界や企業に投資するというタイプのものです。

実はこういうタイプの投資信託は最近急に出てきたものではなく、昔からありました。ところが過去の実績を見ると、こうした投資信託の多くは短命に終わっています。例えば1980年代にはバイオブームがありましたし、一方では世の中に移動体通信(この言葉自体もほとんど死語ですが)が出始めた頃なので、電気通信関連企業も非常に注目されました。さらにこうしたテーマ型投信はジャンルを変え、形は変われども、今でも売り出されていますが、長い期間に亘って大きく育ったというものはほとんどありません。つまり、そのほとんどは失敗に終わっているのです。

ではなぜ過去にいくつもの失敗例がありながら、相変わらずテーマ型投信が売り出されるのでしょうか。この理由は行動経済学で考えるとわかるのですが、その前になぜテーマ型投信が成功しないのかを明らかにしましょう。

テーマ型投信の運用は論理的に正しくない

投資信託というのは、複数の有価証券に分散投資をするものです。株式投資信託の場合であれば言うまでもなく、複数の企業の株式に投資をします。投資信託はその運用方法を大きく2つに分けると、インデックス型とアクティブ型があります。インデックス型は市場の指数、例えばTOPIXや日経平均に連動を目指すタイプなのでとてもシンプルですが、アクティブ型は、それらの指数を上回ることを目指すタイプなので、値上がりの大きそうな銘柄をファンドマネージャーが選んで投資します。もちろん必ず指数を上回るわけではありませんが、目標としては平均を上回ることを目指しますので、どの企業に投資をするのか?というのが重要なポイントになります。テーマ型投信は市場全体に投資するのではなく、特定のテーマに沿った業種の企業に投資をすることになりますから、アクティブ型の一種です。

ここで注意しなければならないのは、アクティブ型は独自の運用方針に基づいて運用しますが、それは投資する基準を明確にしているということであって、投資する対象の母集団を狭めるという意味ではありません。具体的に言えば業種や規模やテーマは関係なく、その企業の利益成長性で判断すべきなのです。したがって、そのために重要なことは、そういった銘柄を数多い対象の中から選ぶことであって、選ぶ対象の母集団が大きいほど、良い銘柄を発掘できる可能性が高くなるのは当然です。

だとすれば、テーマ型投信のように投資する対象を母集団の段階から狭めてしまうというのは、どう考えても合理的な投資方法であるとは言えません。

「わかりやすいこと」が「儲かる」とは限らない

ところが、テーマ型投信というのは常に人気があり、売り出されると多くの人が購入します。したがって、運用会社もさまざまなテーマ型投信を作って売り出します。過去にいくつもの失敗例がありながら、なぜそうなるのか?その理由は“わかりやすい”ことと“販売しやすい”ことにあります。中でも最大の理由はわかりやすさです。AIやDX、5Gなどというテーマはテレビやニュースでもよく取り上げられているため、投資信託を全く知らない人でもなじみがあります。ということは、販売する側にとっても説明がしやすく、売りやすいということです。ただ、いくら言葉を聞いたことがある、あるいは、よく知っていたとしても、それが必ずしも上がるとは限らないのは当然です。「わかりやすいこと」と「儲かること」は別だからです。

行動経済学では「利用可能性ヒューリスティック」と言われる心理現象があります。どういうことかというと、身近なものやわかりやすいものは、起きる確率が高くなると勘違いすることを言います。投資信託選びの場合で言えば、知っているもの、最近話題になっているものは、上がる確率が高そうに思えるということなのです。

テーマ型投信に当てはめて具体的に言えば「株のことはよくわからないけど、AIや5Gはブームだし、あちこちでロボットも見かけるから、きっとそういうものを作っている会社は注目されるだろう」と言った具合に誰でも想起しやすいことから、関連する株も上がるのではないか?と感じてしまうというのが「利用可能性ヒューリスティック」なのです。

既に高値になっている場合が多い

ところが多くの場合、一般のニュースや話題で取り上げられているということは、既に株式市場でも相当関心が高まっているわけですから、株価も既に上がってしまっていることが多いのです。「これからの日本にとって重要なテーマだ!」「長期的に成長が期待できる分野だ!」と人々が感じることで、株価が先行して上昇するという現象です。なぜなら、短期的には株式市場というものは、当面利益が上がっていなくても将来を先取りして上昇することもあるからです。

そういったブームになっているテーマの銘柄は、言わば玉石混淆(ぎょくせきこんこう)の状態ですから、どれもこれも株価が上昇するということはしばしば起きます。したがって、テーマ型ファンドが設定された時は往々にして、投資対象の銘柄が既に高値圏になっているという可能性が高いのです。私が証券会社で40年近く働いた経験で振り返ってみても、テーマがもてはやされた時に売り出されたテーマ型投信の多くは、その後悲惨な結末を迎えています。

テーマ型投信は長期の投資には向いていない

ただし、こうしたテーマ型ファンドは短期的には儲かる可能性もあります。高値圏にいるということはそれだけ株価の動きも激しくなっていますから、設定してごくわずかの間に急騰することもあり得るからです。そうなると一気に人気が高まり、さらに売れるでしょうから、販売する方も熱心に勧めてきます。でも、そこで買うのはリスクが高いと考えるべきでしょう。あなたがもしテーマ型投信を既に買ってしまっているなら、こうした急騰局面では売却しておいた方が無難だと思います。

株式というものは、その会社が優れたビジネスモデルを持っていたり、将来は画期的な新商品や新薬の開発が見込めたりする場合は、現実の業績が伴っていなくても先行きを見越して上がることがあり得ます。これがいわゆる「理想買い」と言われるフェーズです。ところが、その後は業績が思うように伴わないために下がり、しばらく低迷することが多いのですが、後になって現実に利益が出て業績が伴ってくると上がる、ということもよくあることです。例えば、ソフトバンクグループは20年前に株価が20万円以上をつけたことがありました。当時はまだ赤字会社でしたので、言わば「理想買い」の段階だったのです。その後株価が大幅に下落し、しばらく低迷を続けたものの、その後に取り組んだ携帯電話事業が中核となり、着実にキャッシュを生み出す企業になってからは再び上がってきました。これはまさに「理想買い」から「業績買い」に移行した良い例でしょう。パターンは異なりますが、米国のAmazonも同じようなことが言えます。

テーマ型投信でも、本当にしっかりと長期に継続しそうなテーマのものであれば、長期投資として買っておくのも悪くはありません。ただしその場合でも、理想買いで盛り上がっている最中にわざわざ高値を買いにいく必要はありません。どこかで下がった時に買うかどうかを考えればいいのです。

結論として、長期的に資産形成を目指す一般投資家は、短期的な人気に左右されるテーマ型投信は買わない方が賢明だと思います。“はやりもの”に飛びつくと、ろくなことはないというのは投資の世界でも真実です。

PROFILE

大江 英樹

大江 英樹(オオエ ヒデキ)

経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。大手証券会社において定年まで勤めた後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、確定拠出年金、行動経済学に関する講演・執筆・メディア出演等の活動を行っている。CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員等。「日経ヴェリタス」、「ダイヤモンド・オンライン」、「東洋経済オンライン」等にコラムを連載。NHK「ラジオ深夜便・おとなの教養講座」レギュラー解説者。最新著『あなたが投資で儲からない理由』(日経BP社)など、これまでの著書累計出版部数35万部。

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