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行動経済学で考える投資の勘違い

大江 英樹さんコラム - 第3回

“お勧め銘柄を聞いてしまう”-投資家の心の罠

株式投資は「選択」の連続

人生というのは選択の連続です。考えてみると我々が暮らす日常の中でも「何かを選ぶこと」というのは、実にたくさんあります。どこの学校に進学しようかとか、誰と結婚しようかなどという、人生における重大な決定はもちろんのこと、お昼には何を食べようか?とか、今日は仕事が終わったらどこへ遊びに行こうかといった小さいことまで、我々の生活は“選ぶこと”が求められる連続と言ってもいいでしょう。同じように株式投資も“選択の連続”です。ところがこの「選択する」というプロセスにおいて、いくつもの心理的な罠が待ち構えているのです。

株式投資において選択しなければならないことは、少なくとも3つあります。

  1. (1)銘柄の選択―何を買うか?
  2. (2)買い時の選択―いつ買うか?
  3. (3)売り時の選択―いつ売るか?

やはり投資で一番大事なことは、「何に投資をするか」ということですから、最初にして最も大事なのは銘柄の選択でしょう。次は、それをいつ買うのかということです。ことわざにも「株価を買うな、時を買え」というのがあるぐらいですから、タイミングもある程度は必要になってきます。成長銘柄を長期に亘って保有するのなら、あまり買いのタイミングは気にしなくても良いでしょうが、それでも高値に飛びつくのは避けたいところですから、やはり今の時期に買うべきかどうかを考えることは重要です。そして、買った後は当然価格が変動しますから、今度は“それをいつ売ればいいのか?”、「売り時の選択」が待っています。

このように重要なものだけでも3回ありますし、場合によっては下がった時に買い増しをするかどうか、あるいは逆に上がった時には一部だけ売ろうかとか、色々と複雑な選択肢が出てきます。ところが、こういう判断をするのはかなり心理的に負担が大きいものです。なぜなら、これら投資の判断をするためには実に多くの要素を考慮し、考えなければならないからです。その上いくら分析して考えても、株価というものは必ずしも理屈通り、予想通りに動くわけではありません。いつの場合も悩むことになるため、心理的な負担は当然大きくなります。とは言え、少なくとも株式投資を自己責任においてやろうというのであれば、こうして自分自身で考えて“選択”することを避けて通るわけにはいきません。

一番儲かるものを教えてくれ!

ところが往々にして投資家の方たちの中には、こういう面倒なことを考えるのが嫌で、「すぐに儲かるものを教えてほしい」という方々がいます。というよりも、そういう方の方が多いかもしれません。私も現役時代には株式投資セミナーで講師をやっていましたが、景気やセクター別の動向、金利や為替といった話をしている時はぐっすり寝込んでいる参加者が「では、以上の背景を踏まえて注目銘柄についてお話します」と言った途端にガバっと起き上がって熱心にメモを取り始める、という光景をしょっちゅう目の当たりにしてきました。先日も、あるアナリストの方とお話していた時に、参加者からの質問で「銘柄だけ教えてください、理由はいりません!」というのがよくあるというお話を聞きました。

また企業型確定拠出年金は、2021年3月末時点で加入者が750万人くらいですが、この制度は、会社が出す掛金を従業員が自分で運用する制度です。そのため、制度を始めるにあたっては、必ず投資教育をおこなうことが事業主に義務付けられています。私もそんな投資教育で講師を務めたことが何度かありましたが、会社は違っても必ず出てくる同じ質問があります。それは「むずかしい話はどうでもいいから、一番儲かるものを教えてくれ」というものです(笑)。気持ちは決してわからないではありませんが、それがわかれば誰も苦労はしません。

こういう質問をする人の多くは「投資」をよく知らない上に甘く考えているのです。「株の儲けなんか不労所得だ」と思っているのです。だから「楽をして儲けることができる」と勘違いをしています。でも、投資はそれほど簡単なものではありません。確かに、投資の儲けは額に汗して得るものではありませんが、言わば「脳に汗して得るもの」なのです。少なくとも投資で長期的に利益を得ようと思ったら、財務諸表を読みこなす能力は必須です。最低でも四季報や決算短信は読み込んだ上で投資をしないと、失敗する可能性が高くなります。それなりに時間とコストをかけないと利益は得られないのです。

思考停止と後悔回避

ただこのように、人に頼ったりお勧め銘柄を聞いたりするのは、初心者だけではありません。それなりに経験を積んだ人の中にも、こういう風に「選択」を人に任せようとする人は少なくありません。なぜ彼らはそうなるのでしょうか?行動経済学の観点から考えると、2つのことが挙げられます。まず1つ目は「情報負荷による思考停止」です。

人間は、白か黒かという具合に比較的単純に答を出せるものは得意ですが、判断する要素が多くなるほど、脳の中で情報を処理することが難しくなり、考えるのが面倒になって人に頼りたくなるという気持ちが出てきます。やっかいな悩み事があると、それを占い師に見てもらいたくなるという心理です。株式投資にあたっては、市場全体の動向や金利情勢、そして投資しようとする企業の成長性や業績見通しなど、多くの要因を考慮して判断する必要があります。あまりにも考えるべき情報が多いため、こういうことを考えるのが面倒で思考停止に陥ってしまい、「とにかく儲かりそうな銘柄を教えてくれ」ということになりがちなのです。でも、多少なりとも投資経験のある人なら、人に聞いてもそれが必ずしも当たるとは限らないということは、十分わかっています。にもかかわらず、なぜ聞こうとするのか?

それがもう1つの理由、「後悔回避」です。何かを選択するということは、その他の選択肢を捨てるということで、これは勇気のいることです。選択したものが必ずうまくいくとは限りません。ひょっとしたら、選ばなかった他の選択肢の中にもっと良いものがあったかもしれませんし、自分の選択が失敗して損をするということもあり得ます。そんな、失敗した時に後悔したくない、自分のせいにしたくないという気持ちが出てくるのは、ごく自然なことです。人は、意思決定にあたって後悔を回避したいと思うものなのです。

そこで、誰かに聞いてその人の言うとおりに売買すれば、その時点では悩まなくても済みます。「あの人の見通しはよく当たる!」とか「あの人の言うことは正しい」と信じることはとても楽ですし、仮に当たらなかったとしても、それは自分の責任ではなく、当てられなかった人のせいにできるからです。要は自分のせいで後悔したり、損失が生じたりすることを避けたいという気持ちから、判断を誰かに委ねることになるわけです。これが昂じていくと、それは一種の“信仰”に近いものになってしまいます。

でも、投資で最もやってはいけないことは“信仰”を持つことです。宗教の世界では「信ずる者は救われる」かもしれませんが、相場の世界では「信ずる者は裏切られる」ことが多いからです。投資において、信仰を持つということは別な言い方をすると「思考停止」になることです。そしてこれは株式投資だけではなく、投資信託でも起こり得ます。「あのファンドマネージャーは優秀だから」とか、「あの投資信託の理念が素晴らしいから」ということだけで、盲目的に買ってしまうといったこともあり得るのです。

しかしながら投資するにあたっては、自分がどう判断して行動するのかを考え抜くことが大切です。前述したように“脳に汗をかいて”柔軟に考え、柔軟に対処することこそが成功する道です。なぜなら、相場に「絶対」ということはないからです。常に柔軟に考えながら、臨機応変に判断していくことが大切なのです。

それができない人は、アクティブ型の投資信託を購入するのが良いでしょう。ただし、その場合でも、自分が投資しようとしている投資信託の中身や自分が負担すべきコスト、運用方針等については、自分なりによく理解した上で購入すべきです。

儲かっても損をしても、最終的には全ての責任は投資家が負うべきなのですから。

PROFILE

大江 英樹

大江 英樹(オオエ ヒデキ)

経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。大手証券会社において定年まで勤めた後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、確定拠出年金、行動経済学に関する講演・執筆・メディア出演等の活動を行っている。CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員等。「日経ヴェリタス」、「ダイヤモンド・オンライン」、「東洋経済オンライン」等にコラムを連載。NHK「ラジオ深夜便・おとなの教養講座」レギュラー解説者。最新著『あなたが投資で儲からない理由』(日経BP社)など、これまでの著書累計出版部数35万部。

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