海外で病気やケガをしたらどうする?知っておきたい“海外の医療事情”

海外旅行に行くとなると「もし海外旅行先で病気やケガをしたら?」と、不安に思う人もいるのではないでしょうか。
今回は、海外旅行へ行く前に知っておきたい、海外の医療事情や健康保険の海外療養費制度、民間保険についてご紹介します。
海外で病気やケガをしたらどうする?
病気やケガをしたときにどのくらい医療費がかかるのか、多くの人が日本で治療を受けた場合については想像できるのではないでしょうか?日本では、救急車を呼ぶのは無料で、健康保険により自己負担の費用が抑えられるからです。
しかし、海外で病気やケガの治療を受けた場合には、日本で治療を受けた場合に比べて医療費が高額になるケースが少なくありません。海外には、救急車を呼ぶだけでも費用がかかる国や、医療費自体が高い国もあります。また、医療費の高い海外旅行者向けの私立病院に行くのが一般的な国、保険がないと治療が受けられない国、入院の際に保証金が必要となる国があり、旅行先の医療事情によっては、病気やケガの状態により近隣の国や日本へ移送することもあります。
表1 海外の医療事情
国名(地域) | 医療事情 |
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アメリカ(ニューヨーク) | アメリカの医療費は全般的に高額。救急車も有料。ニューヨーク市マンハッタン区では特に高額(同区外の2倍~3倍)で、急性虫垂炎で入院し手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)で70,000ドル、上腕骨骨折による入院手術(1日入院)で15,000ドルの請求をされた例がある。 |
中国(北京) | 先進国と同様の医療が受けられる外資系医療機関では、医療費が高額になりがちで、緊急入院1日10万~20万円、日本へ移送の場合は数100万~1,000万円を請求されることもある。その他の病院でも、入院や検査の受付時に保証金を預けなければならないこともある。 |
タイ | バンコクでは、代表的な私立病院の医療水準は高い。日本の病院で研修経験のある医師、日本語通訳が勤務する病院もある。診察料・治療費等は私立病院がそれぞれ独自に定めているため、事前確認が必要。 |
フランス | 診察料・検査代・薬代など、治療費が非常に高額になる可能性がある。救急車は有料。 |
イタリア | 旅行者は私立病院(大概英語が通じ医療環境も良好)を受診することが多いが、医療費は高額。救急車は、公営のものは無料。 ツーリスト・メディカル・ガードで、簡単な初期診療・処置・薬購入のための処方箋等を外国人旅行者に提供している。 |
資料:外務省ホームページ「世界の医療事情」をもとに執筆者作成
国によって医療事情はさまざまです。自分の旅行先について、公的機関のホームページなどの信頼できる情報源から、最新情報をきちんと確認しておくようにしましょう。また、万一のときに備えて、旅行先にある大使館や総領事館などに相談できるように、連絡先を控えておくことをおすすめします。
海外でも日本で加入している保険が利用できる?
海外で病気やケガの治療を受けた場合でも、日本で加入している保険が利用できることがあります。
また、加入している健康保険から海外で支払った医療費の一部払い戻しを受けられる「海外療養費制度」があります。
(1)死亡保険・医療保険
死亡保険や医療保険のなかには、海外で死亡・入院した場合でも保険金を受け取れる商品があります。現在加入している保険の保険証券やパンフレットを見て、海外でも使えるかどうかを確認してみましょう。保険金を受け取るためには、診断書などの必要書類を準備する必要があります。海外旅行に行く前に、加入している保険の証券番号と海外から通じる連絡先を控えておくと、いざというときにスムーズに手続きが進められるでしょう。
(2)健康保険の海外療養費制度
健康保険には、海外療養費制度といって、海外の医療機関で病気やケガの治療を受けた場合、申請することで医療費の一部が払い戻される制度があります。海外療養費制度を利用したい場合は、加入している健康保険の窓口(自治体の国民健康保険の場合は市区町村。会社の健康保険の場合は協会けんぽや独自の健康保険組合)にて、詳しい申請方法を確認してください。
海外療養費の対象は、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られ、治療を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合は対象となりません。また、日本国内で実施できない治療を行った場合も対象となりません。
海外療養費制度で払い戻される金額は、日本で同じ治療をした場合にかかる医療費を基準に計算されるため、海外で実際に支払った医療費よりも大幅に少ないことがありますので、注意が必要です。
図 海外療養費の使用例(被保険者が3割負担者の場合)

資料:執筆者作成
日本の海外療養費制度や医療保険が利用できるのは嬉しいことですが、支払った医療費の全額をカバーできるとは限りません。海外で高額な医療費がかかってしまうことに備えて、海外旅行保険にも加入しておくと安心です。
海外での病気やケガに役立つ海外旅行保険のサービス
海外旅行保険には、海外でもスムーズに病院を受診するために役立つ便利なサービスが用意されています。海外で病気やケガをしたときに最も大切なことは、無事に治療を受けられるようにすることです。海外旅行先によっては、病院探しから受診、支払いまで、自力で行うのが難しい国もあることでしょう。その場合は、安心して旅行を楽しむためにも、下記のようなサービスがついた海外旅行保険を活用することを検討してみましょう。
表2 海外旅行保険の便利なサービスの例
サービス例 | メリット |
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最寄りの病院や医師の紹介 | 最寄りの病院や医師の紹介、日本語を話せる医師の在籍有無などの情報を提供してくれるので、事前に自分で病院を探していなくても安心。 |
電話通訳手配 | 病院で治療を受けるときに通訳が利用できるので、日本語が通じない病院でも、安心して治療を受けることができる。 |
キャッシュレスサービス | 提携病院で治療を受けた場合に、保険会社が直接病院へ治療費を支払ってくれるため、クレジットカードの利用限度額の心配や、自分でまとまった現金を用意する必要がない。 |
緊急移送のアシスタント | 病院や日本への緊急移送が必要なときにサポートしてくれるので、医療設備が整っていない国でも安心。 |
海外旅行者向け無料アプリ | 最寄りの病院情報の提供(保険の契約者限定)や旅行先の安全情報の提供など、無料アプリで海外旅行をサポートしてくれる。 |
資料:執筆者作成

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コラム執筆者プロフィール
張替 愛 (ハリカエ アイ) - AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 大学で心理学を学んだ後、損害保険会社にて5年半勤務。その後、夫の海外赴任を機に独立を決意。育児をしながら在宅でファイナンシャルプランナーとしての活動を始める。転勤族や、仕事と家庭の両立で悩む女性のために、オンラインでのマネー講座や個別相談を開催中。
FP事務所マネセラ代表
ファイナンシャルプランナー 張替 愛
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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