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今、日本という国で起きていること

山口 周さんコラム - 第3回

「喜怒哀楽」をビジネスの武器にする

みなさん、こんにちは。山口周です。

近年、多くの先進国で今以上の経済成長が見込めなくなっています。とりわけ日本では、物質的な豊かさを目指して頑張っていれば良かった「登山」の時代が終わり、精神的な豊かさがキーワードとなる「高原」の時代を迎えています。そんな時代の変化に応じて、企業やビジネスも「役に立つもの」から、新しい「意味があるもの」が生き残っていくでしょう。

では、このような大きな変化の時代に、個人の働き方や会社との関係はどう変わっていくのでしょうか。私の考えをお伝えします。

これからのビジネスで必要なのは人間の「喜怒哀楽」

これまでお伝えしてきたように、これからの先進国の企業やビジネスは“便利・快適・安全”な「役に立つもの」の生産から、“情緒・ロマン・ストーリー”といった感情的な価値を持つ「意味があるもの」へシフトしていかざるを得ません。そのような時代には、上からの指示に従ってひたすら「役に立つもの」を作ってきた人は、だんだん生きづらくなっていくでしょう。思考力や分析力を用いて、課題に対して的確な解を出していく方法も、これからはAIによって代替されていきます。

そんな一寸先がわからない時代のなかでも、伸び伸びと仕事をしている人たちがいます。彼らに共通する特徴は「自分の感情と仕事が同心円になっている」ことです。なかでも、イノベーティブなビジネスで活躍している人は特に、自分の喜怒哀楽と仕事がリンクしている人が多いように思います。

例えば、高品質な予備校の授業をいつでもどこでも受講できるリクルートの『スタディサプリ』を立ち上げた、山口文洋さんもそんな一人です。彼は、経済的な理由で子供を塾に通わせられず、勉強の機会をなかなか作ることができない母子家庭のお母さんと出会い、その哀しみに深く心を動かされたそうです。それと同時に、「これだけ経済的に豊かでデジタル技術も発達している国なのに、教育の格差はほったらかしにされているのか」と、強い怒りが込み上げてきたそうです。そんな哀しみや怒りを原動力に、彼はリクルート内で新しい事業を始め、実際に成功したのです。

『スタディサプリ』には、事業として成功するかどうかわからない段階でも、高い報酬をもらっていた多くの予備校の人気講師が「ぜひ自分も手伝いたい」と参加してくれたそうです。それは参加を呼びかけた山口文洋さんの熱い思いやビジョンが、彼らの共感を呼び、心を動かしたからです。このようなことは、AIには絶対にできません。

会社の枠を超えて、仕事の喜びややりがいを考える

これまでの時代、ビジネスに必要な金・モノ・人といったリソースは、ほぼすべて会社に集中していました。そのため、ビジネスパーソンが自分の時間や能力をすべて会社に注ぎ込むことは、理にかなった行為でした。しかし、今はあらゆるリソースが、あらゆる場所に分散していっています。どんな分野でも最先端の面白い取り組みは、さまざまな組織・個人によるコラボレーションや、会社の枠を超えたプロジェクトベースのものが多いように思います。

仕事に対する価値観についても、優秀な人ほど金銭的な見返りより、意義ややりがいを重視するようになってきました。これからは、嫌なことや辛いことを我慢してやっている人より、好きなことや夢中になれることを自分らしくやっている人のほうが、活躍できる時代です。また、会社に所属している人でも、社外からの刺激や情報を多く受けやすい状況になってきた分、自分の能力やスキルの投下先を社外に見つけやすくなったと言えるでしょう。リモートワークの普及は、こうした状況に拍車をかけています。言い換えるならば、「企業が個人に搾取される時代」がやってきたという見方もできるかもしれません。

このように、これからは仕事の喜びややりがいを、会社という枠を超えて考える必要があります。自分がどうしてもやりたいことを会社でできないのなら、転職したり、独立したりするのも良いでしょう。クラウドファンディングなどを例にとっても、これまでなら資本がないと人が集まらなかった事業でさえも、共感のできるビジョンがあれば、資本と人が同時に集まってくる時代です。自分が本当に価値を感じるプロジェクトに参加し活躍することで、喜びややりがいを感じる。そんな生き方をする人が、今後は増えていくのではないでしょうか。

自分にしかないビジョンや課題意識を持つことがビジネスを変える

“便利・快適・安全”を重視する「役に立つ」ビジネスはたいていの場合、最後は規模の勝負となり、個人や小さな組織は大企業に勝てません。しかし、「意味がある」ビジネスは、掲げたビジョンが人々の共感を呼ぶものであれば、非常に意義のある事業を生み出す可能性があります。

また、これからのビジネスパーソンにとって一番大事なことは、自分にしかない問題意識や方法を掲げて、仲間の共感を集めることができる磁力を持った人になることです。そのためには、まずは自分のベースとなる感情を動かしていくことが大切です。「今、これが流行っているから」「これが求められているから」という通り一遍の考え方ではなく、「自分は何に感情が動くのか」「夢中になれることは何なのか」といった視点で自身に問いかけてみるのです。今、自分が置かれている状況のなかで、素直に心が動くことに挑戦してみる。そこにこそ、その人にしかない「意味」が眠っている可能性があります。

いずれにしろ、これからの時代を生きる人たちの役割は、経済成長という終わったゲームの延長戦をやることではありません。まずはこれからの社会を、どんな姿にしたいのかを自分なりに考える。その上で、自分が持っているビジョンや課題に対してアクションすることで、「便利で快適な世界」を「生きるに値する世界」に変えていけるのではないでしょうか。

PROFILE

山口 周

山口 周(ヤマグチ シュウ)

独立研究者、著作家、パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。電通、ボストン コンサルティング グループ(BCG)などで戦略策定、文化政策、組織開発等に従事。著書に『ビジネスの未来』(プレジデント社)、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。株式会社中川政七商店社外取締役、株式会社モバイルファクトリー社外取締役。

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