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しゅんぺいた博士と学ぶ破壊的新規事業の起こし方

玉田 俊平太さんコラム - 第2回

えっ?イノベーションって「技術革新」じゃないんですか?

多くの企業が目指す「イノベーション」

たとえば東レは「イノベーション・バイ・ケミストリー」をスローガンに、化学でイノベーションを目指しています。また、富士フイルムは「バリュー・フロム・イノベーション」を合い言葉に、イノベーションから価値を生むことを目指しているようです。

このように、「イノベーション」を会社の目標に掲げている会社は多いのですが、いざ、

「イノベーションとはどういう意味ですか?」

と尋ねると、さまざまな自己流の「定義」が返ってきて驚かされます。

「新結合だ!」

「技術革新だろ?」

「社会を変えなくてはイノベーションとは呼べない。」

などなど、まさに「百家争鳴(ひゃっかそうめい)」の状態です。

イノベーション⇒新結合ではありません

たとえば、年上のインテリの方に

「イノベーションとは何ですか?」

と尋ねると、

「新結合だ」

という答えが返ってくることがあります。これは、イノベーション研究の創始者と言われ、私の名前の元にもなったオーストリア生まれの経済学者J.A.シュムペーターの、約100年前の定義です。

彼は『経済発展の理論』の中で、「技術的に見ても経済的に見ても、生産は自然法則的意味において何かを『創造』するものではない」と述べ、「生産」とは労働力や原材料などのインプットを機械的、化学的プロセスなどの多種多様な力で加工し、場所を移動するなどして「結合」することだと定義しました。

そして、経済発展は、「企業家」が、その時点で利用しうるさまざまな物や力を新たな形で組み合わせる(=「新結合」する)ことを通じてもたらされるのだと述べました。

しかし、以下のように、この定義は現代の視点から見るとやや古いように感じられます。

たしかに一見、これまでに見たことがないような画期的な新製品であっても、その中身を詳しく見ると、既存の知識を新しい形で組み合わせたもの(新結合)だった、ということがあります。

たとえば、イギリスのダイソン社が発売した「吸引力が変わらない画期的な掃除機」は、以前から工業的に使われていた空気と塵とを分離する「遠心分離(サイクロン)技術」と「家庭用掃除機の技術」を組み合わせたものです。

ただし、既存技術の組み合わせといっても、それを実用的な製品として完成させるためには、5,000個以上の試作品と4年以上の歳月を必要とし、大変な苦労があったそうです。

いっぽう、イノベーションの中には、シュムペーターが言うように既存の技術を新しいやりかたで組み合わせた(新結合)わけではなく、新しい科学上の発見や新しい技術の開発(=「技術革新」)がきっかけとなったものもあります。たとえば、医療に欠かすことができないレントゲン撮影は、X線の発見という物理学上の新知識がなくてはあり得ませんでした。また、LED電球のイノベーションの基となった青色発光ダイオードも、物理学の知識がその発明に大きな役割を果たしたそうです。もし、

「ある製品やサービスがイノベーションである」

ならば、

「その製品やサービスは新結合である」

という定義が正しければ、全てのイノベーションは新結合であると言えなければなりませんが、実際には、レントゲンや青色半導体発光ダイオードのように、必ずしも既存知識の新結合とは言い切れないものもあることから、イノベーションの定義としてふさわしくないことがわかります。

新結合⇒イノベーションでもありません

「イノベーションの定義が新結合である」とすることのもうひとつの問題点は、イノベーションを起こそうとするときに、「何か既存の知識の新しい組み合わせをランダムに探せば良い」と捉えてしまいかねないことです。

あまたある発想法の一つに、さまざまなアイデアが書かれた紙片を多数用意し、その中からくじ引きのようにランダムに抽出して、いくつかを組み合わせるというものがあります。

私たちが目にする家電製品の中にも、「電子レンジ」と「オーブン」を組み合わせた「オーブンレンジ」や、「洗濯機」と「乾燥機」を組み合わせた「洗濯乾燥機」など、複数の家電の機能を組み合わせた製品が見受けられます。

しかし、それでは新しい機能と機能を組み合わせれば、それでイノベーションと言えるのでしょうか?たとえば、「トースター」と「アイロン」を組み合わせた「アイロントースター」という家電があったとして、これはイノベーションと呼んで良いものなのでしょうか?

少し考えればおわかりのように、トースターとアイロンとを組み合わせても、それが相乗効果を発揮して新たな便利家電になるとはとても思えません。そうすると、「アイロントースター」は多くの顧客に受け容れられることもなく、広く社会に行き渡ることもないでしょう。

つまり、「アイロントースター」は、たしかに既存知識の新しい形での結合(新結合)ではあるものの、およそイノベーションとは呼べそうもないということがわかります。

イノベーション=技術革新でもありません

「イノベーションとは何ですか?」とお尋ねした際、「技術革新だ」とお答えになる方も多くいらっしゃいます。しかし、これは約60年前の「経済白書」に書かれた古い定義です。

たしかに、これまでのイノベーションの歴史を振り返れば、電気技術によって可能となった電話、化学や光学の技術によって可能となったフィルムやカメラ、物理学や微細プロセス技術によって可能となった半導体やマイクロプロセッサ、航空力学や材料工学、構造力学などによって可能となった飛行機など、新しい科学や技術の知識をてこに、それまで不可能だったことを可能にし、多くの顧客に受け容れられた製品やサービスのイノベーションが多くを占めるように思われます。

今や自動車開発にも航空力学の知識は欠かせない

しかし、イノベーションを「技術革新である」と捉え、新しい技術を開発し、それを使って製品化しさえすれば必ずイノベーションが起こせると考えるのは危険です。

特に、科学者やエンジニアの中には、「研究室である現象が可能となったこと」や「あるアイデアが特許として申請し認められたこと」をもって、イノベーションは完成したと考えてしまう方も時々おられます。しかし現代的な理解では、イノベーションとは、

  1. (1)「技術や市場の機会を捉え」、
  2. (2)「新しい製品やサービスのアイデアへと転換し」、
  3. (3)「それを広く行き渡るようにする」

という一連のプロセスです。(ジョー・ティッド/ジョーン・ベサント/キース・パビット著『イノベーションの経営学』)

「ある製品やサービスのアイデアが、技術的に可能であることが実証された」だけでは、まだイノベーションのプロセスは(2)までが達成されたに過ぎません。マンスフィールドという学者の研究では、アメリカの化学系大企業において、アイデアが「技術的に」実現した確率は約8割もあったのに対し、それが顧客に受け容れられ、市場で「製品として成功した」確率は「技術的に」実現したアイデアのうちのわずか2割にすぎなかったそうです。

つまり、イノベーションにおいて、製品やサービスのアイデアが技術的に実現可能となった(技術革新が起こせた)ことは、イノベーション全体のプロセスから見るとまだまだ道半ばであり、イノベーションを技術革新と捉えてしまっては十分な成功が期待できない、ということがおわかりいただけたのではないかと思います。

イノベーション=「創新普及」と捉えよう!

ここまでのご説明で、イノベーションを「新結合」と理解しては、単なる組み合わせパズルのように捉えられて良くないこと、「技術革新」と捉えては、あるアイデアが技術的に実現できたらそこで終わりと捉えてしまいかねず、イノベーションのプロセスが道半ばとなってしまいかねないことをご理解いただけたことと思います。

こうしたことを踏まえ、私はこの「イノベーション」という一連のプロセスを日本語に訳すのに、新しいアイデアを生み出す「創新」という言葉と、それを顧客に広く受け容れてもらう「普及」という言葉を組み合わせ、「創新普及(イノベーション)」としてはどうかと提唱し、これまでに多くの方からご賛同をいただいています。

出典:玉田 俊平太著『日本のイノベーションのジレンマ 第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』

さらに勉強を深めたい方は、拙著『日本のイノベーションのジレンマ 第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』をお近くの書店等で手に取ってみてください。

PROFILE

玉田 俊平太

玉田 俊平太(タマダ シュンペイタ)

関西学院大学 経営戦略研究科 研究科長、博士(学術)(東京大学)

1966年東京都生まれ。東京大学卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。ハーバード大学大学院にてマイケル・ポーター教授のゼミに所属、競争力と戦略との関係について研究するとともに、クレイトン・クリステンセン教授から破壊的イノベーションのマネジメントについて指導を受ける。筑波大学専任講師、経済産業研究所フェローを経て現職。著書に『日本のイノベーションのジレンマ 第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』(翔泳社)、『産学連携イノベーション―日本特許データによる実証分析』(関西学院大学出版会)など、監訳にロングセラーの『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)、『イノベーションへの解』(翔泳社)などがある。

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