知っておくべき自転車保険!事故・盗難に備えるには?(3)盗難を防ぐには

前回まで、自転車関連事故のデータをひも解いて、被害に備えるためのお話を第1回で、加害者にならないようにするにはどうすればよいかについてのお話を第2回で、それぞれお話しをさせていただきました。
お伝えしたように、自転車の事故自体は減っていますが、一方で自転車事故に対し多額の損害賠償を命じる判決が続出しているのも事実です。
第3回では、「自転車の盗難を防ぐにはどうすればよいか」についてお話しを進めさせていただきます。
増えている?自転車の盗難事件
警察庁「平成25年の犯罪情勢」(平成26年6月)によると、平成25年の自転車盗難事件の件数は305,003件で前年より1,258件増加しています。また、検挙件数は16,560件(前年比-2,691件)、検挙人員は12,311人(前年比-2,215人)と共に減少しています。検挙人員に占める少年の割合が全体の51.4%と高い割合になっています(図1参照)。
ただ、全国で1日当たり836件程(※1)盗難事件が発生している、つまり1.7分に1件の割合(※2)で盗難事件が起きている計算になりますから、かなり高い割合で発生していると言えます。
- ※1 305,003件÷365日
- ※2 365日×24時間×60分÷305,003件
図1:自転車盗難の認知・検挙状況の推移
出典:警察庁「平成25年の犯罪情勢」(平成26年6月)
次に図2を見てみましょう。
自転車が盗まれた時の状況は、盗難防止のための施錠がされていなかったものが全体の59.5%で、前年に比べ1.6ポイント上昇しています。盗難に遭わないようにするには、まず最低限施錠はしましょう(図2参照)。
盗難自転車がひったくりなどの他の犯罪の手段や、犯人の逃走の足として利用されることがあります。
図2:自転車盗の施錠の有無別認知件数の推移
出典:警察庁「平成25年の犯罪情勢」(平成26年6月)
自転車の盗難対策は?
前々回お伝えした「リスクマネージメント(危機管理)」の考え方に照らし合わせると、予防のために手段を講じ、事件に遭ったときに最小限の被害で済むようにしておく準備=「損失制御」をすべきでしょう。
お伝えしたとおり、59.5%が施錠をしない状態で被害にあっているようです。やはり、カギは必ずかけましょう。ただ、約40%は施錠していても盗難に遭っています。施錠しているのに盗難に遭った時に、どのようなカギがつけてあったかはわかりませんが、盗難防止策として標準装備のカギの他に、簡単に壊されないようなカギを複数つけておくのも必要と考えます。
特に、近年購入者が増えている数十万円もするような高額なスポーツ車を所有している方は、注意を払うべきでしょう。
また、盗難に遭うということは、盗まれやすい環境に自転車を置いているという可能性もあるでしょう。保険によっては、自転車放置禁止区域で盗まれた自転車については補償の対象外になります。路上駐車ではなく、明るく監視の行き届いた駐輪場に置くようにしましょう。
最後に、「自転車の防犯登録」は必ずしましょう。
自転車購入時はもちろん、知人から自転車を譲り受けまだ防犯登録をされていない方も、自転車販売店(各都道府県の自転車商防犯協力会等に加入している自転車販売店)で防犯登録ができます。
この防犯登録ですが、実は、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(12条の3)」で義務付けられていますし、万一、盗難にあった場合でも、自転車が発見されやすくなります。
自動車盗難保険の現状
最後の手段として、リスクマネージメントでいう「移転」を考えます。リスクを外部に移して影響を低下させる仕組み=保険の利用を考えることになります。ところが、現時点で、いわゆる「自転車保険」では自転車の盗難補償のある保険はほとんどありません。
そこで、自転車の盗難補償対策として第一に考えたいのは、自転車販売メーカーが独自に扱っている「メーカーの盗難補償に加入する」ことです。
細かい補償内容は各社で違いますが、例えば、大手メーカーには最高3年間の盗難補償があり、万一盗難が起こった場合は約2,800円~4,000円の手数料で、購入車と同じまたは同等の自転車を購入できる制度があります(電動アシスト自転車の場合は本体価格の30~50%の自己負担が必要なことが多いです)。
次に検討するのが、「家財保険」でしょう。第1回、第2回でもお伝えしたとおり、自転車の補償は、他の保険に含まれているケースがあります。火災保険に入っている方で家財保険(オールリスクタイプ)を付帯している場合、自転車の盗難も「家財」と見なされ補償対象になることがありますから確認しておきましょう。
注意点は、盗難保険の支払いを受ける際に諸条件、例えば、保管の仕方(敷地内に停めている、屋根付き車庫限定など)が付いていたりすることがあり、使い勝手があまりよいとはいえないことです。「これに加入していれば安心」、とまではいえないのが現状です。
最後に、盗難補償のある保険に加入するということですが、現在は、盗難補償のある保険会社はごくわずかです。
自転車の盗難補償の商品が少ないことについては、自転車の盗難の件数が大変多く、保険会社にとってもリスクが大きいことが理由であると思われます。
このように自転車の盗難対策に関しては今のところ決め手がなく、リスクマネージメントの考え方の「保険」と、「損失制御(盗難に遭わないよう工夫する)」を合わせて備えるのが現実的な対応といえるかもしれません。
もちろん、今後、ニーズが高まってくれば、新タイプの保険も販売されるかもしれません。自転車通勤をしている者の一人として、大いに期待したいと思います。

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コラム執筆者プロフィール
佐藤 益弘 (サトウ ヨシヒロ) (マイアドバイザー.jp®登録) - (株)優益FPオフィス代表。
CFP、賃貸不動産経営管理士
東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発などの主任を務めるなか、CFP資格を取得。2000年8月より金融商品販売を伴わない独立系ファイナンシャルプランナー(FP)として活動。実務家FPの全国的ネットワーク確立のため、優益FPオフィスを設立、マイアドバイザーを運営。
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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