がん保険の加入率

保険の加入や見直しを考える場合、保障と保険料との兼ね合いから、がん保険に加入するかどうか悩む方が多くなっているように感じます。それでは、実際にがん保険の加入率はどのくらいなのか、(公財)生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査(速報版)」から確認してみましょう。この調査は全国の18歳から69歳までの男女に対し、平成25年4月から6月にかけて行われ、4,043人から回答を得たものです。
1.がん保険・がん特約加入率
調査によると、民間の生命保険会社やJA、生協、全労済で取り扱っているがん保険・がん特約の加入率は37.3%になっており、約3人に1人が加入しているという現状です。性別での加入率は、男性が40.2%、女性が35.0%と、男性の方が女性よりも高くなっています。
また、がんへの保障としては、特定疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)保障保険に加入やその特約を付加する方法もあり、こちらの加入率は33.7%になっています。そして、こちらも男性の加入率の方が女性よりも高くなっています。
2.世帯年収別加入率
まず、世帯年収によって加入率に差があるかどうかを確認してみましょう。世帯年収が300万円未満の加入率は27.0%、300万~500万円未満は35.5%、500万~700万円未満は45.9%、700万~1,000万円未満は48.2%、1,000万円以上は54.8%となっています。
この結果より、世帯年収が高くなるのに比例して、がん保険への加入率も上がっていることが分かります。年収が高くなると、がん保険に加入したいという気持ちを実行に移す方が多くなるようです。
3.住居種類別加入率
次に、住居の種類によって加入率に差があるかどうかも確認してみましょう。持家の加入率は38.6%、借家は33.1%となっていますが、持家・住宅ローンありは41.3%と高めになっています。この結果を見ると、住宅ローンを組んだ方が、がんになり返済が滞ってしまうことを心配し、がん保険に加入しているということも考えられそうです。
また、最近では、団体信用生命保険(※)にがん保障を追加した住宅ローン商品も多くなっています。がんリスクを考えた場合、この商品も選択肢の一つになるでしょう。
※ 住宅ローンの返済中に死亡、高度障害になった場合、本人に代わって生命保険会社が住宅ローン残高を支払う保険。
4.年齢別加入率
さらに、年齢によって加入率に差があるかどうかも確認してみましょう。20歳代の加入率は21.1%、30歳代は40.6%、40歳代は41.9%、50歳代は41.8%、60歳代は35.9%と、働き盛りで子育て世代の加入率が高く、若い方や引退世代は低くなっています。
一般的には、年齢が上がると年収も上がっていきますので、世帯年収別の加入率と連動しているという見方もできるでしょう。
5.ライフステージ別
最後に、ライフステージによって加入率に差があるかどうかを確認してみましょう。一番加入率が高いのは、既婚・末子中学生・高校生の48.5%、続いて、既婚・末子短大・大学・大学院生の45.2%になっています。教育資金にお金がかかる時期にがんになると困るという観点から、加入率が高くなっていると考えることができます。また、未婚の方は23.6%と、既婚のどのライフステージの方よりも加入率は低くなっています。
6.まとめ
がん保険・がん特約への加入率は年々増加しています。過去4回の調査を見てみると、平成16年は25.3%、平成19年は31.2%、平成22年は33.1%、平成25年は37.3%と右肩上がりの上昇を続けています。最近では、がんは治る病気になっていますが、その分治療費がかかるという側面もありますので、今後も加入率は上昇を続ける可能性が高いでしょう。
ただし、保障と保険料との兼ね合いを考える必要がありますので、リスク対策の優先順位をきっちり決める必要があります。一般的には、万一のときに金銭的なダメージが大きい順に保険でリスク対策を行うことになりますので、医療保険よりがん保険への加入を優先するというのも一つの考え方でしょう。
また、がんになって金銭的に困る時期はいつなのかという視点で考えると、子どもがいて仕事をしている現役世代ということになりますので、この期間だけを保障するがん保険に加入するのも良いかもしれません。ご自身のリスクに沿った商品を選択するようにしましょう。

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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) (マイアドバイザー.jp®登録) - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年3月3日
がん保険の加入条件
がん保険の加入率を見て「自分も加入した方がいいのでは」と気になったかもしれません。がん保険は誰でも加入できるものなのでしょうか。
健康状態
がん保険に加入する際に重要なのが、現在の健康状態、過去の病歴です。
特に、がんの罹患歴があるかが重視されます。告知書に「今まで、がんや上皮内新生物に罹患したことがあるか」という問いがあるのはそのためです。
また、「がんと関係がある病気・病状で、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたことがあるか」なども問われます。
免責期間
がん保険の加入時に、現在の健康状態や罹患歴の告知が必要なのには理由があります。それは、がんは発症してからすぐに自覚症状が出ることばかりではないためです。
例えば、初期の食道がんは人間ドックや検診で発見されることが多いといわれています。自分では違和感がなくても体の内部ではがんが発生していることもあるのです。
そのため、一般的にがん保険には、契約日から90日または3カ月の免責期間(待ち期間)があります。免責期間内にがんにかかっても保障はされませんので、注意するようにしましょう。
がんの罹患歴がある方の加入
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、2014年のがん罹患率は男女とも50代頃から増加しています。がんにかかってから、がん保険の重要性を実感することも少なくないかもしれません。
がんの罹患歴がある方のための保険も販売されています。また、がんの罹患歴がある方で医療保険に加入したいという方は、「引受基準緩和型」「限定告知型」や「無選択型」といった保険を探してみると良いでしょう。
まとめ
がん保険は、がんの罹患歴がなく、人間ドックや検診で問題がなかったという方ならば加入できる可能性が高いです。
がんの罹患歴がある方でも、治療・投薬が終わって一定の期間がたてば申し込み可能ながん保険も販売されていますが、保障の充実度や保険料からみると、健康なうちに加入しておく方が良いといえるでしょう。
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