初めての学資保険
子どもが生まれると、将来の教育資金を準備するために学資保険を検討する方が少なくありませんが、学資保険はあくまでも保険商品です。教育資金を準備するための一つの手段として活用する場合は、その仕組みをよく理解することが大切です。本コラムは、特に初めて学資保険に加入する方に向けて、その仕組みや特長、注意点を解説します。
学資保険の仕組み
学資保険は、子どもの将来の教育資金の貯蓄を目的とした保険商品です。原則として契約者と保険金受取人を親、保険の対象である被保険者を子どもとして契約します。
被保険者である子どもは、契約時の年齢に制限があり、7歳程度までとしている保険会社が多いです。生まれてすぐに契約するのと、7歳のときに契約するのとでは、保険料の払込期間に7年間の差が生じます。その差額分は保険料に反映されるため、子どもが小さいうちに早く加入するほど、月額の保険料は安くなります。
毎月払い込む保険料は、保険会社が運用し、契約の際に定めた時期になると学資金(満期保険金・祝い金)として受け取ることができます。その時期は、満期日に一括で受け取れるものや、子どもの節目に当たる年齢に受け取れるものなど保険商品によって違います。また、子どもの節目の年齢というのも、高校入学時と大学4年間の毎年であったり、幼稚園入学時から各学校の入学ごとであったりさまざまです。
学資保険は、最終的に払い込んだ保険料の総額よりも多くの学資金を受け取れるという貯蓄性の高さから、教育資金を積み立てる手段として活用される方が多いですが、保険商品ですので、貯蓄機能とは別に保障機能もあります。
代表的な保障機能は、契約者(親)が万一の場合、その後の保険料の払い込みが免除されるというものです。一般的に収入の高い父親が契約者になることが多く、共働きのご夫婦は、契約者をどちらにするかも契約の際のポイントとなります。なぜなら、契約者を、父親よりも母親にした方が保険料を安く抑えられることがあるからです。女性は平均寿命が長く、死亡のリスクが低いため、保険料を安く設定している保険会社が多くあります。
その他、被保険者である子どもがケガや病気になった場合の、入院保障や手術保障が付加されている商品もあります。
また、生命保険と同様、加入の際は健康に関する告知をする義務があります。告知内容によっては契約が難しい場合もありますので、ご検討の際は保険会社に問い合わせましょう。
学資保険の特長と注意点
学資保険の特長の1つ目は、子どもの進学に合わせて確実に教育資金を貯められることです。満期日までしっかり保険料を払い込めば学資金を受け取れます。
2つ目は、簡単に解約しづらいことです。中途解約はできますが、請求手続きが必要な上に、解約時期によっては払い込んだ保険料の総額よりも少ない解約金になるため、なるべく解約したくないという意識が働くのも確実に貯められる要素となります。
3つ目は、契約者(親)が万一の場合、以後の保険料負担がなくなることです。さらに、満期時には学資金を満額受け取れるので安心です。
注意点の1つ目は、保険料負担が重くなってきたときに、契約内容の変更ができないことです。子どもが生まれてすぐに加入した場合、17~18年と長期に保険料を払い込むことになります。その間に世帯収入が少なくなったリ、急にまとまった支出が必要になったりすることもあります。また、加入時の家計の範囲でそれほど負担感がなかった保険料が、子どもの成長とともに出費が増えたり、住宅ローンが加わったりすると、保険料負担が重くなるケースもあります。なお、中途解約することはできますが、解約する時期によっては、払い込んだ保険料の総額よりも少ない解約金になることがあるので注意が必要です。
2つ目は、契約時に受け取る学資金が確定することです。将来受け取る学資金は、契約時の金利水準で運用されます。もし、金利が低いときに契約した場合、その低い金利水準の影響を受けることとなり、世の中の金利が、保険料払込期間中に上がってきたとしても、上昇した金利の恩恵を受けることができません。
商品選択のポイント
保険会社各社で、さまざまな特徴のある学資保険を販売しているので、選択に迷うことがあるでしょう。
学資保険の選択のポイントは3つです。
- ・貯蓄の優位性
- ・学資金の受取時期
- ・保険料と家計のバランス
この3つのポイントを詳しくみていきましょう。
まず、貯蓄の優位性とは、払い込んだ保険料の総額よりも、どれだけ満期時の受取額が多いかということです。
その指標を、各保険会社は、「受取率」や「戻り率」、「返戻率」という表現で、「%」で表しています。100%を超える場合は、払込保険料よりも多くの学資金を受け取れます。逆に100%を切る場合は、学資金受取額の方が払込保険料よりも少ないということになります。
現在この「率」は、昨今の低金利により低い傾向にあります。保障の部分を重視している保険商品などは、100%を切るケースがあります。教育資金の積み立てを目的として学資保険に加入する場合は、保障部分が少ない保険商品を選択される方が多いのはこのためです。
次に、学資金を受け取る時期をどうしたいかということです。それにより商品選択も変わってきます。大学進学の費用を学資保険で準備する場合は、17歳以降に給付されるタイプを選択しましょう。私立校を想定して、中学入学時や高校入学時も教育資金が必要な場合は特に、中途解約をすると受取額が少なくなる可能性のある商品のため、受取時期を商品ごとに確認することは大切なポイントとなります。
最後に、保険料と家計のバランスです。学資金額の設定を高くすると、その分保険料は一般的に高くなります。
学資保険を貯蓄と位置づけたとしても、収入に対する保険料負担の割合が多ければ生活は苦しくなります。教育資金の準備だけでなく、他の資金の準備も家計のなかで賄っていかなければなりません。支出に偏りのないように、保険料を検討しましょう。
学資保険だけが教育資金を貯める方法ではありません。他にも積み立てる手段を同時進行し、学資金額の設定を低めにするという選択肢もあります。他の資金との兼ね合いや収入が増えたり減ったりした際に、柔軟な対応ができる手段を複数持つことが教育資金準備のコツです。また、ボーナスを活用して保険料を年払いなどまとめて払い込む方法もあり、月払いよりも保険料負担を減らすと最終的に運用効率も高くなります。将来計画しているイベントも踏まえて、家計全体のなかで客観的にいくらまで保険料を負担できるか考えましょう。
子どもの成長は、親にとって喜びであると同時に不安でもあります。経済的な不安は、長いスパンでの教育資金計画で解消しましょう。その計画の一つの手段として、学資保険を検討するとよいでしょう。
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