ネット保険のベースとなる保障 <医療保険編>

はじめに
前回に引き続き、こちらのコラムでは、ネット保険のがん保険、医療保険、生命保険等の「仕組み」と「ベースになる保障」について考えていきます。
ネット保険は、対面販売の保険と異なり、加入を検討される方ご自身がホームページ上の資料等を参考に保障内容を確認して、インターネット上で加入するスタイルになります。ですから、対面販売の保険商品に比べると、シンプルな仕組みの商品が多くなります。
今回は、ネット専業の保険会社と、ネット申し込みができる保険会社の医療保険を参考にみていきます。
シンプルに入院保障に特化したタイプ
今回、参考にいたしました保険商品の中には、入院保障(入院給付金)に特化した商品があります。退院後の通院やがん等に備える特約はなく、手術給付金についても「あり」「なし」の選択が可能になっています。
保険の契約期間は終身のみ。入院給付金は、1日あたり5,000円、10,000円、15,000円の3種類、1入院の支払限度日数は、60日または180日の2種類からの選択になります。手術給付金「あり」を選択した場合は、1泊以上の入院が必要な手術について、一律の手術給付金が支給されます。日帰り手術には対応していない点に注意が必要です。
また、この保険会社には、特約ではなく上記の医療保険を補完するものとして、がんや先進医療および、入院とその前後の通院をカバーする商品もございます。
入院日額等の設定の自由度が高いタイプ
入院日額を、5,000円から1,000円刻みで設定できる商品もあります。
日帰り入院にも対応していて、入院日数は1入院60日のみで、日数による選択肢はありません。手術給付金は基本保障に含まれ、給付金額は入院給付金日額の10倍になります。こちらは、日帰り手術にも対応しています。保険の契約期間は、10年定期の更新型になります。
特約については、「がん特約」と「入院時一時給付金特約」を任意に選択することができます。「がん特約」では、がん入院給付金が5,000円から1,000円刻みの設定ができます。がん入院一時金、がん手術給付金、退院後療養給付金については、がん入院給付金日額に対して何倍という設定で給付金が支払われます。
プランで選択するタイプ
こちらのタイプは、主契約と特約をあらかじめパッケージ化して、保険加入希望者に選択してもらう仕組みをとっています。最初に入院日額を5,000円コース、10,000円コース等から選択します。次に、パッケージ化されたプランを選んでいきます。入院日数は1入院60日で、日数の選択はできません。保障期間は、終身と10年定期の更新型の2種類があります。
プランは、入院給付金と手術給付金のみのベーシックなもの、特約で先進医療やがん診断給付金の保障を付加したもの、退院後の通院に備えた給付金等、いくつか用意されています。
また、手術給付金は手術内容により設定されています。
がんの給付では、がん(悪性新生物)と診断確定されたら給付金が支給され、給付金は2年に1回を限度として、支払事由に該当すれば支払われます。
ちなみに、「設定の自由度が高いタイプ」にありました、がん入院一時金は、更新契約の保険期間を含めて1回のみの支払いになります。保険料を比較する場合は、その点も検討材料に加えましょう。また、退院後の通院給付金は、通院1日に対していくらという計算で支払われます。
ネット医療保険の特徴は
今回参考にしましたネット保険の保障内容をみますと、「入院給付金」がベースになっていることがわかります。
次に、対面販売中心の保険会社が提供している医療保険との相違点をみていきます。
ネット保険は、「入院給付金」については対面販売の医療保険と同じように、入院日額の設定が可能です。1入院の日数は60日型が多く、選択の幅は対面販売の商品に比べて少なくなっています。保険期間は、終身または定期10年の設定と、対面販売の商品に比べ選択肢が限られます。
「手術給付金」は、対面販売の医療保険に比べ、手術の種類による給付倍率による細かい設定がなく、今回参考にしたネット保険の商品は、一律または二分類とシンプルになっています。
退院後については、特約で「退院後療養一時金」や「通院給付金」を用意しているところはありますが、対面販売の商品のように、入院前の通院に対応しているところはありません。
対面販売の商品では、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)に備える特約が用意されているところもありますが、参考にしたネット保険商品では、がん以外の特約がありません。
以上のように、医療保険のベースとなる「入院給付金」以外の部分は、「手術給付金」を含めて簡素化を図っている点が、ネット医療保険の特徴かと考えます。
最後に
厚生労働省の「患者調査」によりますと、平均入院日数は表1のように年々短くなっています。また、厚生労働省が医療費の膨張を抑えるために、病院から在宅医療への移行を進める方向にあります。医療保険選びに際しては、入院日数が短くなっていることも考慮しながらの検討が必要でしょう。
表1 平均入院日数の推移

※平成20年、23年の数値は、宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県を除いた数値
資料:厚生労働省「患者調査」を参考に執筆者作成

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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級FP資格取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。

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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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