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行動経済学で考える投資の勘違い

大江 英樹さんコラム - 第1回

「お金に執着の強い人」が投資で成功しない理由

最近、「行動経済学」と言われる分野が注目されています。本来、経済学というのは「人間は誰でも自分の利益を最優先に考えて合理的に行動する」という前提で考えられているのですが、実際の人間の行動を見ると必ずしも合理的ではないことが多いのです。特にお金にまつわる話は結構不合理な行動をする場合が多いようです。その理由は、本来お金に関してはきちんと“勘定”で考えなければいけないのに“感情”で考えてしまうからです。このコラムでは、そんな不合理な投資の意思決定をしがちな現象をいくつかご紹介したいと思います。

今回取り上げるのは「『お金に執着の強い人』は投資で成功しない」ということです。このタイトルを見て、「え!そうなの?」と不思議に思った人が多いかもしれません。なぜなら、「だってお金に執着が強い人はお金に関して注意を払うし、投資の勉強も熱心にするのだから、うまくいくのではないの?」と考えるからです。でも、投資というのはそれほど単純なものではありません。勉強したから必ずうまくいくわけでもありませんし、ずっと注意を払っているから成功するというわけでもありません。むしろ投資においては、心理的な要素、すなわち“心の揺れ”が非常に強く影響を与えるのです。ではなぜ「お金に執着の強い人」が投資でうまくいかないのでしょうか。その理由は、損をするのがあまりにも嫌いなため、より大きな損を引き寄せてしまうからです。これはどういうことなのかを、ここから説明していきましょう。

人間の本質は「損失回避的」

行動経済学の中心的な理論に「プロスペクト理論」というのがあります。この理論をごく簡単に言えば「人間は本質的に損失回避的である」ということです。もちろん人間は誰でも損をするのが嫌いですが、問題は“あまりにも損をすることを嫌い過ぎる”ということです。実験によれば同じ10万円のお金でも、それを手に入れる喜びに比べて失う悲しみの方が2~2.5倍も大きいとされています。もちろん、儲かるのと損をするのとでは正反対の感情ですが、「10万円を得る喜びと失う悲しみ」の方向性は逆でも、同じ10万円なのだからその大きさ自体は同じと言ってもいいはずです。ところが、実際には失う悲しみの大きさの方がはるかに大きい。この結果、人の気持ちはどういう方向に向かうかというと、「儲からなくてもいいから損をしたくない」という気持ちが強くなるのです。そして「お金に執着の強い人」は、この傾向が他の人に比べてより一段と強いということなのです。

では損失回避の傾向が強くなると、一体どういうことになるのでしょう?ひと言で言えば「リスク」を取れなくなるのです。資産運用の世界でリスクというのは必ずしも「危険」とか「損をする」ということではなく、「結果の不確実性」のことを言います。わかりやすく言えば「儲かるか損をするかはわからない」ということです。リスクが大きいというのは、この儲かる時と損をする時のブレ幅が大きいということですし、リスクが小さいというのは、運用の結果があまりブレないということを言います。「お金に執着の強い人」は、損をするのが怖いという気持ちが強いのです。だから、儲けと損の間のブレが大きいものは本能的に回避しようとします。結果として、儲けるチャンスを失いがちになるということなのです。なぜなら、リターン(儲け)を得ようとするのであれば、リスク(ブレ幅)を負うことは覚悟しないといけないからです。その覚悟ができないのであれば、大きく儲けることはできません。もちろん、最初からリスクの大きい運用はしたくないということで、投資を一切やらないということであれば、それはそれで一向にかまいません。投資をしないのですから、儲けは得られない代わりに損失が生じることもないからです。問題は、お金に執着がありながら投資をしている人です。

コロナ禍での最悪の行動は?

最近起きた具体的な例で考えてみましょう。2020年の3月にコロナ禍の拡がりによって市場に不安心理が蔓延し、わずか1ヶ月ほどで日本もアメリカも平均株価は35%ぐらい下落しました。これは短期間では結構大きな下落でしたが、この時にリスクを取って買った人は、その後1年も経たずに倍近くになっています。そこまでリスクを取れなくても慌てずにじっと我慢をしていた人は、買った人ほどは儲かりませんでしたが、その後の株価の回復と上昇で、コロナ禍による下落の前と比較しても2割以上の利益が生じています。最悪なのは暴落したところで売ってしまった人です。実は「お金に執着のある人」ほど、そういう場面で“売ってしまう”という行動を取りがちなのです。

なぜそういう行動を取るかというと、不安でたまらないからです。なにしろ自分の持っている資産が目の前で毀損していくわけです。したがってそれに耐えられず、そんな気持ちが頂点になってしまったところで売るという行動を取りがちになります。そして、そういう時が往々にして一番安値だったりするわけです。

ところが、そこで買うとか、売らずに持ち続けるというのはまさに「リスクを取る」という行動です。なぜなら、買うにせよ持ち続けるにせよ、保有し続けることによって儲けになるか損になるかわからない、不確実な状態が続くからです。これに対して、売ってしまうとその時点で損をしますが、保有資産の金額自体は確定しますので、そこからのリスクはなくなります。でも、リスクを受容しない限りリターンを得ることはできないというのは、永遠の真実です。お金に執着があって売ってしまった人は、リスクを取ることを恐れるあまり最悪のタイミングで売って損失を確定してしまい、そこから先はリターンを得る機会を失ってしまうということになりがちなのです。

投資もビジネスも同じこと

一方、別な面で考えてみましょう。投資でうまくいかずに損をした時に、お金に執着の強い人は強く後悔し、「これ以上損をするのは嫌だからもう投資はやめよう」と思ってしまう可能性があります。ところが、お金に対してそれほど強い執着がなければ「損をしたのは仕方ない。そういうこともあるさ。また頑張って仕事で稼げば良い」と考えるでしょう。そういうポジティブな思考が、実は資産形成がうまくいく原因にもなります。実際、私は今まで30万人以上の投資家を見てきましたが、成功した人はほぼ例外なく「お金に対する執着が極端に強い人」ではなく、「ダメでもまた次に頑張れば良い」と考えられる人でした。つまり、自分が働いて稼げる力を持っているので、余裕のある資金であればリスクを取れるということなのです。お金に執着が強いと、自分の持っているお金を失いたくない気持ちから、どうしても守りに入ってしまうというわけですね。

よく、若い人はリスクの高い商品でも良いということが言われますが、本来リスク許容度に年齢は関係ありません。その人の保有資産の多寡とリスク耐性によって、リスク許容度は異なります。つまり、これは単に年齢とか性格云々ということではなく、若い人の場合には生涯にわたって働ける時間をたくさん持っていますから、失敗をして損失を出しても働くことでそれを取り返すことのできる力、言わば人的資本を十分に持っているということが、そう言われる理由なのです。

また、リスクとリターンの関係というのは、投資に限らず全てのビジネスに共通することです。言うまでもなく、ビジネスにおいては、収益を得るために必要な投資をすることは避けられません。したがって、お金に執着の強いリスクを取りたくない人は、起業したり自営業になったりするのはあきらめて、サラリーマンのままでいるのが一番ということでしょう。ただ、投資はまとまったお金で一度にやらなければならないということはありません。若い人であれば少しぐらいは失敗してもそれを補う「人的資本」がありますから、一度にではなく、少しずつ勉強しながら少額から投資を始めていくということは、むしろやった方が良いのではないでしょうか。

PROFILE

大江 英樹

大江 英樹(オオエ ヒデキ)

経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。大手証券会社において定年まで勤めた後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、確定拠出年金、行動経済学に関する講演・執筆・メディア出演等の活動を行っている。CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員等。「日経ヴェリタス」、「ダイヤモンド・オンライン」、「東洋経済オンライン」等にコラムを連載。NHK「ラジオ深夜便・おとなの教養講座」レギュラー解説者。最新著『あなたが投資で儲からない理由』(日経BP社)など、これまでの著書累計出版部数35万部。

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