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AIがもたらすマーケティング革命

牛窪 恵さんコラム - 第1回

ChatGPTのメリットと危険性

私は、20年余りマーケティング会社を経営するとともに、現在は大学院(MBA)で「消費者行動論」という授業を持っています。近年、マーケティングの世界ではAIの活用が進み、効率化や自動化が図られています。今後も五感や脳科学と連動して、マーケティング分野でのAIの活用はますます広がっていくでしょう。このコラムでは、AIの活用によってマーケティングの世界がこれからどう変わっていくのか。そんなお話をしたいと思っています。第1回は、現在進行形で何かと話題になっているChatGPTを中心に話をすすめます。

新しい発想やアイデアをもたらしてくれるChatGPT

今、大規模言語モデルに基づく対話型AIチャットサービスの「ChatGPT」が大きな話題になっています。確かにこれまでのAIとは一線を画す、自然な会話を可能にする能力には、私も驚かされました。私もあえて、時々調べものや文章の校正、市場調査のための質問案づくりなどに活用しています。授業後に留学生と対話するときなども、「留学生でも分かりやすい日本語で表現してください」と指示すれば、それなりの文章に直してくれるので便利です。

かつてAIは「既存データに基づくので過去のことしかわからない」「ゼロから何かを生み出すことは苦手」と言われていましたが、ChatGPTやDALL-Eに代表される生成系AIは、データから学習した多様なコンテンツを組み合わせ、まったく新しい創造物を生み出すことが可能です。小説や絵画など人間のアーティスティックな領域を侵食する能力をもっており、芸術家やクリエイターが脅威を感じるほどにもなっています。

マーケティングや広告の世界で、ChatGPTで作成したものをそのままクライアントに提出するようなことは、まだ起きていないだろうとは思います。ただ、クリエイティブな成果物をつくるプロセスで使うことは、すでに行われています。たとえば、ChatGPTに質問を投げかけ、対話のキャッチボールをすることで、発想やアイデアの幅を広げることができたりと、ブレスト相手としてChatGPTはかなり有能です。商品のキャッチコピーを考えるとき、さまざまな角度から大量のたたき台のヒントとなるキーワードを出してもらう。そのような使い方は、もはや広告の制作現場では一般的になりつつあります。

行動経済学者のダニエル・カーネマンが指摘したように、人間の発想や思考には、癖やバイアスがあります。無意識のうちに過去の経験則や成功事例に引きずられ、発想は偏りがちです。ところがAIは、一人の人間がもつ思い込みや先入観の「壁」を乗り越え、さまざまな角度から発想を提示してくれます。将棋のAIソフトが、人間の棋士では絶対に思いつかない斬新な手を打つのに似ていて、AIを上手に活用すれば、人間の発想を広げ、クリエイティブ力を大きく向上させられる可能性があります。しかも24時間365日、一瞬も休まず学習し、アップデートするわけですから、人間がAIに勝つのはかなり困難です。むしろ、人間だけだと手間や発想に難がある下準備をAIに任せ、そこから気づきを得て最終的な発想やチェック、判断は人間が行う。そうした「分業」体制が、AIとの正しいつき合い方だと思います。

「ググる」ことが減り、ネット広告の在り方を大きく変える可能性も

ChatGPTは現在のネット広告の在り方を、根本から変える可能性もはらんでいます。米国の新興企業・オープンAIが開発したChatGPTは本来、事前に学んだ大量の言語データをもとに、新しい文章を生成したり整えたりすることが得意なツールで、「正解」を導き出す検索エンジンとは、コンセプトが異なります。ところが現実には、ChatGPTで調べものをする人も増えているようです。対話型なので、なんでも気軽に聞きやすく、その行為自体も楽しいからでしょう。最新情報に対応できず、間違った答えも少なくないのですが、自分の知りたいことの概要を、短時間である程度把握するうえでは役に立ちます。

また、アマゾンやグーグルがAIスピーカーを発売して以降、デジタルツールを音声でコントロールするスタイルが定着してきています。とくにZ世代と呼ばれる若者たちは、「タイパ(タイムパフォーマンス。時間対効果)」の時間効率上、スマホの操作を音声認識で行い、情報検索の際にも「ググる」より「タグる」、すなわちSNSのハッシュタグ検索を行うのが主流になってきました。今後、音声認識やChatGPTの普及とともに「ググる」行為が減っていけば、リスティング広告にも大きな影響を及ぼします。その点でChatGPTの登場に大きな脅威を感じているネット広告代理店も少なくないようです。

もちろんグーグルも、このような時代の流れは以前から、ある程度想定していたはずで、先日も独自の対話型AI「Bard」を発表しました。ただChatGPTの登場と浸透が、想定以上に時代の流れを加速させたのは間違いないでしょう。いっぽうマイクロソフトは、ここぞとばかりにオープンAIに巨額の投資を行い、ChatGPTのデフォルト検索エンジンとして自社の「Bing」を提供すると発表しました。今後、検索エンジンやChatGPTをめぐる覇権争いがどのようなかたちで決着するのかはわかりません。いずれにしろChatGPTの登場が、ネット広告やマーケティングの世界に、大きなインパクトを与えたことは間違いありません。

ある程度は規制しながら、AIが人類の幸せにつながる道へ

ChatGPTが大きなブレークスルーをもたらしたこともあり、今、世界的にAIの開発を規制しようとの動きが広がっています。イーロン・マスクやオープンAIのCEO自体が、規制の必要性を訴えています。私も今の生成系AIの驚異的な進化スピードには、少し恐怖を感じます。AIは人間には考えられない成長速度で進化するので、AIの知性(性能)が人類の知性を超える、いわゆる「シンギュラリティ」が想定以上に早く訪れるのではないか、と考えてしまいます。

悪意をもつ人が、ChatGPTを使った自動プログラムでデマやフェイクニュースを拡散し、戦地や株式市場などを操作して世界を大混乱に陥れることは、現時点でも簡単にできるでしょう。今後、ドローンやロボットをAIで遠隔操作して戦う、スター・ウォーズのような大戦争が起きる可能性もゼロとはいえません。

生成系AIそのものを使用禁止にする必要はないにしても、学術論文や著作権の問題、芸術家やクリエイターをどう保護し、育てていくかなどは大きな課題です。学術や芸術分野に限らず、これまで人間が一生懸命努力してスキルを磨いてきたことを、AIが一瞬で行ってしまうとなれば、学校や職場でも人間のモチベーションは一気に下がります。学習意欲や労働意欲もそがれることになるでしょう。このような問題を放置して、AIの開発や活用を進めることが、果たして本当に人類の幸せにつながるのか。この問題は哲学や倫理学、歴史学や社会学など幅広い知見を用い、総合的に判断する必要があり、すでに国連などでも議論されています。

マーケティングの神様と言われるフィリップ・コトラーは、共著書『コトラーのマーケティング5.0』(朝日新聞出版)のなかで、人間とテクノロジー(デジタル)の共存について述べています。そこに込められているのは、「デジタルに頼りきるのではなく、人とテクノロジーが協力することで『人間らしさ(ヒューマニティ)』や人としての幸せを模索すべきである」とのメッセージです。私たちがAIと共存し、その進化を自分たちの幸せにつなげるためにはどうすればいいのか。これからは私たち一人ひとりがしっかり考える必要があるでしょう。ChatGPTは、そのよいきっかけになるのではないかと考えています。

撮影:山田ミユキ

PROFILE

牛窪 恵

牛窪 恵(ウシクボ メグミ)

世代・トレンド評論家、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授・修士

1968年東京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月にマーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。2019年3月立教大学大学院(MBA/経営管理学)・博士課程前期修了。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(2005年)、「草食系(男子)」(2009年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、NHK総合「サタデーウオッチ9」、毎日放送「よんチャンTV」ほかでコメンテーター等を務める。

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