保険料月1万円でいざというときに役立つのか検証してみよう2 医療編
- 保険料月1万円以下のAさんの保険のお役立ち度を検証する第2弾。今回は医療保障についてシミュレーションしました。使用したデータは厚生労働省の「医療給付実態調査 平成23年度」と「患者調査 平成23年」。新生物(がん含む)で入院したケースと脳血管疾患で入院したケースの2パターンによる試算です。終身医療保険と終身がん保険の毎月の保険料は合計3,838円。はたして、十分な医療保障が受けられるのでしょうか。
1.Aさんが加入している保険内容について
Aさんが加入している保険は表1の通りです。
医療保障は「終身医療保険」と「終身がん保険」です。終身医療保険は入院・手術給付金のほか、先進医療や放射線治療を受けたときに給付金が支払われるようになっています。例示している終身がん保険は、がん診断一時金だけのシンプルなタイプのがん保険です。初めてがんと診断されたときには200万円が、がんが再発したときは2年に1度を限度に100万円が複数回支払われるようになっています。
例示の定期保険は特約を一切付けていないので、医療保障のないタイプです。
<表1:Aさん(30歳男性)が加入した保険>
保障 | 毎月の保険料 | ||
---|---|---|---|
終身医療保険 | 入院給付金日額 手術給付金 放射線治療給付金 先進医療給付金 |
5,000円 2万5,000円 2万5,000円 通算1,000万円 |
1,768円 |
終身がん保険 | がん診断給付金 がん初回診断一時金 |
100万円 100万円 |
2,070円 |
定期保険 | 10年更新型 | 5,000万円 | 5,640円 |
合計 | 9,478円 |
2.がんで入院した際の総医療費は約106万円
厚生労働省のデータによると、がんの治療にかかる費用は1日当たり5万4,362円。平均入院日数は19.5日となっております。例えば、Aさん(高額医療費制度における年齢区分:70歳未満、所得区分:一般)が胃の全摘出手術を受けて、2013年4月1日~4月20日までの20日間入院したとすると、医療費は表2の通りになります。
<表2:Aさんの医療自己負担分>
4月入院時の自己負担額(3割) : | 108万7,240円×3割 | = 32万6,172円 |
※高額療養費の払い戻しの対象になるので、実際の自己負担額は以下の通りになります。 | ||
入院時の実質自己負担額 ① : | 8万100円+(108万7,240円-26万7,000円)×1% | = 8万8,302円 |
入院時食事代の自己負担額 ② : | 260円×(3食×20日) | = 1万5,600円 |
医療費の自己負担額合計 (①+②) : | 10万3,902円 |
差額ベッド代のかからない大部屋入院をした場合にかかる医療費が表2です。見舞い時の家族の交通費や食費、パジャマ等の衣類、テレビカード、快気祝い等の費用は別途かかるものの、がん治療は大半が保険診療なので、高額療養費制度により自己負担額があまり高額にならないようになっています。
では、終身医療保険と終身がん保険から支給される給付金はいくらになるでしょうか。
表3と4にまとめてみました。
<表3:Aさんの終身医療保険から支払われる給付金>
入院給付金 : | 日額5,000円×20日 | = 10万円 |
手術給付金 : | = 2万5,000円 | |
合計 | 12万5,000円 |
<表4:Aさんの終身がん保険から支払われる給付金>
初回がん診断時 : | = 200万円 | |
2回目以降のがん(再発) : | = 100万円 | |
合計 | 初回のみ200万円 (2回目以降100万円) |
終身医療保険だけでもカバーできる内容であることがわかりました。がん保険に入っていたことで余裕ができ、差額ベッド代のかかる個室に入院したり、退院後に定期検査の費用がかかったとしても慌てずにすみそうです。
がんは退院後に抗がん剤治療を受けることがあります。例えば、胃がんの再発を防ぐ薬に「S-1(一般名称:テガフール等)」があります。これは1コース6週間(4週間投薬後2週間休み)の治療になっていて、再発予防のためには9コース(約1年間)受けることになるそうです。がんの治療費の詳細が紹介されている「がん治療費.com」によると、1コースにかかる治療費合計額は11万3,400円。3割負担で3万4,020円です。高額療養費を使うほどではありませんが、1年間通うと、約31万円の出費になります。がん診断一時金をもらえる保険に入っておけば、退院後の出費にも備えられますね。
3.脳血管疾患で入院した場合の総医療費は約364万円
厚生労働省のデータによると、脳血管疾患の治療にかかる費用は1日当たり3万9,186円。平均入院日数は93日となっております。4月1日に脳梗塞で倒れて、リハビリ期間も含めて93日間入院した場合(入院期間4月1日~7月2日)にかかる医療費は表5の通りです。
<表5:Aさんの医療自己負担分>
4月入院時の自己負担額(3割) : | 117万5,580円×3割 | = 35万2,674円 |
5月入院時の自己負担額(3割) : | 121万4,766円×3割 | = 36万4,430円 |
6月入院時の自己負担額(3割) : | 117万5,580円×3割 | = 35万2,674円 |
7月入院時の自己負担額(3割) ① : | 7万8,372円×3割 | = 2万3,512円 |
※4~6月は健康保険の高額療養費の払い戻しの対象になるので、実際の自己負担額は以下の通りになります。 | ||
4月入院時の実質自己負担額 ② : | 8万100円+(117万5,580円-26万7,000円)×1% | = 8万9,186円 |
5月入院時の実質自己負担額 ③ : | 8万100円+(121万4,766円-26万7,000円)×1% | = 8万9,578円 |
6月入院時の実質自己負担額 ④ : | 8万100円+(117万5,580円-26万7,000円)×1% | = 8万9,186円 |
入院時食事代の自己負担額 ⑤ : | 260円×(3食×93日) | = 7万2,540円 |
医療費の自己負担額合計 (①+②+③+④+⑤) : | 36万4,002円 |
では、終身医療保険から支給される給付金はいくらになるでしょうか。表6にまとめてみました。
<表6:Aさんの終身医療保険から支払われる給付金>
入院給付金 : | 日額5,000円×60日 | = 30万円 |
合計 | 30万円 |
Aさんが加入した医療保険は、1入院の支払限度日数が60日タイプのものなので、93日入院したとしても、60日分で給付が打ち切りになります。今回は手術をしていない前提で試算をしていますが、手術を受けたとしても10万円前後貯蓄の取り崩しをすることになりました。
このシミュレーションは病気治療中の収入補てんを考慮しておりません。会社員や公務員の場合、健康保険から傷病手当金として1日当たり日割給与の3分の2相当額が最長1年半支給されます。収入の減少が気になるようなら医療保険の入院給付金日額を高めに設定しておきましょう。
コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
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コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき ) -
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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