意外と使える医療費控除
- 2012年も残りわずかですね。1年の締めくくりに「医療費控除の準備」を行いませんか?対象となるレシート・領収書をかき集めて、治療にかかった医療費を書き出しておけば、源泉徴収票が届いた後で、還付申告に備えることができます。入院していなくても、歯科医院に通っていたり、親の介護のために仕送りをしているなどの場合は使えるケースが多いようです。医療費控除で税金を取り戻すコツをご紹介します。
【1】医療費控除とは?
医療費控除は1年間に「10万円」または「所得の5%」のいずれか少ないほうを超える医療費を支払った場合に、その超過分を所得から差し引けるものです(最大200万円)。たとえば、所得120万円ならその5%の6万円を、所得200万円以上なら10万円を超える医療費をその年に実際に支払っていれば、原則利用できます。
注意してほしいのは、ここで言う「所得」とは「年収(1年間の収入)」ではないこと。基本的に会社員なら給与所得控除後の金額が、自営業なら経費控除後の金額が対象になります。たとえば年収300万円の会社員の給与所得控除額は108万円です。所得は年収300万円から給与所得控除108万円を差し引いた192万円となり、その5%の9万6,000円を上回る医療費を支払っていれば医療費控除が使える計算になります。
【2】控除の対象となる医療費
控除の対象となる医療費は、病院や歯科医院、薬局で払った費用だけではありません。ドラッグストアなどで買った市販薬も対象になります。また、介護保険制度の在宅介護サービスを使ったときの一部負担金や介護施設での利用料の一部も対象になります。たとえば、特別養護老人ホームの利用料(介護費、食費、居住費)は2分の1が対象です。詳しくは国税庁HP(http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1125.htm)をご覧ください。
<医療費控除の対象となる医療費>
- ● 病院や歯科医院、薬局で支払った医療費
(健康診断の費用や予防接種、ビタミン剤などのサプリメント、診断書の作成料を除く) - ● 市販薬
- ● 介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設、助産所を利用した際に払った費用
- ● 治療の一環として認められた針灸・マッサージ等の費用
- ● 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な義手、義足、松葉杖、義歯などの購入費用
- ● 出産の検診・分娩にまつわる費用(出産のための里帰り旅費等を除く)
- ● 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価
(家族、親類縁者に頼んだ場合を除く) - ● 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
- ● 介護保険で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
- ● 通院にかかった交通費や医師等の送迎費
(自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等を除く) - ● 入院の際の部屋代や食事代の費用
- ● コルセットなどの医療用器具等の購入代やそのレンタル料
- ● 介護に要するおむつ代(医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要)
- ● 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- ● 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
【3】医療費控除の対象となるマッサージもある
医療費控除にはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術料も対象に含まれていますが、国税庁のHPではただし書きとして「疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません」(http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1122.htm)となっています。医師の診断書などは必要ありませんが、1つの目安として、健康保険が使える診療を行っている鍼灸院であれば、対象になる可能性があります。逆に、保険診療にならないマッサージ店での施術は対象外ですので気を付けてください。
【4】インプラントも金歯もOK。ただし、美容目的の矯正は✕
歯科治療に関しては、インプラントや金、ポーセレン等を使った自由診療も対象になります。子どもの歯列矯正は対象ですが、美容目的で矯正した場合は対象外となります。
【5】通院の交通費は○。ただし、ガソリン代や駐車場代は対象外
通院にかかる交通費に関しては、何を利用したかによって対象になるものとならないものがあります。電車やバスなどの交通機関の場合はレシートがなくても対象になります。日付、病院名、利用した交通機関の駅名(どこからどこまで)、かかった運賃を書き出しておきましょう。病院の領収書も必須です。タクシーは領収書があればOK。マイカーで通院したときのガソリン代や駐車場代は対象外です。
【6】医療費控除を受ける際に注意したい3つのこと
医療費控除を受ける場合、次に挙げる3点に注意してください。
1つめは、医療費控除を受けるためには医療費を使った翌年の1月1日から5年の間に還付申告をしなければいけないこと。年末調整では医療費控除は行えません。
2つめは、健康保険などから支払われた「出産育児一時金」「高額療養費」「家族療養費」、ならびに生保・損保・共済から支払われた入院給付金などの医療関連の保険金・給付金については、対象となる医療費から差し引いて計算しなければいけないこと。支払った医療費が10万円を超えていても、これらの給付を受けていると医療費控除が使えないこともあるので注意してください。なお、健康保険から支給される「出産手当金」と「傷病手当金」、保険会社の「所得補償保険」や「就業不能保険」から支払われる保険金に関しては、所得の補填という位置づけで給付されているものなので、医療費から差し引かなくてもいいようになっています。
3つめは、医療費控除は家族の中で最も所得の多い人が行うこと。医療費控除を最大限活用するコツは家族全員の領収書・レシートを集めて、生計が同じ家族の中で最も所得の多い人が代表して確定申告することです。一緒に暮らしていなくても、生計が同じ未婚の子なら合算できます。たとえば、大学進学のために親元を離れて下宿している息子の医療費も対象になります。これは、所得税率は所得が多いほど高く設定されているため、所得の多い人が医療費控除を行うと、それだけ払い戻されるお金が増えるからです。生計が同じ家族の医療費を合算して、最も所得が多い人が還付申告するのがコツ、と覚えておいてください。
コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
-
コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき ) -
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
今すぐ相談したい方はこちら
メルマガ登録をして保険市場がご案内する各種コラムの更新情報やお得なキャンペーン情報を受け取ろう!
ご登録アドレスは大切にお預かりし、保険市場メールマガジンの配信にのみ利用します。