うつ病と保険加入

「心の病気」ともいわれていますが、もう少し広く深く、客観的にうつ病をとらえながら、保険との関係をみていきたいと思います。
うつ病の歴史
その歴史をひも解いてみると、医学書による記述が紀元前5世紀頃「医学の父」とよばれるヒポクラテスにより書かれ、その後、ヨーロッパを中心に研究が進められており、意外に古くから確認されていた病気であると思います。
うつ病の原因
うつ病は、過度のストレスや疲労が最も多い原因といわれていますが、それらが具体的に身体、特に精神を司る脳にどう影響をおよぼすのかは明確にはわかっていません。
その理由は、ストレスは人によって感じ方が違うため具体的な数値で表すことが難しい点にあります。
うつ病の症状
精神的な症状 | 主に「やる気がでない」「頭が回らない」「マイナスの感情(不安、悲しみ、焦り)」が挙げられ、最悪の場合「自傷行為」「自殺」につながります。 |
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また一日のなかでも気持ちの変化が大きく、重症でない限り精神症状が一日中、悪いということはありません。
朝が悪くて、次第に楽になる「日内変動」という症状が一般的といわれています。
身体の症状 | 主に「眠りが悪い(睡眠障害)」「食欲が増える・減る」「胃腸の具合が悪い」「耳や目が悪くなる」「どこかが痛くなる」「興味・喜びの喪失」「疲れやすい・気力の減退」などが拳げられます。 |
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うつ病の治療
うつ病の治療は、生物学的治療として薬物療法と電気けいれん療法があります。
薬物療法で注意する点は、
- ・ 服薬を始めてすぐに効果が現れるわけではなく、一般的に1週間~3週間の服薬期間が必要
- ・ 薬物療法の効果を上げるためには、十分な量をきちんと服薬すること
- ・ 症状が改善した後も服薬を続けること
があります。
精神療法(心理療法)として認知療法、対人関係療法、この他分析的精神療法等があります。
また、うつ病の原因となる環境のマイナス要因を解決する環境調整があります。
うつ病は、その状態が目に見えないため周りの人もそうですが、特にうつ病になった本人が症状が改善しているのか自信が持てず不安な状態であるため、あせらず、じっくり時間をかけて治療することが重要です。
うつ病でも加入しやすい保険
前述のように、うつ病は正真正銘の「病気」です。
では、うつ病の人は保険に加入できるのでしょうか?
通常は多くの保険の告知事項(告知をしなければならない)に該当するため、加入は難しいです。
しかし、引受基準緩和型や無選択型であれば加入できる場合があります。
引受基準緩和型は健康状態に関する告知事項が少なく限定されている保険、無選択型は告知事項がまったくない保険です。
ただし、これらの保険は一般的な保険と比べて保険料が高く設定されている場合が多いです。
また、治療中のうつ病自体、あるいはそれに起因する病気等については、原則として一切保障はされません。
うつ病の状態で保険に加入する場合には告知事項等に十分、注意していただき事前に確認、相談をする等加入後トラブルとならないように気を付けてください。
ファイナンシャルプランナー 大間 武
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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掲載日:2019年8月27日
うつ病の方が利用できる社会保障とは
ここからは、うつ病の方が知っておくべき代表的な社会保障をご紹介します。
うつ病の方が知っておくべき代表的な社会保障
自立支援医療制度(医療費の軽減) |
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心身の治療を受ける際、医療費の自己負担額を軽減する制度 精神疾患については、外来への通院や投薬、訪問看護などが対象(入院については対象外) |
傷病手当金(会社員向けの生活費支援) |
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病気やケガにより、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合に、休んだ日数に応じて給与の3分の2程度が支給される制度 |
障害者控除、特別障害者控除(税金の負担軽減) | ||||||||
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心身に障害をもつ方や、障害がある方を扶養している場合は、所得控除が受けられ、所得税や住民税の負担を抑えられる制度
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うつ病をはじめとする精神疾患は、入院期間が長くなることが多いため、心への負担だけでなく、治療のための休業などもあり、経済的な負担が大きくなる場合があります。
そのため、上記のような社会保障を上手に利用しながら、経済的な負担をしっかりと抑えられると、少しでも安心して治療が受けられるでしょう。
掲載日:2020年1月17日
医療保険の加入でうつ病の告知をしないとどうなるのか
うつ病になると治療費がかかるだけでなく、仕事を休むことによって収入が減ることも考えられ、経済的な不安も大きいものです。
通常、医療保険に加入する際には過去の傷病歴、現在の健康状態、職業などの告知が必要ですが、うつ病の方はこの告知に該当する場合が多く、保険への加入が容易ではありません。
しかし、保険に加入できないからといって、うつ病であることを告知しなければ、告知義務違反にあたります。
保険法の第55・84条では、保険契約者または被保険者が、故意または重大な過失により告知義務に違反した場合には、保険会社は保険契約を解除することができる、と定められています。
告知義務違反をすると契約が解除される可能性があり、また、契約が解除されると、保険金や給付金を受け取れないことがあります。
うつ病で保険への加入が難しいからとうその告知をするのではなく、必ず事実を伝えるようにしましょう。
告知内容が限られている引受基準緩和型・限定告知型や告知が不要な無選択型の保険など、うつ病の方でも加入しやすい保険も増えています。
また、うつ病など精神疾患を患っている方を対象とした自立支援医療制度といった公的制度もあります。
通常の医療保険に加入することだけを考えるのではなく、うつ病でも入りやすい保険や利用できる公的制度などがあることを理解したうえでよく検討しましょう。
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