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伊藤 洋一の視点

伊藤 洋一さんコラム-第23回

2022年の世界経済:(2)中国 三期目目指す習近平、山積する問題

今はどう見ても中国とアメリカが覇権を争う“冷戦”の時代だ。第二次世界大戦後に長く続いた米ソ冷戦を想起できる。しかし中身は全く違う。分解したソ連邦は「社会主義」という幻想と軍事力でアメリカと対峙した。しかし世界のGDPに占めるシェアはごく小さく、よって時間の経過の中でアメリカとの争いに敗北した。体力不足だった。

しかし中国は違う。既に世界第2位のGDPを持ち、順調に経済力を伸ばせばアメリカを凌駕する日も間近だ。伸び盛りに見えた。経済力のみならず、一帯一路による外交力や軍事力もある。戦狼外交には、この国の強気が良く出ている。

しかし中国は今年試練だ。順調な国力伸張を継続できるかどうか。曲がり角なのだ。何せ問題が山積。昨年第四・四半期のGDPの前年同期比伸び率は4%に低下した。その前の四半期の4.9%を大幅に下回る。中国は成長率が7%を下回ると雇用問題が噴出すると言われる。今の同国の成長率はそれより遙かに低い。

三つの問題を指摘しよう。

  1. (1)呪縛のゼロコロナ政策
  2. (2)肝いり「共同富裕」の弊害
  3. (3)崩壊に向かう不動産バブル

新型コロナもオミクロン株が主流となった。世界は、感染力は高いものの重症化リスクが高くないこの株との共存を目指す。イギリスなどが典型。しかし、中国は世界で唯一大国として「新型コロナウイルスを徹底的に制御する」(ゼロコロナ)を政策とし、それでの成功を体制的優位と喧伝する。僅か10人前後の感染者が出ただけで1,000万以上の都市とその周辺地域を封鎖(ロックダウン)し、人々の外出まで厳しく規制する。当然経済活動は大きく落ちる。その結果が昨年末のGDP大幅減少だ。

「ゼロコロナ政策は失敗する」と見る向きが多いし、筆者もそう思う。アメリカの有力なシンクタンクのユーラシアグループは恒例の「今年の世界の10大リスク」の第1位に、「中国のゼロコロナ政策」を挙げ、「それは失敗する」と断言する。感染力が高いオミクロンをゼロにもっていくのは至難の業。ほぼ不可能だ。今の日本と世界を見れば分かる。ゼロコロナ政策を継続すれば経済が大きくダウンすること必至だ。

次は肝いりの「共同富裕」が抱える問題。習近平は三期目開始に当たって国民の格差拡大への不満をかわす狙いから、この概念を改めて持ちだした。「皆で豊かになろう」というのだ。しかし実体は「上を叩く」が中身で、特に「共産党(自分)の権威に挑戦するような巨大な組織」「自分の権威に目障りな人気芸能人」などを標的とする。「巨大な組織」にはITを中心に今伸び盛りの同国の民間企業が含まれる。

中国は政治体制に社会主義、一党独裁を残しながら経済には資本主義を取り入れて力強く成長してきた。しかし、中国共産党は経済が成長を加速し、力や権威で党を凌駕する組織や人物が出てくるのを疎ましく思い始めている。その結果、「共産党とそのトップの習近平には恭順しろ」との強烈なメッセージを発する。萎縮が始まっている。何せニューヨーク株式市場に上場したりして世界を目指し、そのトップが大きく注目されたりすると共産党に睨まれる。そして巨額の罰金の支払いを命ぜられる。

「力強く、かつ荒々しい」が今までの中国の経済成長の原動力だった。それが政治的圧力で失われつつある。この政策が、ゼロコロナと相まって中国の成長力大幅鈍化を招来するとの声が強い。北京冬季五輪後にゼロコロナ政策には手直しが入るかも知れない。しかし大きな問題がある。「ゼロ」は耳に心地よいが、それは「中国国民の大部分が新型コロナに対して免疫を持たない」ことを意味する。感染が広がったら打撃は大きい。放棄しようにもできない事情もある。

厳しい監視体制を敷いても、オミクロンは中国でも広がるだろう。その結果中国経済が混乱に陥れば、輸出が停滞して経済は麻痺し、世界的なロジスティック(流通網)が混乱する危険性がある。それは世界経済全体の問題だ。物流が滞れば今の世界的なインフレ傾向が一段と強まる危険性もある。

最後に不動産。既に恒大グループが膨大な債務を抱えて国際金融市場で大きな懸念材料になっている。中国経済成長の原動力の一つは不動産だった。人口増や結婚に持ち家(新郎サイド)を前提とする慣習を背景に、中国の住宅需要は強かった。故にずっと値上がりし、「住宅神話」が生まれた。一方、地方政府は土地(すべて国有)の使用権を民間に売って、財政を豊かに使ってきた。

魔法は切れつつある。中国全土で鬼城(途中で建設が放棄されたマンション群)が出現し、高すぎる住宅価格を問題視する習近平指導部の方針もあって、不動産市場には下方圧力がかかる。不動産が上がるからこそ回転していた中国経済の歯車が大きくきしみ始めた。

3要因以外にも、人口の減少傾向も懸念だ。去年中国で生まれた子供は、政府発表で1,000万強とされる。それが100年続けば中国の人口は8億になる。今の14億より6億人も少ない。

抱える問題が大きすぎる故に、「(中国は)結局アメリカを凌駕できない」との見方もある。しかし「歴史的に、台頭する大国は衰退期に入ると目標達成の焦りから性急な行動に出るものだ」という警告を忘れてはならない。台湾問題を含めて、今後数年の中国は経済的にも軍事的にも危険な存在であり続ける。

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PROFILE

伊藤 洋一

伊藤 洋一(イトウ ヨウイチ)

経済評論家

1950年長野県生まれ。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。著書に『ほんとうはすごい!日本の産業力』(PHP研究所)、『日本力』(講談社)、『ITとカースト インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える―板前文化論の冒険―』(新潮社)など。「金融そもそも講座」などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。

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