ジェネリック抗がん剤の考え方

抗がん剤にもジェネリック医薬品(後発医薬品)があることをご存知ですか?
ジェネリック医薬品とは、ご存知のように、先発医薬品の開発から約20年経ち、特許が切れた後に、同効成分を使って同一の効果が得られるように作られた薬で、研究開発費がかかっていない分、安い値段がつけられています。ジェネリック医薬品は、私たちが負担する医療費だけでなく、国にとっても医療費負担が減らせることから、推奨されています。
最近では、遺伝子組み換え技術を応用してつくられるホルモン剤のバイオ医薬品にも、バイオシミラーという総称の後発品が出ていたり、高価な抗がん剤にもジェネリック医薬品が次々と発売されています。
ジェネリック抗がん剤の価格は、先発抗がん剤の約3~5割程度。先発医薬品なら数十万円もする治療も、ジェネリック抗がん剤を使うことで数万円も自己負担額を抑えることができます。
例えば、パクリタキセル(一般名)で乳がんの治療をした場合、どのくらい自己負担額が変わるでしょう。
一般的な治療スケジュールは、1週間に1回、計12回の投与。
体の大きさによって投与する薬剤量は変わりますが、身長160cm、体重55kg(体表面積1.5㎡)の方の場合、12回の投与にかかるパクリタキセルの総額は、先発抗がん剤だと約48万9,000円、ジェネリック抗がん剤だと約25万3,000円~35万5,000円です。
(がん治療費.com、日本ジェネリック製薬協会のホームページより執筆者が計算)
つまり、ジェネリック抗がん剤を使うことで最大23万6,000円の薬剤費の軽減、自己負担額(3割)としては約7万円も減らすことができるわけです。
そう考えると、お金のかかる抗がん剤治療にとって、ジェネリック抗がん剤は非常にありがたい存在で、ジェネリック抗がん剤を使って少しでも医療費を抑えたいと考える方もいるでしょう。ただ、ジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同じ効果が得られるわけではないので、注意が必要です。
実は、ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分の物質構造が同じではあるものの、使用している添加物が違う場合が多く、添加物が違うことで溶け方が違って効果の持続時間が変わってきたり、体に吸収される時間が変わってくる可能性が大いにあります。そうすると、効果も副作用も変わり、先発医薬品では出なかった副作用が、ジェネリック医薬品では出るケースもあるのです。
薬の選択は、素人にはなかなか難しいものです。命にかかわることですから、きちんと説明を受けて、納得して治療を受けたいものです。高額な治療費を捻出することが難しいときは、主治医や病院に常駐しているソーシャルワーカーに相談をしましょう。治療を諦めてしまうことのないように、医療と福祉の両面で解決の道を探ってくれます。
がん治療とお金の問題は、とても切実です。備えが不十分だと、ライフプランが崩れてしまうことになりかねません。
がんになってしまったときのために、民間の保険や貯蓄で経済的な備えをしておくことは、このような薬の選択の面からも安心して治療を受けられることに繋がるでしょう。

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コラム執筆者プロフィール
川崎 由華 (カワサキ ユカ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、平成24年度日本FP協会「くらしとお金の相談室」相談員。
前職ではがん領域の薬を扱う製薬会社に勤務。
現在は2児の母をしながら、主婦向けのマネー講座や個人相談、執筆等ファイナンシャルプランナーとして活動中。
お金の数字だけの問題でなく、気持ちも汲み取れる身近で気さくな存在のファイナンシャルプランナーをモットーにしている。

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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 川崎 由華
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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