学資保険を知るための6つの視点 第2回 学資保険 VS 積立式定期預金 どっちを選ぶ?
はじめに
今回は、教育資金を確保する方法として、学資保険と預貯金のどちらが適しているか考えてみたいと思います。
前回のコラム「学資保険を知るための6つの視点 第1回 学資保険の必要性について」でもみた、「10歳未満の子ども(生まれていない子も含む)がいる20代~50代の男女を対象にしたアンケート調査(期間:平成25年6月26日~平成25年7月1日)」(実施:NTTコム リサーチ)では、学資保険を選ぶポイントは、
1位 | 返戻率(払込保険料に対する受取総額の割合) | (89.4%) |
2位 | 保護者に何かあった時の保障の内容 | (68.0%) |
3位 | 保険金を受け取るタイミングが適切、もしくは自由に設計できるか | (67.2%) |
でした(第1位~第3位までの回答を積み上げ集計)。
この点から判断しますと、学資保険は保険機能よりも貯蓄機能を重視して選ぶ傾向があることがわかります。また、ほとんどの学資保険の保険料の支払方法は「月払」か「年払」になることを考えますと、「積立式定期預金」が今回比較対象とする貯蓄型商品としてふさわしいかと考えます。
以下、「学資保険 VS 積立式定期預金」で比較検討させていただきます。
積立式定期預金とは
積立式定期預金(以下:積立預金)は、銀行や信用金庫等で取り扱っている預金になります。金融機関により商品内容はさまざまですが、積立期間については、期間をあらかじめ設定しておく「目標日設定型」と、期間を決めない「自由型」の2つのタイプを取り扱っているところが多いです。学資保険の満期を15~20年と考えた場合、自由型と比較するのが適切かと思われます。
自由型の積立方法、金利と中途解約については、以下の通りです。
積立方法は、一般的に満期1年の定期預金を自動更新することで預金を積み立てていきます。満期を1年以外に指定できる銀行もあります。毎月積み立てを行いますので、満期が1カ月ごとに後にずれた定期預金が何本も作られることになります。
金利は、満期自動更新時点の定期預金の店頭表示金利を適用しますので、全期間でみた場合は、変動金利の預金になります。
中途解約は、毎回の積立分ごとに部分的に解約することができます。
「学資保険 VS 積立式定期預金」、判定する物差しは?
今回は、貯蓄機能に重点を置いた2商品の比較になりますので、金融商品の主なリスク、「金利変動リスク」と「流動性リスク・中途解約リスク」の2つを判定の物差しといたします。
1.「金利変動リスク」に強いのはどっち?
学資保険は、受け取れる保険金の総額が契約時に決められますので、世の中の金利が変動しても、それによって受け取る保険金に影響はありません。
積立預金は、満期自動更新時の金利変動の影響を受けます。特に3年満期等、比較的長めに設定した場合は、金利変動リスクが高まります。金利が上昇した時はプラスに、下降した時はマイナスに作用します。
判定
学資保険は、受け取れる保険金の総額が契約時に決定される点から、固定金利型に近いタイプになります。積立預金は、積立期間ごとに金利が異なりますので、変動金利型タイプといえます。
長期的に金利が上昇すれば、積立預金に軍配があがります。
しかし、金利が下降する逆のケースでは、学資保険が有利です。
ただし、長期にわたる金利の動向を予測するのは難しいため、この勝負は引き分けとします。
補足
文部科学省の調査によると、平成21年度からの私立大学入学者の初年度学生納付金平均額の推移は、以下表の通りです。
私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額の推移
単位:円
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
平成21年度 | 851,621 | 272,169 | 188,356 | 1,312,146 |
平成22年度 | 858,265 | 268,924 | 188,477 | 1,315,666 |
平成23年度 | 857,763 | 269,481 | 187,007 | 1,314,251 |
平成24年度 | 859,367 | 267,608 | 188,907 | 1,315,882 |
平成25年度 | 860,072 | 264,390 | 188,063 | 1,312,526 |
資料:文部科学省「平成25年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに執筆者作成
このように、授業料、入学料、施設設備費のいずれも過去5年間、あまり増減がありませんでした。
しかし、消費者物価指数が上昇し始めたのが、平成25年5月以降ということを考えますと、今後は「インフレリスク」についても考えておく必要があるかと考えます。
2.「流動性リスク・中途解約リスク」に強いのはどっち?
学資保険は、中途解約した場合に、払い込んだ保険料よりも解約返戻金が下回る「元本割れ」が起こる場合があります。解約までの期間や保険会社により、解約時の返戻率は異なりますので、このリスクについては、契約前に保険会社に確認しておきましょう。
積立預金を中途解約した場合は、利子の部分が調整されます。設定された定期預金の金利ではなく、それより低い期限前解約利率で計算された利子を受け取ることになりますから、利子の額は減ります。元本に関しては元本保証されており、元本割れすることはありません。
また、積立期間ごとの部分解約を行うこともできます。
判定
流動性リスク・中途解約リスクについては、部分解約ができ、中途解約しても元本割れを起こさない点で、積立預金に軍配があがります。
学資保険については、中途解約リスクを避けるために、毎月(毎年)の支払いに無理のない保険料と、受け取る保険金のバランスを考えて契約するようにしましょう。
最後に
今回は、「金利変動リスク」「流動性リスク・中途解約リスク」に絞って比較をいたしました。注意したいのは、積立預金には保険機能がありませんので、契約者が万一の場合の保障を生命保険等で用意する必要があるということです。商品選択時には、そのコスト(保険料)も加味して比較検討しましょう。
次回は、「学資保険を知るための6つの視点 第3回 学資保険の加入率と選ぶときのポイント」について、学資保険に加入した理由等を含めてみていきます。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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