掲載日:2020年11月13日

人生100年
今できる賢い老後資金の準備方法

最近、金融庁の審議会における報告書がクローズアップされ、大きな話題となりました。
「人生100年」といわれる長い老後に不安を感じた方や、やっぱりそうだよねと再認識された方など、反応はさまざまかもしれませんが、ぼんやりと思っていたことを改めて意識するきっかけになったのは確かだと思います。
不安な方も多いかもしれませんが、せっかくならばこれを好機と受け止め、具体的に行動を起こしてみるのはいかがでしょうか。

3回連載の最後は、主に会社員の方向けに、老後資金をより賢く準備するためのポイントを解説します。

年金以外の老後資金を準備する目的

公的年金は、生涯給付されますので、老後の大切な収入源です。
将来にわたって維持されることも見越して国が定めた年金給付水準は「国民年金(基礎年金)と厚生年金とを合わせて、年金受給開始時にそのときの現役世代の平均所得の半分以上」となっています。
定年退職後は、教育費や住宅購入などのまとまった支出が少なくなり、現役世代ほど生活費がかからないこと、現役世代が納付する保険料から賄われること、年金は生涯もらえることから、この年金給付水準は妥当ではないかと筆者は思います。

自分で老後資金を準備する目的は「年金給付水準を認識した上で、自分が描く老後の生活スタイルやリスクに対して備えるため」です。
どのくらい準備が必要かを具体的にイメージできるのは、公的年金の給付額がより想定しやすい50歳以降ではないかと思います。とはいえ、60歳目前になって、急に家計から多くのお金を老後資金へ振り向けるのは難しいので、準備を早く始めて時間を有効に使い、少額でも家計の範囲内で準備を進めておきましょう。

老後資金は「積み立て」と「運用」で準備する

老後資金の準備は、家計のなかからコツコツ貯める「積み立て」と、お金を働かせて殖やす「運用」という2つの方法を合わせて行うことが、今や必須といって良いのではないでしょうか。

「積み立て」だけではなく、「運用」が大切な理由は下記の2点です。

現役世代が主に自分で準備するのは、1回目のコラムで触れた「さまざまな使い道に対応できるお金」です。私的年金といわれるお金が中心になりますが、これらを積み立てながら運用する際に確認しておきたい大切なポイントを、3つに分けて解説します。

  1. ポイント(1) 税金の優遇

    積み立てながら運用する制度・商品を下記の4つに絞り、まずは税金の優遇についてまとめました。

    表1 各制度・商品の税制の優遇

    ※スクロールで表がスライドします。

    制度・商品 積立金や保険料に対する優遇 運用益や利子に対する優遇
    iDeCo(個人型確定拠出年金) 所得控除(全額が対象) 非課税にて再投資
    つみたてNISA なし 非課税
    財形年金貯蓄 なし 元本550万円(保険等は払込額385万円)まで非課税
    個人年金保険(民間保険商品) 所得控除(金額により全額または一部が対象) 50万円まで非課税(注)

    (注)個人年金保険は一括受給の場合で、受給金額から払込保険料を差し引いた額を運用益(一時所得)とみなしています。

    資料:執筆者作成

    どれくらい優遇されるか、より詳しく知るには税金の知識が必要になりますが、上図を見てみると、iDeCoは税金の優遇が手厚くなっていることが分かります。

  2. ポイント(2) 運用主体と手数料

    「運用」は、自分でするかそうでないか、主体によって分かれます。また、運用に関する手数料も見逃せない項目です。

    表2 各制度・商品の運用主体と、運用に関する手数料

    ※スクロールで表がスライドします。

    制度・商品 運用する主体 運用商品 手数料
    iDeCo(個人型確定拠出年金) 自分 投資信託、定期預金、保険商品など(商品は金融機関ごとに異なる) 口座管理手数料・
    投資信託の信託報酬など
    つみたてNISA 自分 限られた投資信託のみ 信託報酬、販売手数料(一部の投資信託)
    財形年金貯蓄 銀行・保険会社 定期預金・保険商品など なし
    個人年金保険(民間保険商品) 保険会社 個人年金保険 保険料に含まれる(一部の商品で外貨の取扱いなどによる手数料が必要)

    資料:執筆者作成

    「iDeCo」と「つみたてNISA」は、自分で投資商品を選択・運用していかなければなりません。
    iDeCoは、商品ラインナップが豊富で、さまざまな種類からどれに投資するのか選ぶ必要があります。また、金融機関ごとにかかる手数料にも違いが出ます。
    つみたてNISAも自分で商品を選びますが、商品は限られた投資信託のみなので、iDeCoと比べると選択に迷うことは少ないかもしれません。
    個人年金保険は、保険会社に運用を任せられる上、将来の受給金額が確定しているものもあるので、商品によっては老後の生活設計を早くから立てやすいでしょう。

  3. ポイント(3) 解約や変更への対応

    老後に使うお金という目的で設計されている制度・商品は、途中で解約ができなかったり、できたとしても戻ってくる金額が支払った金額を下回ったりすることがあります。将来のためとはいえ、あまりにも多くのお金をつぎ込んでしまうと「今」の生活が危うくなる可能性があります。そのため、途中で解約ができるのか、また積立金額の変更はできるのかなどの条件を、事前に確認することが重要です。

積立金額はライフステージに合わせて考える

ライフステージによって、老後資金に振り向けられる金額は変わってきます。
子どもがいるご家庭の場合、子どもが中学生から大学生のころは支出が大きくなりがちで、なかなか積立金額の捻出は難しいでしょうし、逆に子どもが独立後には、積立金額のアップが望めるかもしれません。その時々で、家計より無理のない範囲で捻出することになるので、積立金額をライフステージに合わせて変更できるものを選ぶのがおすすめです。

一方で積立金額の変更ができないものは、一定額を老後資金として確保し、しっかり運用できるという利点がありますが、積立金額は慎重に設定する必要があります。
なお、制度・商品によって積立金額の下限や上限はさまざまなので、こちらも事前に確認しておくのが良いでしょう。

金融リテラシーを積極的に身に付ける

これまでの老後資金の準備方法を実践するには、お金周りの知識と判断力(以下「金融リテラシー」)が必要です。
今回ご紹介した4つの制度・商品には、ここでは語り切れないメリットや注意点が他にもあります。それぞれのしくみ、手数料や解約に関することなど、商品説明書類やWeb上の説明を読んで理解する力も必要です。どの制度・商品を利用するか、いくら積み立てるかの意思決定は自分でしなければならないため、とても重要な力だといえるでしょう。
さらに将来、積み立てたお金をどのように受給するのが有利か?と考えるときには、税金を抑えて「手取り」をいかに多くできるかが重要になりますので、税金の知識が生かされます。
このように金融リテラシーは、生涯にわたり私たちの資産形成に役立ちますので、積極的に身に付けることをおすすめします。

老後のライフスタイルは人さまざまです。自分事として、ライフプランに向き合うことが老後資金準備の第1歩となります。
今回ご紹介した3つのポイント「(1)税金の優遇」「(2)運用主体と手数料」「(3)解約や変更への対応」は、どの制度・商品を利用する際にも、共通して確認したい大切なポイントです。
積み立てたお金を上手に運用し、資産維持をしながら使っていくこと、いざというときに使えるお金を貯めておくことが、老後生活の安心につながります。
金融リテラシーを積極的に身に付ければ、賢い意思決定ができ、安心できる老後生活へとつながるのではないでしょうか。

監修者プロフィール

佐藤 益弘サトウ ヨシヒロ

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー
Yahoo!Japanなど主要Webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供、ライフプラン相談&実行サポートをするライフプランFP®として活動している。NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などテレビ番組への出演も行い、産業能率大学兼任講師(主査)、日本FP協会評議員も務める。
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