自賠責保険とは?
法律で加入が義務付けられている自賠責
マイカーを持っている人や、自動車保険に加入したことのある人であれば、「自賠責(じばいせき)」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。自賠責または自賠責保険は、正式名称「自動車損害賠償責任保険」といいます。
日本では、1955年(昭和30年)に施行された「自動車損害賠償保障法(自賠法)」によって、国内を運行するすべての自動車(原動機付自転車も含む)に、自賠責保険への加入が義務づけられています。自家用車や250cc超のバイクのような車検のある自動車やバイクは、車検の際に自賠責保険の更新を行うため、車検を通っている場合はもれなく自賠責保険に加入しています。また、車検のない250cc以下のバイクなどは、補償期間1~5年の自賠責保険に自分で加入することになります。
自賠責保険は、自動車事故による被害者に対して、最低限の補償を行うために加入が義務づけられているものなので、補償の対象となるのは、対人賠償事故のみとなります。死傷者の出ない対物賠償事故や、運転者自身の傷害については補償の対象となりません。一方で、被害者が死傷した対人賠償事故であれば、運転者の状況は問われないので、運転者が無免許運転や飲酒運転の場合であっても補償の対象となります。
自賠責保険から支払われる保険金の限度額は、被害者1人あたりで以下の金額になっています。
・傷害 | 120万円 |
・死亡 | 3,000万円 |
・後遺障害 | 75万円~4,000万円 |
この限度額は、1事故あたりではなく被害者1人あたりとなっていますので、被害者が複数人いる場合はその人数分の保険金が、また、複数の車が関わっている場合はその台数分の保険金が支払われます。
なお、ひき逃げで加害者が特定できないケースや無保険車との事故など、加害者に損害賠償を請求できない場合、被害者は政府(国土交通省)の自動車損害賠償保障事業に、保険金を請求することができます。保険金の限度額等は、自賠責保険と同様です。
自賠責だけでは補償が足りないケースも多い?
では、自賠責保険に加入しているから自動車事故を起こしたとしても大丈夫かというと、自賠責保険の補償だけでは不十分なケースが多いのが実情です。
過去に起きた自動車事故による死亡や後遺症に対する賠償金額の高額判決の例をみると、平成23年に被害者死亡の場合で、5億円を超える判決が出されています。このような場合に、自賠責保険だけにしか加入していなかったとすると、死亡の場合の3,000万円の保険金が支払われるだけで、4億7,000万円超の額は自分で準備しなければならないのです。だからこそ、自賠責保険では補償しきれない分をカバーする、任意の自動車保険への加入が必要だといわれることが多いわけです。
自動車事故は、自分では起こさないと思っていても、どんなに安全運転をしていたとしても、不可抗力によって起きてしまうことがあります。近年、交通事故の件数や死者数は減ってきているといわれていますが、いまだに1年間で約63万件もの交通事故が起きています(平成25年)。単純計算で約50秒に1件の割合です。今まさに全国のどこかでは事故が起きているのです。
これまで一度も、交通事故の被害者にも加害者にもなったことがないという人は、これまでは単に運がよかっただけかもしれません。自動車保険にキッチリと入っておく、ということが、万一に備えるためにも重要だといえるでしょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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