公的な介護保険制度
はじめに
公的な介護保険制度(以下:介護保険制度)は、2000(平成12)年にスタートしました。
介護認定者は、2000年4月末の約218万人から、2012年4月末の約533万人と315万人(144%)増加しています。今後、団塊の世代の方の利用が増えることを考えますと、さらに増加のスピードが加速すると思われます。
介護保険制度は、3年を1サイクルとして、市町村が事業計画を策定し、見直しを行います。
2014年度は、2012~2014年度の第5期にあたります。
第1期から第5期までの65歳以上の方の全国平均でみた支払保険料の推移は、
- 第1期(2000~2002年)2,911円
- 第2期(2003~2005年)3,293円
- 第3期(2006~2008年)4,090円
- 第4期(2009~2011年)4,160円
- 第5期(2012~2014年)4,972円
と介護認定者の増加に伴い、第1期と第5期を比べますと支払保険料は、約2,000円(約70%)も増加し、今後も負担が増えることが予想されます。
公的介護保険の仕組み
介護保険制度は、市区町村が保険者となって運用します。介護サービスは原則、現物給付となります。
保険料を負担する被保険者は、第1号被保険者(65歳以上)、第2号被保険者(40~64歳)の2つに分かれます。
介護サービスは、第1号被保険者の場合、要介護状態になったときに、原因を問わずにサービスを受けることができます。
第2号被保険者の場合は、がん(自宅等で療養中の末期がん)や初老期における認知症(アルツハイマー病等)、脳血管疾患等、国で定めた16種類の特定疾病に限りサービスを利用することができる、という違いがあります。
サービス費用の9割を被保険者からの保険料と国、都道府県、市町村による公費で半々負担し、残り1割を介護利用者が負担をします。なお、公費は国がサービス費用の25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%負担しています。
申請から利用までの流れ
介護保険制度の利用は、本人または家族が市区町村の介護保険窓口へ要介護認定の申請書を提出することからスタートします。
申請後、要介護認定の調査・判定が行われます。
調査は、市区町村等の調査員が自宅等に訪問して、本人や家族から聞き取り調査を行います。
申請書に主治医を記入した場合は、その主治医に意見書を作成してもらいます。主治医がいない場合は、市区町村指定医が診断し意見書を作成します。
判定は、コンピュータ処理による1次判定と、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が1次判定の結果と主治医の意見書をもとに2次判定を行い、介護予防が必要な「要支援1、2」、介護が必要な「要介護1~5」、介護保険の対象とならない(非該当)「自立」かに判定され要介護度が認定されます。要支援、要介護とも数字が大きくなる程、支援・介護の必要性が高くなります。
要支援や要介護の認定を受けた人は、居宅介護支援事業所等に所属するケアマネジャーと相談してケアプランを作成してもらい、それぞれの支給限度額に応じたサービスを利用します。
介護認定には有効期間(原則6カ月または12カ月)があり、有効期間が終了する前に、更新の申請が必要になります。ただし、心身の状態に変化が生じたときは、いつでも要介護認定の変更申請が行えます。
以上が、申請から利用までの大まかな流れになります。
介護保険のサービス体系
介護保険のサービスは、在宅サービスから施設サービスまで以下のように5つに分類されます。
- 1.訪問系サービス…………訪問介護、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護等
- 2.通所系サービス…………通所介護、通所リハビリテーション等
- 3.短期滞在系サービス……短期入所生活介護等
- 4.居住系サービス…………特定施設入居者生活介護、認知症共同生活介護等
- 5.入所系サービス…………介護老人福祉施設、介護老人保健施設等
在宅サービスは、要介護度によって利用できる回数が異なります。要介護度が最も軽い要支援1ですと週2~3回程度、最も重い要介護5ですと1日3~4回が目安になります。
なお、通所介護や特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設等の介護施設の内容につきましては、別のコラムで取り上げる予定ですので、今回は割愛いたします。
今回の改正点について
2014年6月に介護保険制度の改正が決定されました。主な改正点を実施時期別にみていきましょう。
2015年4月実施の項目
- 1.特別養護老人ホームへの新規入所者を原則として要介護3以上に限定(改正前は要介護1以上)
- 2.要支援者の訪問介護・通所介護を市町村の事業へ移行(2017年までに段階的に移行)
既存の介護事業所だけでなくNPO団体やボランティア等も介護サービス提供者になり、サービスが多様化します。 - 3.低所得者の保険料軽減を拡充
低所得者の第一号保険料の軽減割合が拡大されます。
2015年8月実施の項目
- 1.一定以上の所得者の自己負担額を2割に引き上げ(ただし、月額上限あり)
(現在は、所得に関わらず一律1割負担) - 2.低所得者に対する取り扱いの見直し
施設入所利用者等のうち、食費と居住費を補填する「補足給付」の負担が軽減される対象者の判定に際して、障害年金等の非課税収入や預貯金等も考慮されるようになります。
まとめ
仕組みと申請から利用までの流れを中心に、介護保険制度についてみてきました。高齢化の進行により、介護保険料のアップや保険を利用した場合の自己負担額の増加が今後も続くことが考えられます。
できるだけ長く、介護が不要でいられるように、日頃から健康管理、体力維持を意識して生活するようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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