高額療養費の申請
入院や手術を受け、多額の治療費が必要になった場合、非常に頼りになるのが高額療養費制度ですが、基本的には申請をしないと適用されない制度になります。いざという時に困らないよう、高額療養費の申請について確認していきましょう。
1.事後に申請手続き
医療機関等の窓口でいったん3割負担の治療費を支払い、治療費が1カ月分の自己負担限度額を超える場合は、自分自身が加入している公的医療保険(市町村国保・共済組合・健康保険組合等)に支給申請書を提出することで、高額療養費の支給を受けることができます。ただし、病院などの領収書が必要になりますし、請求の時効は診療を受けた月の翌月初日から2年ですので、注意するようにしましょう。
また、ご加入の公的医療保険によっては、高額療養費の支給対象であることを確認するため、医療機関等からのレセプト(※1)が必要であったり、自動的に高額療養費が振り込まれたりするところもあります。
※1 レセプトとは、医療機関が市町村などの保険者に請求する、診療報酬の明細書のことです。
2.事前に申請手続き
事後に高額療養費の支給申請をしたとしても、いったん3割負担の治療費を支払うのが困難なケースも想定できます。このような場合には、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくと、窓口での支払いは自己負担限度額までに抑えることができます。医療機関等の窓口に提示すると、高額な医療費を支払う必要がありませんし、事後に申請すると支給までに3カ月程度かかることもある手続きも省けますので、事前に「限度額適用認定証」の申請手続きをしておくと安心できるでしょう。
また、事前に申請手続きをせず医療費の支払いが困難な場合は、高額療養費が支給されるまでの間、無利息でお金を借りることができる「高額医療費貸付制度」を利用するようにしましょう。ただし、ご加入の公的医療保険によって高額医療費貸付制度の利用要件は異なります。
3.先進医療を受けた場合
個室に入院した場合の差額ベッド代や食費および先進医療にかかる費用は、高額療養費の支給対象外になります。特に、がん治療で有効とされている重粒子線治療などの先進医療は、技術料が数百万円かかります。民間の医療保険などにつけられることが多い先進医療特約ですが、通常は加入者がまず病院に支払いを済ませ、給付金は後で受け取る仕組みになっており、一時的とはいえ、数百万円を自己負担するのは難しいと言わざるを得ません。
最近では、事前に医療機関や治療内容を保険会社へ連絡しておくと、先進医療の給付金が直接病院へ支払われ、加入者が高額の現金を用意する必要がないというサービスを提供している保険会社がでてきています。このようなサービスがあれば、安心して治療を行うことができますので、サービスの有無も保険会社や商品選びの一つの基準になるのではないでしょうか?
4.まとめ
高額療養費制度は、医療費の負担が重くならないように歯止めがかけられている制度ですので、まずは内容をしっかり理解するようにしましょう。その上で、高額療養費の申請方法は各公的医療保険によって違いますので、申請の有無や必要な書類および支給までの期間等を自分自身が加入している公的医療保険で把握するようにしましょう。
また、高額療養費制度の対象外である先進医療を受けると、一般的には医療保険に先進医療特約をつけていても、いったん治療費を立て替える必要があり、多額になる場合は家計に大きな影響がでる可能性があります。医療保険を保険料のみで比較するのではなく、先進医療を受けても立て替えの必要がないサービスの提供有無等も含め、医療保険を比較検討するのもよいのではないでしょうか。
-
コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。