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2021.05.25

厚生年金保険の強制適用事業所

ひとりで始めた事業も、軌道に乗ってくると「法人化した方が良い?」「従業員を雇う?」など、今後の在り方を検討するときが来るかもしれません。

その際に考えるべきポイントはさまざまありますが、ひとつとして従業員や自分自身の年金が挙げられるでしょう。

なぜなら、今後どのような在り方を選ぶかによって「厚生年金保険に加入する義務があるのかどうか」が異なり、保険料の負担などにかかわってくるからです。

まずは、厚生年金保険に加入が必須の「強制適用事業所」となるパターンを見てみましょう。

厚生年金保険の強制適用事業所とは?

会社や事務所などの仕事の場は、必ず厚生年金保険に加入しなければならない「強制適用事業所」と、加入義務のない「任意適用事業所」に分けられます。

どちらになるかは、事業の形態などにより、次のように決まります。

図1 事業所の形態などによる厚生年金保険の適用事業所の違い

図1 事業所の形態などによる厚生年金保険の適用事業所の違い

まず、法人化した場合は、業種や従業員の人数にかかわらず強制適用事業所となり、従業員と事業主が厚生年金保険の被保険者になります。従業員を雇わず事業主ひとりの法人となった場合も、法人であることに変わりはありませんので、同様です。

個人事業で従業員を雇う場合は、適用業種(図2参照)で、常時使用する従業員が5人以上であれば強制適用事業所となり、従業員が厚生年金保険の被保険者となります(法人化の場合と異なり、事業主は被保険者となりません)。

図2 厚生年金保険の適用業種

  • 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
  • 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
  • 鉱物の採掘又は採取の事業
  • 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
  • 貨物又は旅客の運送の事業
  • 貨物積みおろしの事業
  • 焼却、清掃又はと殺の事業
  • 物の販売又は配給の事業
  • 金融又は保険の事業
  • 物の保管又は賃貸の事業
  • 媒介周旋の事業
  • 集金、案内又は広告の事業
  • 教育、研究又は調査の事業
  • 疾病の治療、助産その他医療の事業
  • 通信又は報道の事業
  • 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

※2020年6月5日公布の年金制度改正法により、2022年10月からは、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業についても適用業種に加えられます。

資料:厚生労働省「被用者保険の適用拡大について」をもとに作成

厚生年金保険の新規適用の手続き(強制適用の場合)

法人化した、または適用業種に該当する個人事業で従業員が5人以上となった場合は、年金事務所に「新規適用届」とその添付書類を提出します。

事業所の所在地を管轄する年金事務所へ、電子申請や郵送、窓口持参の方法で提出してください。

提出期限は、事実が発生してから5日以内です。強制適用事業所に該当するにもかかわらず加入しないままでは国からの指導の対象となるため、必ず手続きを行いましょう。

厚生年金保険に加入するとどうなる?

強制適用事業所となって従業員が厚生年金保険に加入すると、事業主には従業員の厚生年金保険料の2分の1を支払う義務が発生します。厚生年金保険料は労使折半で負担するという決まりがあるためです。

厚生年金保険料は、基本的に従業員の給与額に応じて決まります。例えば平均月収20万円の従業員であれば、厚生年金保険料は月額36,600円で、事業主と従業員がそれぞれ18,300円ずつ負担するイメージです。

負担は避けたいと思うかもしれませんが、厚生年金保険に加入することで、メリットが生まれる可能性もあります。事業主・従業員双方のメリットと注意点に目を向けて考えることが大切になるでしょう。

表 厚生年金保険に加入することの主なメリットと注意点

事業主 メリット 福利厚生の充実による人材の確保、定着の可能性がある
注意点 従業員の保険料負担が発生する
従業員 メリット 国民年金よりも手厚い保障が得られる
注意点 国民年金よりも保険料の負担が重くなる場合が多い

※一定基準を満たさないパートタイマー・アルバイト等、従業員が厚生年金保険の被保険者とならない場合もあります。

厚生年金保険の適用の違いを知っておこう

以上のように、事業の形態や従業員の人数によって、厚生年金保険の強制適用事業所となるかどうかが異なります。

今後の事業の在り方を考えるときは、発生する経済的負担なども考慮しながら、総合的に検討する方が良いでしょう。

次回は、希望に応じて厚生年金保険に加入できる「任意適用事業所」についてご紹介します。

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