生理痛を我慢していませんか?10代から発症する子宮内膜症-女医が教える!(八田 真理子先生コラム)

八田 真理子 (はった まりこ)

現代の女性は生理回数の増加で生理トラブルが増えています!

女性なら、毎月生理を経験します。これまでの調べでは、約8割の女性が生理中に何らかの不調があることがわかっていて、その不調の中で最も多いのが「生理痛」です。

「たかが生理痛。誰でもあるんだから我慢しよう」と放ったらかしている人は要注意!だんだん痛みがつらくなって、鎮痛剤を飲まないといられないくらい生活に支障がでてくるかもしれません。このような状態を「月経困難症」といいます。

初潮からまもない思春期のころは、病気のない「機能性月経困難症」がほとんどですが、強い月経困難症をもつ女性は、病気のある「器質性月経困難症」になる可能性が2.6倍も高いといわれています。

この器質性月経困難症の代表疾患が「子宮内膜症」です。今、10代の女性にも子宮内膜症が増えてきているのです。

子宮内膜症とは、子宮内膜に似た組織が子宮以外にできて、痛みや不妊症の原因になる病気です。初潮年齢が早まったことや、少子晩婚化により一生のうちに経験する生理の回数が増えたことが発症要因の一つとして挙げられています。

戦前の女性は初潮が16歳くらいと遅く、しかも、子どもをたくさん産んでいたので、生涯の生理の回数は50回程度でした。それに比べ、現代の女性は、450~500回も生理を経験します。生理の回数が10倍近くも起こることで、生理トラブルである子宮内膜症が増えてきたのです。

つらい生理痛があったら必ず婦人科を受診して!

毎月生理が起こるたびに、子宮のベッドである内膜が厚くなり、剥がれ落ちます。その子宮内膜組織から、プロスタグランディンやインターロイキンという痛みの物質が発生し、炎症や癒着を引き起こすのです。子宮内膜症自体は、命を落とすような悪性の病気ではありませんが、まるでがんのように生理のたびに進行していきます。以前は、初潮から7年程度経ってから発症し、思春期には極めて少ないとされていました。

しかし、診断技術の向上により「骨盤痛のある思春期女子の19~73%に子宮内膜症を認めた」という報告があるように、近年若い女性に子宮内膜症が増えています。

先日も、お腹の痛みを訴えて受診した17歳の高校生の女の子のお腹に、大きな卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)を認めました。つらい生理痛がある人は、年齢に関わらず必ず婦人科を受診して医師に相談しましょう。

子宮内膜症は不妊症の要因にもなります!

避妊しないで1年間妊娠しないカップルを「不妊症」と定義していますが、いまや5.5組に1組が不妊症といわれています。近年、妊活を話題にした芸能人のブログやドラマをよく目にするようになりました。今や、わが国は不妊治療大国であり、その原因に大きく関わっている病気の一つに子宮内膜症があります。

もちろん、子宮内膜症になったからといって、必ずしも不妊症になるわけではありません。しかし、子宮内膜症をもつ女性の約半数が不妊症といわれ、不妊治療をしている女性の約半数に子宮内膜症が存在するというデータがあります。

つらい生理痛と不妊に苦しんだ女性患者のお話

私の診ていた患者さんは、中学3年生のころからひどい生理痛に悩まされてきました。彼女は24歳で卵巣チョコレート嚢胞の摘出手術を受けました。卵巣チョコレート嚢胞とは、卵巣にできた子宮内膜組織から出血を繰り返し、古い血液がまるでチョコレートのように卵巣に溜まる病気です。

その後、結婚をして、すぐにでも赤ちゃんが欲しかった夫婦なのに、なかなか授かりませんでした。不妊治療で体外受精を受けても妊娠に至らず。毎月訪れるつらい生理痛と赤ちゃんができない悲しみに苦しんでいました。

39歳で妊娠を断念し、夫婦二人で生きていく選択をして、今は更年期を迎えています。もっと早くから生理痛の治療をしていれば、子宮内膜症を発症することなく、彼女の人生は変わっていたかもしれません。子どもが大好きな彼女が、子どもを産み育てるよろこびを望んでも叶えられなかった経緯を診てきた私は、彼女の心のうちを思うと胸が痛んでなりません。

がんのリスクになる卵巣チョコレート嚢胞は定期的な検査が必要

卵巣に古い血液が溜まる卵巣チョコレート嚢胞は多くが良性で、卵巣ホルモンが低下する40代以降になると、大きくなるスピードは減少し、痛みも楽になっていきます。しかし、直径が4センチを超えて増大したり、エコー検査で内部に変化がみられる場合は悪性の卵巣がんの可能性もでてきます。嚢胞の中の古い血液に錆びが生じ、酸化ストレスにより、そこからがんが発生するのです。その頻度は、チョコレート嚢胞のない卵巣がんリスクが0.1%なのに対し、その7~10倍(0.7~1.0%)高いといわれています。

また、頻度は少ないものの、卵巣チョコレート嚢胞がお腹の中で破けてしまう破裂や捻じれる茎捻転でも、うずくまってしまうくらい強い腹痛を起こすことがあります。私の外来でも、部活動中にお腹に強いボールを受けて、卵巣嚢胞の破裂を起こした患者さんがいました。そのまま緊急手術になり、今ではすっかり元気になっています。稀なケースではありますが、特にやせ型の女性は、強い衝撃を避けるよう留意すべきです。

子宮内膜症治療の基本は排卵をお休みさせること!

卵巣チョコレート嚢胞があっても、すべてが手術適応になるわけではありません。年齢や症状に合わせて、治療方針が違ってきます。治療の基本は排卵をお休みさせること。そのためには、妊娠をするか更年期になるかの2つなのです。チョコレート嚢胞のある人は、必ず定期検診を受けてくださいね。

また、子宮内膜組織が子宮の筋肉の中に発生して、子宮が膨れる病気を「子宮腺筋症」といいます。以前は40代以降の女性に多いといわれてきましたが、近年ではもっと若い妊娠適齢期の女性に増えています。強い生理痛と生理の血液が多いこと(過多月経)により、貧血になりやすいのも特徴です。こちらも不妊リスクにもなるので、早めの対処が必要です。

生理痛との上手な付き合い方とは?

生理痛の対処法としては、まずは市販されている鎮痛剤を服用することです。ポイントとしては早めに飲むこと!なぜなら、痛み物質であるプロスタグランディンが出る前に抑えることが大切だからです。今、市販されている鎮痛剤は、用法用量を守れば安心して服用できるものがほとんどで、飲み続けても効かなくなるということはありません。服用するときは空腹を避け、何か食べてからたっぷりのお水で飲みましょう。

他にも生活習慣として、しっかりご飯を食べてよく寝ること。ダイエットはNG!からだを温め、無理のない範囲で適度な運動もおすすめです。

つらい生理痛には保険治療薬があります!

しかし、鎮痛剤の量が増えたり、効きづらいときは月経困難症という病であり、子宮内膜症を発症している可能性があります。今、月経困難症治療薬として低用量エストロゲン・プロゲステロン治療薬(LEP製剤)が保険適応になっています。避妊薬であるピルとほぼ同じ成分の微量な女性ホルモンが入っていて、服用すると排卵をお休みさせ、子宮のベッドを厚くさせないようにします。

前にも述べましたが、治療の基本は、赤ちゃんはいないけれど妊娠と同じ状態にすること。そのため、飲み始めのころ、嘔気や食欲不振などつわりに似たような症状が出る人がいますが、服用を続けることでほとんどの人が、不快な症状は軽快していき、痛み物質の発生も抑え、生理痛を楽にして、月経困難症を改善させることができます。

でき上がってしまった子宮内膜症を治す力はありませんが、進行を遅らせることが期待できます。

生理痛は誰にでもあるものですが、

●だんだんひどくなる生理痛

●生理後・排卵期・生理前など生理以外のときも痛い

●妊活しているのになかなか妊娠しない

以上にあてはまる場合は、子宮内膜症が発症している可能性があります。

子宮内膜症=女性の人生を台無しにしてしまう病気

なぜ、女性には毎月生理があるのでしょう。それは、排卵して妊娠の準備ができているからなのです。私たち人間も動物ですから、更年期を迎えるまで女性は子孫を残す準備をしています。そう考えると、とてももったいないことをしていると思いませんか?

子どもを持つ、持たないは個人の自由です。人から押し付けられる必要はありません。自身のライフプランを考え、子どもが欲しいときにすぐ作れる「からだ」でいて欲しいのです。

女性の人生を台無しにしてしまう病気それが子宮内膜症です。10代でも生理痛があったら放置せず、直ぐにでも婦人科を受診してください。そして、たかが「生理痛」から「月経困難症」、「子宮内膜症」へと発展する可能性があることを知っておいてくださいね。

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PROFILE

八田 真理子 (はった まりこ)

八田 真理子 (はった まりこ)

聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 院長

千葉県生まれ。1990年聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学産婦人科学教室に入局後、松戸市立病院産婦人科勤務。1998年ジュノ・ヴェスタクリニック八田を開院。
地域に根差したクリニックとして思春期から更年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングにあたっている。女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーへの登壇などを通じて、性教育・不妊症・メノポーズについての正しい知識の啓蒙も積極的に取り組んでいる。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本産婦人科医会母体保護法指定医師、日本マタニティフィットネス協会認定JMFAインストラクターを取得。

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