通話
無料

電話

お急ぎの方は、まずお電話ください。

0120-816-316

9:00~21:00(年末年始を除く)

キャンペーン実施中

伊藤 洋一の視点

伊藤 洋一さんコラム - 第22回

2022年の世界経済:(1)アメリカ・欧州 課題はインフレ抑制と利上げペース

3回にわたって今年の世界経済の課題を書いてみようと思う。今回は「アメリカ・欧州」、次回が「中国」、そして最後に「日本」を取り上げる。世界経済への影響力の大きい順だ。

アメリカなど欧米経済全体を見ると、今年最大の課題は高まるインフレ圧力にどう対処するかだろう。「コロナ禍」の中で高まった物価上昇圧力を「一時的(transitory FOMC声明やパウエルFRB議長の繰り返しの発言)」とする見方は、完全に間違いだった。

「コロナ禍による経済活動の悪化→消費減退→物価上昇圧力の低減」を“大筋”とするFRBの見立ては、当初妥当なものに見えた。予想外だったのは、コロナウイルスが変異を繰り返す(最近ではデルタ→オミクロン)中で、感染者が経済活動から一時的に離脱するか、そもそもリスクのある職場への出勤や働くこと自体を忌避する傾向が労働者の間で出てきたこと。それによって物流ロジスティックが彼方此方で寸断、それで欧米中心にモノ不足が生じた。

対して、人々の消費は当初の抑制から心理的リベンジ(消費を取り戻す心理)の動きとなった。モノが豊富なアメリカのスーパーで棚がカラになるコーナーもできたほどだった。起きたのはデマンドプルの物価上昇。ガソリン高も響いた。感染力が強烈なオミクロン株が主流になってもそうした事態は続き、今度はマンニング(人員配置)が回らない事態も起きている。航空機のオミクロン欠航など。当然企業は労働者の労働賃金を上げた。コストプッシュだ。米中対立も世界的物流混乱を深刻化させたが、これは次回で書く。

アメリカ・欧州ともに対応を迫られたのが金融政策だ。それまでは国民経済(企業と家計)の下支えで目一杯の金融緩和(“超”の文字が付いた)だったが、急遽政治家の支持率を大きく下げるインフレの抑制には、特段の注意を払わざるを得なくなった。この原稿を書いている時点ではアメリカの消費者物価上昇率は年7.0%で、これは39年ぶりの高さ。特に所得の低い層になるとこの「7%の物価上昇」は生活を直撃する。政治として対処せざるを得ない。欧州諸国も同じ問題を抱える。

しかしそこには問題がある。超緩和の解除から利上げへと金融政策の方向を変えただけでは、世界の物流の問題(マンニングも含めて)をほとんど解消できないことだ。先進国のロジスティックスは「ワクチンの三回目接種」「治療薬」で大きく改善するかも知れない。しかし第一回のワクチン接種さえ思うように進んでいないのが途上国。世界的な物流網は当面「ところどころ穴が空いたまま」だ。世界的解消には時間がかかる。

「インフレ高進」の中で中央銀行が動かないという選択肢はないので、FRBは昨年最後のFOMC声明から「transitory」との文言を外して利上げへのレールを敷いた。スケジュールはテーパリング(緩和解除)の“加速”から「利上げ開始」だ。

見立てを間違った分、FRBは焦っているようにも見える。なので、昨年末の段階で「2022年内3回の利上げ」の予想が大方だったが、年明けでは「年4回」が大勢で、開始時期も前倒しで3月との見方だ。直ぐそこだ。仮に「年4回」とすると、一年後にはアメリカの政策金利は現状の「0.00~0.25%」から「1.00~1.25%」となる。スタートがゼロ近傍だから、上げ率は凄まじいことになる。

むろん筆者がアメリカに居た時期(1970年代後半)を含めて、同国の戦後のどの時期と比べても「1.00~1.25%」は政策金利としてはまだ低い。しかし「ゼロ金利時代へのサヨナラ」は様々な問題を抱える。ゼロ金利政策の持続を見込んで借金を抱えた企業や個人にとっては、金利負担が大幅に増える。低位置からのスタートなので、利払い負担が何十%も増える可能性が高い。スタートアップ時に大きな借り入れをしているITなどの新興企業の株価が、一時ウリの対象になったのには理由がある。

「オミクロン欠航」などに象徴される物流やマンニング問題の最終的解決には、「コロナ禍克服」が必要だ。終息が一番望ましいが、「有効なワクチン接種+感染後の早期飲み薬の普及」が可能な一番手シナリオだ。希望的観測では、先進国ではそれは年内にも可能かも知れない。それは「人類の勝利」とも言える大きな成果となる。しかし問題はそれを世界的に達成する必要がある、ということだ。これが難題だ。

もっと大きな問題は、コロナウイルスの先行きだ。一般的にウイルスの生き残り戦略として妥当なのは「より軽症に、より多数の人への感染を可能に」だと思われる。エボラ出血熱が世界的な大流行にならないのは、宿主を高い確率で死に至らしめるからだ。

なので、高速感染拡大・患者軽症というオミクロン株は、今回の新型コロナウイルスの最終到達段階とも考えられる。しかしそれは確定ではない。あと数回の変異(その中には重症化率の高いものもあろう)を繰り返す可能性がある。その場合、コロナ対策はまた見直しを迫られる。人類はまだウイルスの変異を事前に察知したりコントロールする知恵や技術を持ち合わせない。

FRBもECB(欧州中央銀行)も、経済に腰折れの危険性もあることを承知の上で海図なき金融引き締めに乗り出している。

バックナンバー

PROFILE

伊藤 洋一

伊藤 洋一(イトウ ヨウイチ)

経済評論家

1950年長野県生まれ。金融市場からマクロ経済、特にデジタル経済を専門とする。著書に『ほんとうはすごい!日本の産業力』(PHP研究所)、『日本力』(講談社)、『ITとカースト インド・成長の秘密と苦悩』(日本経済新聞出版社)、『カウンターから日本が見える―板前文化論の冒険―』(新潮社)など。「金融そもそも講座」などに書評、エッセイ、評論などを定期寄稿。

  • ※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立した執筆者の見解です。
  • ※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
  • 2024年版 最も選ばれた保険ランキング
  • パパっと比較して、じっくり検討。ネット生保もカンタン比較!
×
閉じる ×

総合窓口

9:00~21:00(年末年始を除く)

相談予約専用窓口

9:00~21:00(年末年始を除く)