任意の自動車保険とは?
任意の自動車保険の必要性
前回コラム「自賠責保険とは?」でも触れましたが、自動車による事故は、自分では起こさないと思っていても、どんなに安全運転をしていたとしても、不可抗力によって起きてしまうことがあります。近年、交通事故の件数や死者数は減少傾向にありますが、依然として1年間で約63万件もの交通事故が起きています(平成25年)。単純計算で約50秒に1件の割合。今まさに、全国のどこかで事故が起きているといっても過言ではありません。
交通事故による被害者を守るために、法律で加入が義務づけられているのが自賠責保険ですが、自賠責保険からの補償だけでは不十分であるケースも非常に多いというのが実情です。過去に起きた自動車事故による賠償金額の高額判決の例をみると、平成23年には被害者死亡の場合で、5億円を超える判決が出されたこともあるのです。自賠責保険からの3,000万円の保険金だけでは、4億7,000万円超の不足です。だからこそ、自賠責保険では足りない分をカバーする、自動車保険への加入が必要だといわれることが多いわけです。
なお、自賠責保険が強制加入であるのに対し、一般の自動車保険は任意加入なので、「任意保険」や「任意の自動車保険」などと呼ばれます。
任意の自動車保険は、下表のような複数の補償を組み合わせて契約するのが一般的です。損害保険各社によって異なる場合もありますが、もともとこれらの複数の補償をすべてパックにしている商品や、自分で選んで自由に組み合わせられるようになっている商品もあります。
任意の自動車保険の補償内容
対人賠償保険 | 他人を死傷させた場合の補償(自賠責保険で支払われる金額を超える部分を補償) |
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対物賠償保険 | 他人の物を壊した場合に損害額を補てん |
搭乗者傷害保険 | 搭乗者が死傷した場合の補償(自賠責保険で支払われる金額にかかわらず、死亡保険金等が支払われる) |
無保険車傷害保険 | 搭乗者が死傷し、相手方が無保険車であるなど、十分な補償が受けられない場合に補償 |
自損事故保険 | 単独事故等、自賠責保険で補償されない事故で搭乗者が死傷した場合に補償 |
車両保険 | 衝突、接触、転覆、火災、爆発、盗難、台風、洪水、当て逃げなど、偶然の事故により生じた車両損害等を補償 |
人身傷害補償保険 | 被保険者が死傷した場合、自己の過失割合にかかわらず、示談交渉を待たずに保険金額の範囲内で損害額を補償 |
資料:執筆者作成
保険料は、補償の種類ごとに設定されていて、年齢や事故歴、運転歴、車種などによって異なります。基本的に、事故のリスクの高い人の保険料は高く、リスクの低い人の保険料は安くなっています。近年では、「リスク細分型自動車保険」と総称されるリスク区分をさらに細分化させて、リスクが低い人の保険料をより安く、リスクが高い人の保険料をより高くしている商品を取り扱う損害保険会社も増えてきました。任意の自動車保険を探す際は、複数社の商品を比較検討することがより重要になってきているといえます。
保険料以外にも注目すべき判断要素
また、最近では、損害保険各社による契約の獲得競争が激しくなってきたことによって、任意の自動車保険の保険料のお手頃さを売りにする商品も出てきました。そのこと自体は、私たち契約者にとって歓迎すべきことではありますが、任意の自動車保険は、保険料のお手頃さだけで判断するのはよくないといえます。
というのも、交通事故が起きたときの迅速な事故処理能力の高さも、重要な判断要素になると思われるためです。交通事故はいつどこで起きるかわかりません。車での旅行中に起きる可能性もあります。そのようなときに、全国どこでも迅速な対応をしてもらえるかどうかが重要なのです。したがって、一般的に保険料がお手頃な外資系やネット系自動車保険等の他にも、地元の経験豊富な損害保険代理店を検討するのもひとつの方法だといえます。どちらがいいかは一概にいえません。保険料や補償内容などをトータルでみた比較検討が重要でしょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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