保険が適応されない治療や技術って?
「妻の入院で300万円ちかく貯金が減ってしまった」と知人の困った顔。
聞けば「女性特有のがんで入院」し、保険が適用されない「先進医療」の新しい技術や治療を受けた費用がかさみ、思わぬ出費になったと話してくれました。
この困り事の原因は、保険適用のない先進医療の治療や技術を利用した場合に全額自己負担となる、高額な治療費用の資金捻出にあります。
この知人は疾病で初日から1日1万円が給付される医療保険に加入していたのですが、それでは足りず、貯蓄が大きく目減りしたためにライフプランを見直す事態になったということです。
このことを教訓に、我々はライフプランの見直しにも影響がある「病気リスク(特にがん)への備えを充実させる」について、意識することが大切となります。
「医療費用」の支出、特に治療費の保険適用がなくて高額となる「先進医療」に頼ることになったときの備えを考えてみましょう。
先進医療(以前は高度先進医療ともいわれた)とは、保険診療が適用されない先端医療で治療や技術を用いた療養で、123種類ほどあります。
もっとも、がんの療養関係ばかりではありません。そして、療養費用は全額自己負担となります。
ただ、その療養に必要な「通常の診察・検査・投薬・入院費」等は先進医療とは別で保険給付の対象となっています。
では先進医療の費用はどれくらいかかるのでしょうか?
中央社会保険医療協議会の実績報告(※1)から、その総数を単純に割って計算した平均額は699,268円(合計:先進医療総額9,565,295,364円÷年間実施件数13,679件)。これを自己負担額の目安としてみましょう。
例えば「重粒子線治療」は平均で約295万円。「腹腔鏡下子宮体がん根治手術」では平均で約38万円という具合です。
しかし、「自分がかかるがんは何がんで、何歳ごろに、どの程度資金的に必要なのか?」ということの想定は、簡単にはできません。
でも自分がかかりそうながんの種類の絞り込みが可能な方は、あらかじめ費用負担を調べ、必要な金額の目安を出し、その資金をプールしておくのも一つの方法です。
とはいうものの、かかるがんの病名などわからないし、わかったとしてもその資金をプール出来る方は多くいらっしゃらないと思います。
このような不安を少なくするための対策として、がんに対する「保険」を見直しましょう。
「がん保険」や「医療保険」・「医療保障特約」を検討し、どのようながんの保障が付いているのかを検討してみましょう。
例えば、「先進医療給付金。自己負担と同額保障2,000万円まで」等の内容を確認して備えます。この場合、「先進医療」がキーワードです。
もちろん「保険」だけに頼らずに、「貯蓄」と合わせて資金計画をしておくことはいうまでもありません。
※1 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000215yd.html
厚生労働省HP<中央社会保険医療協議会総会(第218回)議事次第>「平成23年6月30日時点における第2項先進医療技術に係る費用」
○先進医療保険導入、先進医療実績報告について(先進医療専門家会議からの報告)総-2-1
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コラム執筆者プロフィール
市田 雅良 (イチダ マサヨシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1999年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
資産運用、相続対策、生命保険の見直しなどの分野でセミナーや相談業務を行う。
FP相談としては年200件超のライフプラン提案を行っている。
また、日銀が支援する金融広報アドバイザーとして金融教育の普及に携わり、「KIDSマネー教育」、「生活経済セミナー」などで活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 市田 雅良
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
こちらの記事も参考に
掲載日:2020年3月3日
がん保険にがん先進医療特約は必要?
がん治療で行われる主な先進医療には「陽子線治療」や「重粒子線治療」などがあります。
がん保険に加入・検討する際に、高額になりがちな先進医療への備えとして付加するか悩まれる方も多いかもしれない、がん先進医療特約ですが、実際にがんを発症した場合に先進医療を受ける可能性はどれくらいあるのでしょうか?
厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、平成30年7月1日~令和元年6月30日の1年間で先進医療を受けられた方は39,178人です。
現在、日本の人口は約1億2,600万人(令和2年1月1日現在)なので、約3,200人に1人が先進医療を受けていることになります。
また、厚生労働省「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」によると、平成30年7月1日~令和元年6月30日の1年間のうち、がん治療としてよく行われる先進医療の「陽子線治療」の実施件数は1,295件、「重粒子線治療」は720件となっています。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、平成28年に新たに診断されたがんは995,131例あり、先進医療を受けることになる可能性はそれほど高くないことが分かります。
なお、厚生労働省の平成28年度および平成30年度の診療報酬改定により、一部の陽子線治療や重粒子線治療は保険適用がなされており、以前より自己負担額が抑えられています。
以上のことを考慮すると、「がん保険にがん先進医療特約は不要だ」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、先進医療の特約は数百円程度の保険料で付加できるため、もしも先進医療を受けることになった場合を考えて、念のために付加しておくのも良いでしょう。