がん保険を選ぶポイント
保険を選ぶときには「自分にあった保障」「安心できる保障」を備えているかがポイントで、それはがん保険においても同じです。
しかし、数あるがん保険のなかから、そのような保障のある保険を選び抜くのは難しいでしょう。
そこで、がん保険の商品による主な違いから自分にあった・安心できるがん保険を選ぶポイントをお伝えします。
給付金の支払われ方-定額を受け取りたい?実費を補いたい?
がん保険の給付金には大きく「定額払」と「実損填補払」の2種類の支払われ方があります。
定額払とは、給付金の支払条件を満たした場合に、かかった治療費に関わらず契約した保険金額が支払われます。
例えば、がん治療のために実際にかかった費用がいくらであっても、20日間の入院をした場合に入院1日あたり1万円支払われる保障であれば20万円、所定の手術を受けた場合に1回につき10万円が支払われる保障であれば10万円の給付金が支払われます。
定額払は、生命保険会社を中心に広く一般的にがん保険で使われています。
一方、実損填補払とは、契約した保険金額を上限に通院や入院などで実際に支払った費用が支払われます。
例えば、がん治療のための入院で実費が20万円(高額療養費制度適用後9万円)となった場合は、入院日数に関わらず20万円の保険金が支払われるものと9万円の保険金が支払われるものがあり、商品によって異なります。
実損填補払は、損害保険会社の一部のがん保険で使われています。
定額払の場合は、実際の治療費の金額を超えて給付があれば治療費以外にも給付金を活用できるメリットがあります。
実損填補払の場合は、あくまでも補償の対象となる費用までしか支払われないため実費以上に支払われることはありませんが、想定外に高額の費用がかかってしまった場合も安心といえるでしょう。
どちらがお得というのはありませんので、治療費に関係なく定額で受け取る方が使い勝手がよいと考えるのか、過不足なく補填される補償の方が安心なのかなどのポイントで、自分にあった支払われ方を選んでいきましょう。
保険期間-保障(補償)は一生涯がいい?一時的で十分?
がん保険は一生涯保障してくれる「終身型」と5年や10年など一定期間を保障(補償)する「定期型」があります。
実損填補払の補償がある損害保険会社のがん保険は、基本的に定期型になっています。
終身タイプのがん保険は契約当時と同じ保障が一生涯続き、保険料も変わることがありません。
一方、定期タイプのがん保険は契約期間が過ぎ更新をすると、その時点での年齢で保険料が再計算されるため、一般的に保険料は更新する度に上がっていきます。
しかし、同じ条件で同じ保障に対する保険料は、基本的に終身型に比べて定期型の方がお手頃になります。
がんの罹患率は高齢になるほど高まりますが、がんに罹った家族がいるなどで、がんに対する不安が大きいと思っている方が、若いうちから長期的に保障を備えたいと考えるのであれば終身型が向いているでしょう。
定期型と比較して保険料が高いといっても、若いうちに加入できれば月々の保険料を抑えることができます。
また、40代以降に加入を検討し始めたものの、収入がピークのうちだけ保険で備えておきたいと考えるのであれば定期型が活用できます。
給付の違い-がん保険の主な給付と+αの給付、重視するのは?
がん保険の主な給付は以下の5つです。
- がん診断給付金
- がん入院給付金
- がん手術給付金
- がん通院給付金
- がん先進医療給付金
生損保関係なくいずれのがん保険にも、おおよそ上記の給付が保障の中心となっています。
そのため、給付の違いを比較するには、まずこの5つの給付ががん保険によってどう違うのかを確認しましょう。
なお、この5つの給付の内容については「がん保険で給付される主な給付金」で解説しています。
例えば、いずれの給付金も平均的に保障を備えているがん保険もあれば、「がん診断給付金」の保険金額を高く設定できるなど手厚い保障にしながら、入院給付金がないといったように、一部の給付金を重視したがん保険もあります。
また、同じ給付金があってもがん保険によって支払条件が違うことがあります。
例えば、実損填補払のがん保険の「がん入院給付金」であっても、国の高額療養費制度で給付されたお金があればその分を差し引いて保険金が支払われる場合と、高額療養費制度の給付に関係なく支払われる場合があります。
それぞれの給付金の特徴を確認し、どの給付を重視したいかを考えてみましょう。
また支払条件は範囲が広いほど安心ではありますが、その分保険料は高くなりがちです。
家計に対して支払い続けられる保険料の範囲内で、納得した保障内容となるがん保険を選んでいきましょう。
もし、5つの主な給付のなかで重視したい保障に違いがあまりなく迷ってしまった場合は、その他の給付の違いが決め手になることもあります。
がん保険には上記の給付以外にも、がん治療のために放射線治療を受けた場合に支払われる給付金や、女性特有のがんに対して保障を手厚くする特約など、商品によってさまざまな給付金や特約があります。
主な給付に+αするこれらの保障は、商品の特徴でもあり、基本的な保障だけでなく幅広いがんの不安に備えたいと考える方には、がん保険を選ぶときのポイントになるでしょう。
まとめ
がん保険の商品による違いは、給付金の支払われ方や保障期間、給付金の内容などがありました。
これらの違いのなかで自分にとって安心できると思える保障を選ぶことができれば、保険選びで絞り込みができます。
ただし、どの条件が良いということは一概に言えず、がんに対する考え方や年齢・家計状況など、人によって異なります。
商品の違いのなかから自身で判断できないときは、保険代理店やファイナンシャルプランナーなどに相談してみてはいかがでしょうか。
-
コラム執筆者プロフィール
松原 季恵 (マツバラ キエ) - CFP®
銀行、損害保険会社での勤務経験から、多くのお客さまの相談に乗ってきました。
ファイナンシャルプランナーとして独立した際は、ライフプランを軸に「お金で楽しい毎日を」を心がけて情報発信しています。
ファイナンシャルプランナー 松原 季恵
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2020年3月3日
年代別・がん保険を選ぶポイント
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の全がんの罹患率を年代別にみると、男性は50代から急増し、女性は30代中盤から緩やかに増加します。
では、20代、30代、40代、50代と年代別で変わってくると思われる、がん保険の選び方をみてみましょう。
20代のがん保険選びのポイント
(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、がん保険・がん特約の加入率は、20代においては男女合わせて25.4%となっています。
一般的に20代は以降の年代に比べて保険料が安く設定されているため、若いうちから「終身型」に加入しておくと、30代以降の支払保険料が「更新型」のように更新の度に保険料が上がることもありません。
また、一生涯支払い続ける「終身払」タイプの方が、一定期間または一定年齢まで保険料を支払う「有期払」タイプよりも、月々の保険料が安くなります。
30代のがん保険選びのポイント
30代のがん保険・がん特約の加入率は男女で46.4%となっており、20代と比べると加入率が約2倍近く増加しています。
30代男性のがん罹患率はまだ高くはありませんが、万一がんに罹患した際の入院や治療にどの程度費用を捻出できるか考えてみるのも良い機会かもしれません。
女性は罹患率の上昇が始まるタイミングなので、早めの検討をおすすめします。女性特有の病気やがんの保障が手厚い女性保険を検討してみても良いでしょう。
更新型の商品は、20代と比べると一般的に高くなるので注意が必要です。
40代のがん保険選びのポイント
40代のがん保険・がん特約の加入率は男女で50.8%となっており、他の年代と比べて一番高い加入率となっています。
また、市町村のがん検診のうち、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診の対象年齢が40歳からとなっていることから多くの方ががん検診をする機会が増え、がん保険の必要性を感じていることが伺えます。
50代になると、特に男性はがんの罹患率が急上昇します。
一般的に50代の契約時の保険料はさらに上がりますので、50代以降に備えた保険商品の検討が大切になるでしょう。
50代のがん保険選びのポイント
50代におけるがん保険・がん特約の加入率は、男女合わせて44.7%となっています。
50代は、男性のがん罹患率が急上昇し、女性の罹患率を超えてしまいます。
がん保険に加入していても加入していなくても、現在加入している保険の保障内容を確認してみましょう。
医療保険や生命保険などでがん特約や三大疾病特約など、がんに備えることができる特約を付加しているかもしれません。
また、いつまで保障され、いつまで更新が可能かどうかも確認しておくと良いでしょう。
いざというときのために定期的に保険の見直しを行い、もし今がんに罹患したら現在加入中の保険の保障で賄えそうなのか、新規でのがん保険の加入が必要なのか、貯蓄があるなど医療費の自己負担分に心配のない方は、がん保険に加入する必要があるのか検討してみましょう。
それぞれの年代に合ったがん保険の選び方のポイントがあります。これらを参考に、ご自身に合ったがん保険を選ぶようにしましょう。