医療保険の特約、注意点と決め方
医療保険の特約は、保険会社や保険商品によって内容がさまざまで、その数も豊富にあります。
そのため特約を付加するか迷う方も少なくないでしょう。
特約を付加するとその分保険料も上がりますので、家計を考えると慎重な判断が必要です。そこで、特約における注意点と付加する場合の決め方をお伝えします。
特約とは?見直し時の注意点
保険は「主契約」と「特約」で構成されています。
主契約は当該保険を契約する場合に必ず保障として入るもので、特約はオプションとして任意で付加できる「主契約+α」の保障です。
例えば医療保険では入院や手術に対する保障が主契約で、通院や先進医療への保障が特約として準備されているような構成です。
どの保障が主契約か特約かは商品によって異なり、パンフレットや契約時に交付される「ご契約のしおり」で主契約と特約の区別が確認できます。
特約は途中で解約しても、主契約と残った特約で当該保険の契約を続けることができます。
一方、主契約を解約すると、保険そのものが解約となり、特約だけを残すことができない点には注意が必要です。
例えば現在加入している医療保険において、特約の先進医療保障の内容が充実しているものの主契約の入院保障に物足りなさを感じている場合に、先進医療保障の特約だけを残して主契約を乗り換えるような見直しはできません。
主契約を見直したい場合は、特約も含めてご自身に合った保険を探す必要があります。
特約を付加する前に単体の保険も見ておく
特約の種類のなかには、保険単体として商品となっている保障があります。
例えば、がんに備えるためには、医療保険に「がんの特約」を付加することもできますが、「がん保険」という単体の保険商品もあります。
このほか、介護の備えとして「介護の特約」と「介護保険」や、三大疾病への保障として「三大疾病特約」と「三大疾病保険」などもあります。
このような特約の場合は、単体の保険と比較して保障内容が十分な内容になっているか確認しましょう。
特約の場合、単体の保険と比較して保障の内容が十分でないケースもありますので「医療保険に+αで給付があると嬉しい」と考える場合は特約で十分かもしれませんが「一定の状態になったときに十分な保障が必要だ」と考える場合は単体で加入した方がよいこともあるでしょう。
必要な保障内容と、全体の保険料のバランスも含めて、特約で付加するのか単体で加入するのか決めましょう。
特約は契約後に付加することもできる
特約は商品によって、契約の途中で新たに付加すること(中途付加)ができます。
そのため最初の申込時点で迷ったとしても、中途付加ができる特約であれば、契約後に必要だと思った時点で加入ができます。
ただしその場合、中途付加する時点の年齢で特約の保険料が計算されるため、契約当初で特約を付加するよりも保険料が上がる可能性があります。
また、特約は必ずしも主契約と同じ保障期間とは限りません。
主契約の保障期間が終身であっても、例えば先進医療特約は一定期間ごとに満期がきて自動更新するタイプもあります。
一般的に更新時は先進医療特約に関する保険料が上がるため、特約の保障期間も確認するようにしましょう。
ライフプランを考えて特約を設計
特約は主契約と違って、途中で解約したり中途付加したりでき、自由度がありますので、ライフプラン(人生のイベントに対する資金計画)に合わせて柔軟に設定することができます。
例えば厚生労働省の「平成29年 我が国の人口動態」によると、女性が第1子を出産する平均年齢は30.7歳、第3子を出産する平均年齢は33.5歳となっています。
女性は妊娠・出産を経験する場合がありますが、それに伴う疾病のリスクもあります。
厚生労働省の「平成26年(2014)患者調査の概要」によると、出産平均年齢の30代前半の女性は、男性と比較して入院人数が多くなっています。
そこで、この時期に女性特有の病気の治療を目的とした入院や手術に対して保障が手厚くなる「女性疾病特約」に加入、出産後は解約するのも一案です。
もちろん出産後も女性疾病のリスクは誰しもありますので、出産後にご家族と話し合って解約するか続けるか決めましょう。
また、若年期は収入や貯蓄が少ないために、特約も付加して医療保険をやや手厚くしておきたいと考える人もいるでしょう。
その場合は、年数が経過してある程度の収入・貯蓄が準備できたり、健康保険の充実した企業に転職して医療保障の心配が減ったりしたときに、特約を解約して保険料を抑えることもできます。
逆に、保障を増やしたくなることもあるでしょう。
例えば契約当初は必要と思わなかった介護の特約が、近親者の介護の話を聞いたり経験したりすることで、ご自身の介護費用の備えが必要だと思うようになった場合です。
リスクへの考え方は変わるものですので、その時々でもう一度ご自身のライフプランを考え、リスクの備え方を変えることが大事です。
その場合、特約の中途付加も、新たに保障を増やしたい場合の手段として有効です。
特約の注意点を理解して定期的な見直しを
特約は途中で解約することも、商品によっては中途付加することもできます。
主契約と比較して自由度が高いものではありますが、特約のみを残して契約を続けることができない、特約だけでは保障が不十分な場合がある、特約の中途付加は保険料が上がる可能性があるなどの注意点もありました。
最初の加入時はそれらの注意点をふまえて商品選定、商品設計をし、契約後は定期的な見直しをすることで、よりご自身のライフプランに合った契約にすることができるでしょう。
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コラム執筆者プロフィール
松原 季恵 (マツバラ キエ) - CFP®
銀行、損害保険会社での勤務経験から、多くのお客さまの相談に乗ってきました。
ファイナンシャルプランナーとして独立した際は、ライフプランを軸に「お金で楽しい毎日を」を心がけて情報発信しています。
ファイナンシャルプランナー 松原 季恵
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
知っておくべき保険・特約の知識
掲載日:2019年8月30日
医療保険に通院特約は必要?
医療保険にはさまざまな種類の特約がありますが、そのなかから、「通院特約」についてみてみましょう。
全国の受療率をみてみると、外来の割合が約85%(※)となっており、ケガや病気になってしまった人のほとんどが通院していることになります。
(※)資料:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」より算出
通院特約は、入院前後の通院治療で保障を受けられる特約です。
実際に近年は入院日数が減少傾向にあり、受診された方が通院である割合は増加傾向にあります。
そのため通院特約を付加し、入院時よりも通院時の費用をカバーしたいと考える方もいると思います。
通院特約で支払われる1日あたりの通院給付金は、入院給付金と同額のものや、入院給付金より低めの金額に設定されているものなど、保険商品によってさまざまですが、将来自分の治療が長期化してしまう可能性を考えると、通院の割合が高まっている現代に合った特約といえるでしょう。
しかし、プランによっては「入院前の通院が保障されない」ことや「通院保障の対象となる期間が異なる」ことなどがあるため、自分に合った保険選びを心がける必要がありそうです。