2021.02.19
障害基礎年金を受給するための要件
前回は、国民年金と厚生年金保険の違いを交えながら、障害年金の概要についてお伝えしました。
個人事業主・自営業の方は、障がいの状態になったときに障害基礎年金を受給できますが、そのためには一定の要件を満たす必要があります。
今回は、障害基礎年金を受給するための要件について、詳しくご紹介します。
障害基礎年金を受給するための要件
障害基礎年金は、障がいの状態となった方の状況(被保険者要件)と、保険料の支払実績(保険料納付要件)によって受給の可否が決められます。
要件の詳細は次のとおりで、全て満たしていなければ受給できません。
図1 障害基礎年金を受給するための要件
- (1)障がいの原因となった病気やケガの初診日が次のいずれかの間にあること
- 国民年金被保険者期間
- 20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で公的年金制度に加入していない期間 ※老齢基礎年金を繰上げて受給している方を除く
- (2)障がいの状態が、障害認定日または20歳に達したときに、障害等級表に定める1級または2級に該当していること
- (3)保険料納付要件を満たしていること
資料:日本年金機構「障害年金ガイド(令和2年度版)」をもとに作成
障害基礎年金の被保険者要件
前回詳しくお伝えしたとおり、障害基礎年金と障害厚生年金どちらを受給するのかは、初診日で判断されます。そのため、基本的に初診日に第1号被保険者であった方が、障害基礎年金の受給要件を満たす方となります。
また、障害基礎年金は、障害等級1級または2級の方が対象です。障害厚生年金では3級の方も対象となる点に違いがありました。
障害基礎年金の保険料納付要件
受給要件のなかに「保険料納付要件」が挙げられています。これは保険料の支払実績が一定基準以上であることが求められるもので、原則と特例のいずれかを満たす必要があります。
なお、初診日が20歳までの年金制度に加入していない期間にある場合は、保険料納付要件は問われません。
・保険料納付要件の原則
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間について、保険料納付済期間・保険料免除期間が合わせて3分の2以上あることが保険料納付要件の原則です。
保険料納付済期間には、厚生年金保険の被保険者期間や、共済組合の組合員期間も含みます。
図2 保険料納付要件(原則)を満たす例
資料:日本年金機構「障害年金ガイド(令和2年度版)」をもとに作成
・保険料納付要件の特例
初診日の前日において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に保険料の未払期間がないことが保険料納付要件の特例です。
特例により、過去の未払期間の累計が長い方でも受給の可能性が出てきます。ただし、この特例は初診日が2026年4月1日前で、かつ初診日の年齢が65歳未満の場合に限られます。
また、初診日が1991年5月1日前である場合は要件が異なるため、年金事務所にご確認ください。
図3 保険料納付要件(特例)を満たす例
資料:日本年金機構「障害年金ガイド(令和2年度版)」をもとに作成
保険料納付要件について注意しておきたいことは、「初診日の前日」での保険料の支払実績が問われるということです。
保険料納付要件を満たさない方が、初診を受けた後に急いで未払保険料を支払ったとしても、障害基礎年金を受給することはできません。
もしものときのためには、普段から保険料を支払って備えておくことが必要といえるでしょう。
受給のために気を付けたいこと
ここで個人事業主・自営業の方のような第1号被保険者が注意しなくてはいけないことは、保険料の支払い忘れです。
会社員や公務員のような第2号被保険者は、会社や共済組合に保険料の支払義務があるため、原則、保険料の支払い忘れは起こりません。
しかし、第1号被保険者は個人に保険料の支払義務があるため、ときには「うっかり支払い忘れていた」ということも起きてしまうでしょう。
支払い忘れが頻繁に起きると、もしものときに保険料納付要件を満たせない可能性が出てきますので、第1号被保険者の方にとっては保険料の支払いをきちんと管理することが大切です。
保険料の支払い忘れを防ぐための方法
支払い忘れを防ぐための方法としておすすめしたいのが、保険料を前もって支払う「前納制度」の利用です。
これは、保険料の一定期間分(6カ月分、1年分、2年分)を前払いする制度で、支払い忘れを防げるだけではなく、保険料の割引が受けられるというメリットもあります。
表 前納制度を利用した際の保険料
保険料(毎月払と 比較した割引額) |
|
---|---|
6カ月前納 | 98,110円(1,130円) |
1年前納 | 194,320円(4,160円) |
2年前納 | 381,960円(15,840円) |
※2020年度・口座振替を選択した場合の保険料額
前納制度については、支払方法によって割引額が異なったり、期日までに手続きが必要であったりと注意点もありますので、詳細は日本年金機構のホームページで確認してください。
また「まとまった金額の支払いは厳しいので、毎月支払う方法が良い」という方は、口座振替やクレジットカードでの支払いを選べば、支払い忘れが起きにくくなります。ご自身にできる範囲の工夫を考えてみましょう。
図4 保険料の支払方法
もし経済的な理由などで保険料の支払いが難しい場合は、保険料免除の申請を検討しましょう。免除を受けた期間は、障害基礎年金の保険料納付要件に関して、保険料の支払いをした期間と同様に扱われます。
また、過去の保険料の支払い忘れについても、支払期限から2年以内であれば後から支払いができます。過去についても、できる限り支払いをしておきましょう。
将来のために今できること
保険料の支払いをしていない期間は、障害基礎年金だけではなく、老齢基礎年金や遺族基礎年金にも影響を及ぼします。「これからの支払い忘れを防ぐ」「過去の未払保険料を支払う」など、今からできる対策を行うことで、将来的に自分や家族を助けることにつながるでしょう。
前回・今回のコラムでは、障害基礎年金の概要、また受給するための要件を見てきました。
次回は、実際に受給できる障害基礎年金の年金額について取り上げたいと思います。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。