2021.02.12
独身時代に加入した厚生年金保険
総務省統計局「労働力調査」によると、2019年の就業者数は、男性3,733万人、女性2,992万人となっています。
2018年と比べると、男性が16万人増加しているのに対し、女性は46万人も増加しており、働く女性は近年増えています。
共働きの家庭は年々増えていますが、結婚や出産を機に専業主婦や専業主夫となり、そのまま老後を迎える方もいらっしゃることでしょう。
そのような方は、独身時代に加入した厚生年金保険の年金記録が正しい記録となっているかどうかを確認しておきましょう。思ったより早く老齢年金を受給できたり、老齢年金の受給額が少なくなっていることに気付けたりするかもしれません。
では、注意すべき内容を見ていきましょう。
老齢厚生年金の受給開始年齢
老齢厚生年金の受給開始年齢は、現在、「特別支給の老齢厚生年金」の制度により段階的に引き上げられており、65歳が老齢厚生年金の受給開始年齢となるのは、男性は1961年4月2日以降生まれ、女性は1966年4月2日以降に生まれた方となります。
表 特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢
※スクロールで表がスライドします。
受給開始年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
60歳 | 1949年4月2日~1953年4月1日生まれ | 1954年4月2日~1958年4月1日生まれ |
61歳 | 1953年4月2日~1955年4月1日生まれ | 1958年4月2日~1960年4月1日生まれ |
62歳 | 1955年4月2日~1957年4月1日生まれ | 1960年4月2日~1962年4月1日生まれ |
63歳 | 1957年4月2日~1959年4月1日生まれ | 1962年4月2日~1964年4月1日生まれ |
64歳 | 1959年4月2日~1961年4月1日生まれ | 1964年4月2日~1966年4月1日生まれ |
65歳 | 1961年4月2日以降生まれ | 1966年4月2日以降生まれ |
資料:日本年金機構ホームページをもとに作成
特別支給の老齢厚生年金については、繰下げ受給はできません。
上表にあてはまる年月日に生まれた専業主婦や専業主夫の方で、過去に、厚生年金保険などの被保険者期間が1年以上あるなどの要件を満たす場合は、特別支給の老齢厚生年金の手続きができる年齢に注意しましょう。
持ち主不明の年金記録は約1,800万件
「基礎年金番号」が導入される1997年1月までは、国民年金や厚生年金保険などの制度ごとに年金手帳が発行され、別々に年金手帳記号番号が与えられていました。そのため、転職や結婚によって加入する制度などに変化があった方は、複数の番号を持っていました。
その後、基礎年金番号が導入されて、複数の年金手帳記号番号を生年月日や氏名、性別などで名寄せを行い基礎年金番号へ統合されましたが、日本年金機構「未統合記録(5,095万件)の解明状況(令和2年3月時点)」)によると、現在「持ち主不明の年金記録(未統合記録)」は1,823万件あるようです。
結婚で姓が変わるなどの原因で、年金記録が統合されていないケースもあるため、年金記録で「未加入」となっている期間がある場合は、年金記録に「漏れ」や「誤り」が含まれている可能性があります。
「ねんきん定期便」の封書が届いたときや「ねんきんネット」を利用すると、これまでの年金記録が確認できますので、独身時代の年金記録に漏れがないように、正しい記録となっているかどうかを確認しておきましょう。
持ち主不明の年金記録の傾向
- 4分の3が60歳以上の方のもの
- 被保険者期間が「1年未満」や「1年以上5年未満」の未統合記録
- 年金記録の開始時期が1965年代以前のもの
- サービス業(飲食店など)、小売業(デパートなど)、商社などの業種に関するもの
図1 年金記録が見つかることが多い事例
資料:内閣府「政府広報オンライン」ホームページをもとに作成
インターネットができる環境があれば、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」を利用し、パソコンなどで(スマートフォン専用画面はありません)持ち主不明の年金記録をいつでも検索することが可能です。
もし、検索条件と一致する年金記録が見つかった場合は、ご自身の年金記録かどうかを年金事務所または街角の年金相談センターなどで確認してもらいましょう。
退職時に受け取った脱退手当金
もし過去に、勤務先を退職時に「脱退手当金(一時金)」を受け取った場合は注意が必要です。
現在では廃止されていますが、かつては、厚生年金保険の被保険者資格を喪失した方が老齢厚生年金の受給要件を満たさない場合は、脱退手当金を受け取ることができました。
脱退手当金の受け取りには要件があり、女性に対する要件のなかには「被保険者期間が2年以上ある女性」などがありました。そのため、当時、結婚や出産での退職時に保険料を精算して、脱退手当金(一時金)を受け取った女性もいらっしゃるのではないでしょうか。
女性のなかには、脱退手当金がどういうものかよく分からないまま受け取っているケースも多くあったようです。
脱退手当金を受けた場合は、その期間はカラ期間扱いとなり、年金額の計算には含まれないため注意しましょう。
未成年で就職し、退職した場合
未成年で就職し、厚生年金保険に加入したものの、20歳になる前に結婚や出産などで退職する方もいらっしゃることでしょう。
就職して年齢の下限のない厚生年金保険に加入すると、未成年であっても国民年金の第2号被保険者となります。
しかし未成年のうちに退職した場合、未成年の間は20歳以上60歳未満という制限のある国民年金に加入することができませんので、第1号被保険者とはなりません。
また、会社員などの第2号被保険者と結婚しても、国民年金の第3号被保険者になるわけではなく、20歳になったとしても自動的に第3号被保険者に変更されることはありません。
そのため、未成年の方が結婚し専業主婦や専業主夫になった場合、20歳になるまでは年金制度に加入していないことになりますので、20歳になった時点で配偶者の勤務先を通じて第3号被保険者の届け出を行いましょう。
図2 未成年で就職、退職、結婚した場合の年金制度加入イメージ
老齢厚生年金は、保険料を滞納しない限り、老齢基礎年金を受給するのに必要な資格期間を満たし、厚生年金保険の被保険者期間が1カ月以上あれば65歳から受給できます。
将来、「なんだか年金が少ない」とならないためにも、独身時代の年金記録は、漏れがないように正しい記録となっているかどうかを確認しておきましょう。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。