2021.03.12
年金分割で注意すること
専業主婦や専業主夫の場合、第2号被保険者期間がない方もいらっしゃることでしょう。
老齢基礎年金を満額で受給すると2020年4月時点では年額781,700円、月額で65,141円となっています。
もし、専業主婦や専業主夫の方が離婚するとなったときに将来の年金が心配であれば、年金分割制度を利用する方法もあります。
第3号被保険者期間について年金分割制度を利用すると、相手が婚姻期間中に第2号被保険者期間があれば、相手の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1に分割して、専業主婦や専業主夫は自身の年金記録とすることができます。
今回は、年金分割を検討する際に注意することをお伝えします。
年金分割制度は相手が受給する年金額を分けることではない
年金分割には、「合意分割制度」と「3号分割制度」がありますが、どちらも「年金受給額を分ける」のではなく、婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金記録を分割して、それぞれの年金とすることができる制度です。
婚姻期間中の厚生年金記録を対象とするため、国民年金記録はもちろん、結婚前の厚生年金記録も分割できませんので、婚姻期間が短いということは、分割できる期間も少ないということになります。
図1 年金分割の対象となる年金記録
3号分割は対象期間に注意
3号分割については、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間中の記録に限られるため、2008年3月31日以前の婚姻期間は、合意分割の対象となります。
3号分割は、婚姻期間中の第3号被保険者であった期間について、相手の厚生年金記録を2分の1に分割します。
2008年4月1日以降の3号分割の対象期間については、第3号被保険者であった方からの請求により行うことが可能で、相手の合意は必要ありませんが、もし、合意分割の対象期間がある場合は、年金分割の按分割合について当事者双方の合意が必要なため、必ずしも2分の1に分割できるとは限りません。
図2 3号分割できない婚姻期間がある例
また、第3号被保険者期間は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満となるため、専業主婦や専業主夫は60歳以上になると第3号被保険者ではなくなり、第1号被保険者となります。
相手に20歳になる前や60歳以降で第2号被保険者期間があったとしても、専業主婦や専業主夫が20歳になる前や第1号被保険者であった婚姻期間については、3号分割ではなく合意分割の対象期間となりますので注意が必要です。
共働き期間がある場合は注意が必要
もし、専業主婦や専業主夫の期間があったとしても、婚姻期間中に共働きの期間がある場合は注意が必要です。
合意分割の請求を行った場合、3号分割の対象となる期間は相手の厚生年金記録が2分の1に分割されます。
合意分割の対象となる期間は、その期間について相手の標準報酬額が自身の標準報酬額より高いときは、相手の厚生年金記録が分割されますが、もし、自身の標準報酬額が相手の標準報酬額より高いときは、自身の厚生年金記録を分割することになります。
そのため、専業主婦や専業主夫だからといって、相手の厚生年金記録を分割するとは限りません。
なお、3号分割の請求を行った場合は、合意分割をしないため自身の厚生年金記録には影響しません。
振替加算が加算されている老齢基礎年金を受給している場合は要チェック
振替加算は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間を併せて240月以上である方に対しては支給されません。
この期間を計算する際には、離婚時みなし被保険者期間(厚生年金保険の被保険者期間ではないが、標準報酬の分割を受けることによって厚生年金保険の被保険者期間であったとみなされた期間)も含まれます。
もし、振替加算が加算された年金を受給されている方が離婚する場合、年金分割を行ったことにより、離婚時みなし被保険者期間を含めた厚生年金保険の被保険者期間が240月以上となった場合、振替加算の対象ではなくなるため、注意しましょう。
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分割された年金はいつから受給できる?
分割された年金の支給開始は、自身の生年月日による老齢年金支給開始年齢からです。
もし、離婚した相手が年金受給者の場合、年金分割を請求した月の翌月分から相手の年金額は減額されますが、自身が年金を受給していない場合については、支給開始年齢まで待つことになります。
すでに年金を受給している場合は、年金分割を請求した月の翌月分から分割後の標準報酬を基礎として計算した老齢厚生年金を受給できます。
年金分割の請求には期限がある
年金分割の請求ができるのは、原則として、「離婚をしたとき」「婚姻の取り消しをしたとき」「事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき」に該当した日の翌日から起算して2年以内です。
ただし、以下のような特例があります。
表 分割請求期限の特例
※スクロールで表がスライドします。
特例 | 期日 |
---|---|
離婚から2年を経過するまでに審判申立を行い、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6カ月以内に審判が確定した場合 | 該当した日の翌日から起算して、6カ月経過するまでに限り、分割請求することができる |
離婚から2年経過するまでに調停申立を行い、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6カ月以内に調停が成立した場合 | |
按分割合に関する附帯処分を求める申し立てを行い、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6カ月以内に按分割合を定めた判決が確定した場合 | |
按分割合に関する附帯処分を求める申し立てを行い、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6カ月以内に按分割合を定めた和解が成立した場合 | |
分割のための合意または裁判手続きによる按分割合を決定した後、分割手続き前に当事者の一方が亡くなった場合 (年金分割の割合を明らかにできる書類の提出が必要) |
死亡日から1カ月以内に限り分割請求が認められる |
資料:日本年金機構ホームページをもとに作成
合意分割の場合、合意を得るのに時間がかかることもありますし、年金分割が必ずしも専業主婦や専業主夫にとってプラスになるとは限りませんので、年金事務所等に問い合わせるなどして、年金分割をした場合どうなるのか確認することをおすすめします。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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