知っておくべき自転車保険!事故・盗難に備えるには?(1)被害に備えるには

エコ社会の浸透か?健康志向の高まりか?近年は職場へ自転車通勤をする方も増えているようです。
実は、私自身も自転車通勤をはじめてはや10年になります。悪天候でなければ、40分近くかけて、職場まで自転車で通勤しています。ただ、道すがら、自動車にひかれそうになったり、歩行者に当たりそうになったり……。「危なかった!」と怖い思いをしない日は1日としてないほどです。
今回から3回に分けて、最近の自転車事故の発生状況などを踏まえて、自転車関連の保険について、見ていくことにしましょう。
第1回は、「被害に備える」ことについてお話しを進めたいと思います。
自転車関連の事故件数を確認しよう
まず、自転車に関連する交通事故件数を確認しましょう。
日本損害保険協会の資料によると、2004年をピークとして年々、事故件数は減っているようですが、2013年の自転車乗用中の交通事故件数は121,040件で、月1万件ペースで発生しています。(図1参照)
また、交通事故件数全体に占める割合は19.2%と、20%前後で推移しています。
図1 自転車乗用中の交通事故件数およびその構成率の推移

出典:日本損害保険協会発行「日本の損害保険 ファクトブック2014」
また、自転車に乗っていて死傷した人の数は120,529人で、交通事故全体の死傷者数の15.3%を占めています。かなり高い数値ですね。
このうちの約2割を高齢者、4割を若者と子どもが占めています。
このように見てみますと、無防備に自転車に乗るのは大きな危険を伴うと言わざるを得ません。
特に、図2でわかりますように、自転車乗用中の交通事故死傷者数の多い、20代前半までの若年層と高齢者の方には、何らかの対策が必要だと感じます。
図2 自転車乗用中の年齢層別交通事故死傷者数の割合(2013年)

資料:日本損害保険協会発行「日本損害保険 ファクトブック2014」をもとに執筆者作成
どんな対策が打てるのか?
では、どんな対策をすればいいのでしょうか? これは「リスクマネージメント(危機管理)」の話になります。
つまり、どれくらいの頻度でアクシデントが発生し、そのアクシデントが起きた際にどれくらい困るか?影響度があるか?を確認できれば、どういう対策を打てば良いかがわかるはずです。
図3は、横軸にリスクの「発生頻度」、縦軸にリスクの「影響度」をとって、どのような対応をすべきかを示した「リスクマップ」になります。
これは経営上のリスクマネジメントの世界では、「リスクマネジメントの標準化」ISO31000に基づいて運用されている一般的な考え方です。
図3 リスクマップ

資料:樗木裕伸氏(実務家FPネットワーク・マイアドバイザー.jp)資料より執筆者作成
例えば、「交通事故の発生頻度も影響度も大きい(図3 5-5)」と思う場合は、そもそも自転車に乗らないなど「回避」するのが良いでしょう。ただし、歩行中に車にひかれてしまう可能性はゼロではないので、自転車に乗らなければ100%交通事故に遭わないというわけにはいきませんが……。
「交通事故の発生頻度は多いが影響度は少ない(図3 5-1)」と感じるのなら、例えば、事故防止のために運転に注意するとか、ヘルメットなどをかぶり、事故に遭ったときに最小限の被害で済むようにしておくなどの予防・準備(=「損失制御」)をすると良いでしょう。
「交通事故の発生頻度も影響度も少ない(図3 1-1)」と感じるのなら、「大したことは無い」わけですから、その状況を受け入れれば(=「保有」)良いわけです。
最後に、「交通事故の発生頻度は低いが、影響度が大きい(図3 1-5)」と感じるのなら、リスクを外部に移して影響を低下させる仕組み(=「移転」)、例えば、保険を利用すべきです。
保険を上手に利用するために
上手に保険を利用するための極意は、「何のために保険に入るのか?」という目的を明確化し、それに合った保険に入ることです。
自転車関連の保険であれば、「1.自分自身が受ける被害=自転車事故によるケガの補償のために入る保険」と、「2.自分自身が加害者になってしまった場合の損害賠償に備えるために入る保険」、の2つがあります。
今回のテーマは、「自分自身が受ける被害=自転車事故におけるケガの補償のための保険」なので、このうち1.のみを見ていきましょう。
この分野に対応している保険は、傷害保険(普通傷害保険や交通事故傷害保険など)や、傷害保険と個人賠償責任保険とを自転車に乗る方向けにアレンジした保険、いわゆる自転車保険になります。
傷害保険は、事故等により死亡したり、ケガで入院したり(通院も対象になる保険もあります)したときなどに保険金が支払われます。この補償は自転車での事故にも適用されます。傷害保険には、日常生活全般を補償する普通傷害保険や家族傷害保険のほか、交通事故に備える交通事故傷害保険やファミリー交通傷害保険などたくさんの種類がありますから、補償内容や負担できる保険料を考慮し希望に沿った保険を選択すると良いでしょう。
また、自動車保険の「人身傷害保険」では、自動車に乗っているときだけでなく、歩行中や自転車に乗っているときに車との接触事故にあった場合にも、ケガの治療費や休業補償などの保険金が支払われるプランがあります。しかも、商品によっては、自動車保険の契約者あるいは記名被保険者だけでなく、家族(配偶者や同居の親族)も補償の対象とすることができます。このように自転車保険のほかにも、自動車保険や火災保険の特約で、自転車のケガの補償に備えられるものがあります。
実際に加入する場合、保険会社や商品で補償の範囲や内容が異なるので、保険販売・相談窓口や代理店の方に説明してもらったり、約款を確認したりしてみましょう。
次回「知っておくべき自転車保険!事故・盗難に備えるには?(2)加害者にならないように…」に続きます。
ファイナンシャルプランナー 佐藤 益弘
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。