入院費用日額の平均
医療保険に加入を検討する場合、1入院あたりの給付金日額をいくらにすればよいのか悩ましいところです。
(公財)生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査」を使って、入院費用日額の平均を確認して参考にしましょう。
この調査は全国の18歳から69歳までの男女に対し、平成25年4月から6月にかけて行われ、4,043人から回答を得たものです。
1. 全体平均と性別
過去5年間の入院の中で、一番最近の入院経験にについてたずねたところ、直近の入院時の1日あたりの自己負担費用を見ると、全体の平均は20,990円でした。
少し高いと感じるかもしれませんが、高額療養費制度(※)を考慮しても、食事代や差額ベッド代はもちろんのこと、衣類や日用品および付添いの方の交通費等も自己負担に含まれていることが影響していると思われます。
また、男性の平均が23,735円、女性の平均が18,582円となり、少し差が出ています。
※高額療養費制度…公的医療保険制度の一つで、医療機関等に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた分が還付される制度です。この調査では、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額となっています。
2. 年代別・職業別
年代別で見ると、40歳代が31,205円となっており圧倒的に高く、全体の平均を押し上げています。
また、職業別で見ると、自営業は24,778円、公務員や民間企業等の会社員は24,290円となっており、一般的に福利厚生制度が手厚い会社員が自己負担費用はやや少なくなっています。
表1 直近の入院時の1日あたりの自己負担費用(年齢別)
18~19歳 | 10,000円 | 20歳代 | 21,189円 |
30歳代 | 22,938円 | 40歳代 | 31,205円 |
50歳代 | 19,724円 | 60歳代 | 17,070円 |
資料:(公財)生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査」をもとに執筆者作成
3. 差額ベッド代
病院に入院すると通常は6人部屋等の大部屋になりますが、大部屋の場合は健康保険の適用範囲内ですので追加の自己負担はありません。
しかし、個室や2人部屋等を選択すると大部屋との差額料金が自己負担になります。病院によっては3~4人部屋でも差額ベッド代が必要になりますので、事前にしっかり確認するようにしましょう。
また、差額ベッド代が必要なケースは、患者自身が差額ベッド代の対象となる部屋に入院したいと申し出た場合に限られます。
医者が治療上必要と判断し、指示することにより、個室等に入院した場合は、差額ベッド代を支払う必要はありません。
4. 考え方
入院費用を全て保険でまかなう方法もありますし、預貯金が潤沢であれば預貯金でまかなう方法もありますので、万一のとき、家計から入院費用を支出できるかどうかという視点で考えてみましょう。
また、1入院あたりの給付金を日額5,000円にするか10,000円にするかについては、預貯金とのバランスを考える必要があります。
保険料が家計を圧迫するのは本末転倒ですが、医療保障が全くないのも不安が募るということも考えられます。
最低限の保障を保険で考えるなら日額5,000円、ある程度預貯金に頼らず保険で保障を得たい場合は10,000円を選択すれば良いでしょう。
5. まとめ
私が相談対応をしている中で感じることは、万一のときに預貯金を取り崩したくないと考えて、医療保険へ加入する選択をする方が多いことです。
1入院あたりの給付金日額は10,000円にして、医療保障は保険である程度まかなうという考え方をされているようです。
逆に、資産運用しているような方は、医療保険の保険料を支払っているつもりで毎月積立投資をし、老後の医療費負担に備えるという方もいます。
商品選択の前に上記のデータを参考にして、一度ゆっくり医療保障に関して考えることをお勧めします。
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
掲載日:2019年8月30日
入院時の平均逸失収入
(公財)生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」の調査結果によると、入院経験がある方の直近の入院時で「逸失収入(働けないことで生じた失われた収入)」があった方の割合は、全体の21.8%を占めています。
また、直近の入院時で逸失収入があった方の平均逸失収入は213,000円で、1日あたりの平均は17,300円となっており、その逸失収入を補う手段として「生命保険」が73.8%と最も高くなっています。
傷病によって働くことができないときの保障として、会社員や公務員等の方の場合、公的医療保険の一つである健康保険や組合などから「傷病手当金」を受け取ることができる制度があります。
しかし自営業等の方の場合、加入している国民健康保険では、傷病手当金が任意給付となっており、傷病手当金の有無については加入している自治体や組合などに自身で確認する必要があります。
なお、民間の保険にも、傷病によって働くことができないときに給付金等が受け取れる、「就業不能保険」や「所得補償保険」などの保険がありますので、公的医療保険の保障だけでは不足する部分を補うために加入の検討をしてみても良いかもしれません。
入院時には入院費用等だけではなく、傷病によって働くことができないときに生じる逸失収入の負担を考える必要が出てくる場合もありますので、ご自身のライフスタイルに合わせてリスクに備えることが大切でしょう。
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