ペット保険で歯科治療は補えますか？

ペットの歯のトラブル対策、あなたは何か行っていますか？虫歯や歯周病を放っておくと、歯が抜けたり、血液内に細菌が侵入して心臓などの臓器に負担をかけたりすることもあります。軽症のうちに、適切な処置を行いたいものです。

このコラムでは、犬や猫の歯科治療にはどんなものがあるのか、費用の目安や歯科治療を補償対象とするペット保険などについて解説します。

対象となる歯科治療とは

結論から言うと、補償対象となる歯科治療の範囲はペット保険各社で異なります。歯科治療および口腔外科治療は補償対象外とするペット保険もあれば、治療の一貫として行った歯石除去を補償対象とする保険もあります。

補償の要否を考える上で必要な、治療方法や治療費がどのようなものかを見ていきましょう。

虫歯の治療方法は人とおおむね同じ

虫歯を治療する場合、人間同様、大きく3つの方法で治療します。

初期の虫歯であれば、悪くなっている箇所を削り取り、歯の形を修復します。しかし、虫歯菌が歯髄（しずい）にまで達していると、細菌感染を抑えるために根幹治療を行うことになります。さらに、重度の場合は抜歯です。治療の際は、全身麻酔を行うことが一般的です。

歯垢・歯石を取る場合の治療方法は？

歯垢や歯石の除去は全身麻酔が基本です。歯垢は歯磨きなどのケアで除去することも可能ですが、歯石になると歯ブラシでは落とせないため、全身麻酔を行った上で除去します。

歯周病の治療方法には「歯垢・歯石の除去」「投薬」「抜歯」の3種類があり、感染防止や歯茎の炎症を抑えるために抗生剤が投与されたり、鎮痛消炎剤を使って、痛みを抑えたりもします。歯周病が進行して歯がぐらついていたり、歯が抜けた場合でも根元が土台に残っていたりする場合は抜歯となります。

歯科治療は高額！？

歯科治療に限ったことではありませんが、ペットの診療料金は自由診療となっています。人間のように公的医療保険はありません。獣医師は各自で料金を設定するので、動物病院によって料金に違いがあります。

また、治療を行う前に検査や麻酔、状況に応じて投薬などを行うため、飼い主が実際に支払う診療料金はそれぞれを合算した金額となります。

（公社）日本獣医師会の調査によると、全国1,096名の小動物臨床獣医師から得られた回答をもとに集計した、歯科治療にかかわる診察料金の平均値は表の通りです。

表　犬・猫の歯科治療にかかわる診察料金の平均値

資料：（公社）日本獣医師会「家庭飼育動物（犬・猫）の診療料金実態調査及びエチレンオキシド使用・排出実態把握に係るアンケート調査結果　令和3年11月」をもとに執筆者作成

歯周病で初めて動物病院にかかり歯石除去を行った場合、初診料の他にエックス線検査（レントゲン検査）、全身麻酔、歯石除去などの費用がかかります。表の平均値をもとに計算すると、飼い主が支払う診察料金の目安は次の通りです。

初診料1,468円＋エックス線検査4,387円＋全身麻酔11,151円＋歯石除去13,869円＝30,875円

なお、症状によっては、これらの費用以外にも血液検査や点滴投与などの費用がかかることがあります。また、無麻酔で行うと怖さのあまり口を触られるのを嫌がるため、歯石除去は全身麻酔が基本です。

人間だったら公的医療保険の対象で数千円程度なので、随分違いますね。

歯科治療にもしっかりとした備えが必要

自由診療かつ人間と比べて全身麻酔で治療を行う可能性も高いため、高額になりやすいです。ペット保険を検討するにあたって、歯科治療が補償されるかを比較対象の一つにするのはいかがでしょうか。

また、歯科治療でペット保険を活用する際の注意点がもう一つあります。歯科治療は補償対象だとうたっていても、予防のための歯垢・歯石除去は補償対象外である点です。

歯石除去は全身麻酔をする必要もあります。頻繁に行うのは経済的にも、ペットの身体的にも無理があります。

歯周病のサインである以下の症状が出たら、受診するように心がけるとよいのではないでしょうか。

ペット用の歯ブラシなどによるデンタルケアで、歯のトラブルを予防しましょう。

執筆者プロフィール

柳澤 美由紀ヤナギサワ　ミユキ

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®

長崎県出身。関西大学社会学部にて産業心理学を専攻。「専門知識と真心で、日本の家計を元気にする」がモットー。ライフプラン、資産づくり等のアドバイスを軸に、従業員さま向けライフプラン研修等も手掛ける。相談件数は1,000件以上。ライフスタイルなどを丁寧にお聞きして、資産を増やす仕組みを作るのが得意。
家計アイデア工房 代表

• ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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• ※ 掲載日は2023年8月31日です。