2019.12.03
会社員・公務員の厚生年金保険料はどうやって決まる?計算方法は?
毎月給与から天引きされる厚生年金保険料について、高いと感じている方や、「友人と保険料の金額が違っているのはなぜ?」「よく見たら昨年と保険料が変わっている」など、厚生年金保険料がどのように決められているのか疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
このコラムでは、厚生年金保険料の決まり方について、詳しく解説します。
厚生年金保険料の計算方法
第2回のコラムでも触れていますが、厚生年金保険料は、給与や賞与の金額をもとに「標準報酬月額」と「標準賞与額」と呼ばれる金額を出し、そこに現在の保険料率である18.3%を掛けて算出されます(下記表1参照)。
表1 厚生年金保険料の計算方法
※スクロールで表がスライドします。
資料:日本年金機構「厚生年金の保険料」をもとに執筆者作成
厚生年金保険の保険料率は、2004年から段階的に引き上げられていましたが、2017年9月を最後に引き上げが終了し、現在の保険料率は18.3%で固定されています。
給与や賞与の金額をもとに算出されるため、基本的には受け取っている給与や賞与の金額が高いほど、厚生年金保険料は高くなります。
実際の負担金額は半分!厚生年金保険料の金額例
国民年金と違う点は、厚生年金保険料は、事業主と被保険者が半分ずつ負担していることです。
例えば、標準報酬月額が28万円の場合には、「28万円(標準報酬月額)×18.3%(現在の保険料率)×50%(自己負担割合)」で計算され、毎月の厚生年金保険料の自己負担金額は25,620円となります。
また、標準賞与額が40万円の場合には、「40万円(標準賞与額)×18.3%(現在の保険料率)×50%(自己負担割合)」で計算され、賞与を受け取ったときの厚生年金保険料の自己負担金額は36,600円となります。
標準報酬月額・標準賞与額の決まり方
厚生年金保険料は、自分が毎月受け取る給与や賞与の金額でそのまま算出されるわけではありません。
厚生年金保険料の決まり方をより詳しく理解するために、標準報酬月額・標準賞与額の決まり方について、それぞれ解説していきます。
(1)標準報酬月額
標準報酬月額は、自分が受け取った給与(報酬月額)を、厚生年金保険料額表の報酬月額区分に当てはめて決定されます。
標準報酬月額の対象となる給与とは、基本給のほか残業手当や通勤手当などの報酬に加え、事業所が提供する宿舎費や食事代などの現物給与の額も含めた税引き前の金額です。標準報酬月額は、基本的には4月~6月の報酬月額をもとに決定され、その年の9月から翌年の8月まで、その標準報酬月額で計算された厚生年金保険料が適用されます。
そのため、基本給が同じである友人と厚生年金保険料が違うことや、毎年9月を境に厚生年金保険料が変わること、またその9月からの1年間は、残業量によって毎月の給与が変動しても厚生年金保険料が変わらないことなどが起こるといえます。
また、通勤手当の金額が高い方や、4月~6月にいつもより多く残業していた方などは、厚生年金保険料をより負担に感じてしまうかもしれません。
現在の標準報酬月額の区分は、1等級(88,000円)~31等級(62万円)までの31等級に分かれています。
下記表2をみると、報酬月額の金額が229,999円なら15等級、230,000円なら16等級となり、1円の差で厚生年金保険料の金額が変わるということが分かります。
表2 厚生年金保険料額表の例(一般・坑内員・船員の被保険者の方)
※スクロールで表がスライドします。
(単位:円)
資料:日本年金機構「保険料額表(平成29年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」をもとに執筆者作成
(2)標準賞与額
標準賞与額は、税引き前の賞与の額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。
支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となっています。
なお、150万円を超える場合は、標準賞与額は150万円とされます。
標準賞与額の対象となる賞与とは、ボーナスや期末手当などの名称の違いにかかわらず、年3回以下の回数で支給されるものです。
年4回以上支給される賞与については、標準賞与額ではなく、標準報酬月額の対象となります。
産前産後や育児中の厚生年金保険料
厚生年金に加入している会社員・公務員の方は、産前産後休業や育児休業等の期間中は、厚生年金保険料の支払いが免除されます。
産前産後休業期間とは一般的に産前42日、産後56日のうち、妊娠または出産のために労務に従事しなかった期間を指します。
育児休業等期間とは、満3歳未満の子どもを養育するための育児休業等の期間を指します。
厚生年金保険料の免除を受けるには、事業主を経由して勤務先を受けもつ年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。
産前産後休業や育児休業からの職場復帰後は、再び厚生年金保険料を支払うことになりますが、復帰後に時短勤務などにより標準報酬月額が下がっても、子どもが3歳までの間であれば、将来受給する老齢年金額が休業前と比べて下がらない措置もあります。
厚生年金は、現役時代に支払った保険料に応じた老齢年金が老後に支給される仕組みです。厚生年金保険料の決まり方を理解し、免除制度も利用しながら、将来に備えていきたいですね。
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